著者
日置 佳之 須田 真一 百瀬 浩 田中 隆 松林 健一 裏戸 秀幸 中野 隆雄 宮畑 貴之 大澤 浩一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.43-89, 2000-08-10 (Released:2018-02-09)
参考文献数
97
被引用文献数
3

東京都練馬区にある東京都立石神井公園周辺の1930〜40年代と1980〜90年代における生物相を50余点の文献から明らかにした.また,同地のランドスケープを地図と空中写真を用いて縮尺1/2,500で図化した.2つの年代間で生物相の比較を行ったところ,すべての分類群で種の多様性が顕著に低下していることが明らかになった.また,ランドスケープの変化を地理情報システムによって分析した結果,樹林地は比較的高い率で残存していたものの,草地,湿地は大きく減少し,水路などの流水域と湧水はほぼ完全に消失していた.開放水面の面積は微増し,市街地は大幅に増加していた.同地域における種多様性の変化要因を明らかにするためにギルド別の種数変化と生育(息)地の規模変化の関係を求めた結果,種数の変化は生育(息)地の規模変化に対応していることが認められた.また,ギルドによって,生育(息)地の分断化に対する抵抗性に差異が認められた.研究の結果,地域において種多様性を保全するためには,生育(息)地として機能するランドスケープ要素(生態系)の多様性を確保することが不可欠であることが示唆された.
著者
中田 康隆 日置 佳之 永松 大 小口 高
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-33, 2021 (Released:2022-03-03)
参考文献数
39

かつては日本列島にも多くの海岸砂丘が存在していた.しかしながら,これらの海岸砂丘は開発され,縮小と消失が進行している.鳥取県下には鳥取砂丘や北条砂丘を代表とした大小さまざまな海岸砂丘が存在する.本研究では,空中写真,旧版地形図,絵図などの時系列地理情報をGISにより統合化し,鳥取県における1818年(文政元年)から2000年(平成12年)までの海岸砂丘の土地被覆の変遷を定量的に把握した.また,植生に焦点を置き,生育地としての海岸砂丘の歴史的変遷を検討した.1818年時点の海岸砂丘(砂に覆われた無植生の裸地,及び草本や矮小低木に被われた砂が移動する範囲)の面積は大・中規模砂丘で1,893 ha,小規模砂丘で115 haであった.しかし2000年には海岸砂丘の面積が大・中規模砂丘で141 ha,小規模砂丘で25 haになり,残存する海岸砂丘は海浜と前砂丘の一部のみとなった.このような海岸砂丘の他の土地被覆への転換は,主に砂防林の造成に伴う海岸砂丘の固定,畑地の造成,市街地の拡大で生じた.自然性が高い海岸砂丘植生の指標である成帯構造の成立には,海岸砂丘の奥行が100 m以上必要であり,1818年にはこれが満たされていた場所が多かった.この状況は1900年頃まではおおよそ維持され,一部の海岸砂丘では,種の多様性を形成する丘間湿地も確認された.丘間湿地は1952年までにほぼ消失したが,少なくとも大・中規模砂丘では100 m以上の奥行が確保され,成帯構造が成立していたと考えられる.しかし1974年には,ほぼすべての海岸砂丘で奥行が部分的に100 m以下となり,2000年には100 m以上の奥行を持つ場所が激減した.一方で,断片的に奥行が確保されている場所では,ハマナスやハマウツボ等の安定帯に生育する希少種が確認され,成帯構造も成立している.したがって,これらの場所の保護区指定や,動的な環境の部分的復元には意味があると判断される.
著者
末次 優花 日置 佳之
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.209-234, 2020 (Released:2021-09-15)
参考文献数
78

ロードキルとは動物が道路上で車に轢かれ死傷する現象である.ロードキルの抑制は自然環境への影響や交通安全の観点等から重要な社会的課題である.本研究では,ロードキル記録に着目した.ロードキル記録はロードキル多発地点の特定や発生要因の解析,防止対策の提案,動物の生息状況の把握等に利用できるなど,ロードキル問題解決の基礎となる上に,生物情報という観点からも重要である.また,ロードキル記録は,悉皆データであり,多量性,多種性を持つため,記録の体系化は重要である.しかしながら,これまでの研究で,ロードキル記録の内容と体系化に問題があると指摘されている.そこで本研究では,鳥取県を事例研究地として県下全ての道路種別及び動物種におけるロードキル記録の現状と課題を明らかにし,関係各機関が行うべきロードキル記録の改善内容や方法について提案を行った.加えて,ロードキル記録に問題が生じる根本的な原因についても言及し,根本的な解決策の提案も行った.2018年から2019年にかけて,電話,メール,直接訪問により,道路管理者等,警察,県の傷病鳥獣保護窓口,博物館を対象に,ロードキルの記録状況について聴き取り調査を行った.その結果,事例研究地においては,ロードキル記録が無い機関・部署が存在したほか,記録が保管されていても,記録内容に課題があることが明らかとなった.記録不備の原因は,一部(高速道路)を除いて,ほとんどの関係機関にロードキル記録を研究や対策に活用するという認識が無く,実際に活用されていなかったことである.課題解決のためには,各機関にとってのロードキルを記録することの必要性と負担を勘案した上で,ロードキル記録の内容や記録様式を改善することが望ましい.また,ロードキル記録の問題を根本的に解決するためには,新たにロードキル記録システムを構築するとともに,法令等による制度上のロードキルの位置付けを行うことが望ましい.
著者
田村 典子 松尾 龍平 田中 俊夫 片岡 友美 広瀬 南斗 冨士本 八央 日置 佳之
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.231-237, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1

中国地方のニホンリスは環境省のレッドデータブックで絶滅のおそれがある地域個体群(LP)とされている.本研究では,生息情報の乏しい中国山地における本種の生息を知るために,363箇所のアカマツ林またはオニグルミの周辺で食痕調査を行った.このうち,52箇所で食痕が確認され,さらに14箇所でニホンリスが目撃された.しかし,経度133°30′以西で食痕確認箇所はきわめて少なく散発的で,絶滅の危険性が高いことが明らかになった.
著者
淑 敏 日置 佳之
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.318-329, 2011 (Released:2012-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1 3

異なる緑化タイプの駐車場の熱環境改善効果を比較するため,日向のアスファルト舗装と,日向の芝生地,樹木緑陰下のアスファルト舗装,樹木緑陰下の芝生地において,同時にその地表面温度,黒球温度,気温(地上0.1 m,0.5 m,1.0 m,1.5 m),車内気温・車体温度を測定した。その結果,夏季の昼間(9 時~19 時)に日向のアスファルトと比較した地表面温度の低減効果が最も大きかったのは樹木緑陰下の芝生地で平均約17.9℃ であり,黒球温度の低減効果もまた最も大きく平均約8.8℃ であった。気温(地上0.5 m,1.0 m,1.5 m)の低減効果はいずれの緑化タイプでも認められなかった。車内気温の低減効果は,樹木緑陰下の芝生地と樹木緑陰下のアスファルトにおいて同程度で平均約11.3℃ であった。また,MRT(平均放射温度)の低減効果が最も大きかったのは樹木緑陰下の芝生地で平均約27.4℃ であった。一方,夜間(20 時~翌朝4 時)に地表面温度の低減効果が最も大きかったのは日向の芝生地で,平均約4.0℃ であった。黒球温度とMRT の低減効果が最も大きかったのは日向の芝生地で,それぞれ平均約1.5℃と約2.0℃ であった。夜間,気温の低減効果はいずれの緑化タイプでも認められ,効果が最も大きかったのは樹木緑陰下の芝生地で,地上1.5 m で平均約1.8℃ であった。昼間に樹木緑陰で体感される涼しさは気温差によるものではなく,放射環境による差異であった。一方,夜間には緑化によって気温の低下が引き起こされており,ヒートアイランド現象の緩和が期待できた。駐車場の熱環境改善のためには,樹木による緑陰形成と芝生化の組み合わせが最も望ましいと言える。
著者
伊藤 史彦 長澤 良太 日置 佳之
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-17, 2012-06-22 (Released:2012-07-28)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

野生生物の適切な生息地保全のためには,現に生息地が確認された場所だけではなくランドスケープレベルの視点から見た潜在的な生息地も考慮に入れることが重要である.本研究では,環境省版レッドデータブックに絶滅危惧IB類に登録され,生息数の減少が懸念されている大型猛禽類のクマタカ(Spizaetus nipalensis)を対象種とし,GISを用いた空間データに基づく多変量解析手法によるハビタットモデルの構築を行い,潜在的な生息地を推定した.3次メッシュ単位でデータベース化された環境指標を独立変数とし,クマタカの目撃情報の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った結果,目撃情報データの64.1%を説明し得るハビタットモデルを構築することができた.さらに,このモデルを用いて作成したクマタカの潜在的生息地図を用いたGap分析や計画道路との関係解析の結果,鳥取県におけるクマタカの潜在的生息地の脆弱な地域を抽出することができた.本研究で得られた潜在的生息地を参考に,今後は,営巣,ハンティング等クマタカの各行動別に利用環境を解析し,クマタカの生息に極めて重要な地域の抽出を行うことで,適切な保護施策を策定していく必要があると考える.
著者
越水 麻子 荒木 佐智子 鷲谷 いづみ 日置 佳之 田中 隆 長田 光世
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.189-200, 1998-01-20
参考文献数
19
被引用文献数
17

国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)内の谷戸の放棄水田跡地において土壌シードバンクを調査した.谷戸谷底面の植生を代表するヨシ群落,チゴザサ群落,およびハンノキ群落から土壌(各0.1m^3,総計0.3m^3)を採取し,水分を一定に保つことのできる実験槽にまきだし,出現する実生の種,量および発芽季節を調べた.出現した実生を定期的に同定して抜き取る出現実生調査法と,実生をそのまま生育させて成立する植生を調査する成立植生調査法とを併行して実施し,5月中旬から12月下旬までの間に,前者では25種,合計6824個体,後者では26種,合計2210個体の種子植物を確認した.出現種の大部分は低湿地に特有の種であり,特に多くの実生が得られたのは,ホタルイ,アゼガヤツリ(あるいはカワラスガナ),チゴザサ,タネツケバナであった.また成立植生調査法で確認された個体数は,出現実生調査法の半数に過ぎないものの,ほぼ全ての種を確認することができた.調査地の土壌シードバンクは,植生復元のための種子材料として有効であること,また,土壌水分を一定に保てば,土壌をまきだしてから数ヵ月後に成立した植生を調べるだけで土壌シードバンクの種組成を把握できることが明らかになった.
著者
伊藤 史彦 長澤 良太 日置 佳之
出版者
Japan Association for Landscape Ecology
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-17, 2012
被引用文献数
3

野生生物の適切な生息地保全のためには,現に生息地が確認された場所だけではなくランドスケープレベルの視点から見た潜在的な生息地も考慮に入れることが重要である.本研究では,環境省版レッドデータブックに絶滅危惧IB類に登録され,生息数の減少が懸念されている大型猛禽類のクマタカ(<i>Spizaetus nipalensis</i>)を対象種とし,GISを用いた空間データに基づく多変量解析手法によるハビタットモデルの構築を行い,潜在的な生息地を推定した.3次メッシュ単位でデータベース化された環境指標を独立変数とし,クマタカの目撃情報の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った結果,目撃情報データの64.1%を説明し得るハビタットモデルを構築することができた.さらに,このモデルを用いて作成したクマタカの潜在的生息地図を用いたGap分析や計画道路との関係解析の結果,鳥取県におけるクマタカの潜在的生息地の脆弱な地域を抽出することができた.本研究で得られた潜在的生息地を参考に,今後は,営巣,ハンティング等クマタカの各行動別に利用環境を解析し,クマタカの生息に極めて重要な地域の抽出を行うことで,適切な保護施策を策定していく必要があると考える.
著者
日置 佳之 井手 佳季子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.501-506, 1997-03-28
参考文献数
11
被引用文献数
5 4

オランダにおける地域レベルでの生態ネットワーク計画のプロセスについて明らかにするため, 3つの事例の比較検討を行った。その結果, 上位計画として国土生態ネットワーク計画が重要な位置を占めていること, 計画は,(1) 自然環境調査にもとつくベースマップの作成, 下 (2) ネットワークの目標種の選定,(3) 目標種の環境要求性, とりわけその生息に必要とされるタイプのハビタットの面積や移動特性の把握,(4) 下目標種の生息, 移動に配慮したコアエリア, 自然創出区域, 生態的回廊の配置, という生態学的な検討が行われた上で, 生態的インフラストラクチャーの整備計画が策定される, というプロセスにより立案されていること, 生態的インフラストラクチャーの事業実施は計画主体によるコーディネートにより推進されていること, が明らかとなった。
著者
末次 優花 日置 佳之
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.49-63, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
39

Roadkill associated with transportation infrastructure exerts a negative impact on the natural environment and driving; hence, it should be prevented to conserve wildlife and promote safe driving. In this study, drivers in Tottori Prefecture were surveyed regarding their recognition and attitudes toward roadkill. The survey was conducted in September 2020, and online questionnaires were collected from 500 respondents aged 20 to 60. A total of 406 respondents (81.2%) answered that they know what roadkill is and that they had seen it most commonly on roads. More than 90% of those who were aware of roadkill felt that roadkill should not occur, primarily out of sympathy for animals and traffic accident danger. In addition, there was a difference in consciousness depending on the animal species. Roadkill prevention consciousness for large mammals stemmed from a concern to avoid driving dangers, while the reason given for preventing endangered species from becoming roadkill was the need for conservation. Many respondents thought that amphibians, reptiles, and insects are small and collisions are inevitable. Also, more than 80% of respondents thought that roadkill is a problem for both humans and animals. This information on drivers' attitudes toward roadkill prevention in Tottori Prefecture is valuable as a resource for roadkill policies in the future.
著者
千布 拓生 日置 佳之
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.89-108, 2013-12-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
29
被引用文献数
3 1

2009年の自然公園法改正で同法の目的に「生物多様性の確保に寄与すること」が明記され,自然公園が生物多様性の保全に大きく貢献していくことが期待されている.そのため,今後は各自然公園において生物多様性の保全・再生に関する面的計画の立案と実行が求められる.本研究では大山隠岐国立公園大山蒜山地域の奥大山地区を事例として,GISを用いて生物多様性の保全・再生に必要な多種類の情報を併せ持った植生データベ-ス(DB)の構築を試みた.この植生DBはベクター型電子地図とその属性情報によって構成されている.植生DBのポリゴンの境界線は,基本的には林野庁または鳥取県が作成した森林基本図の小班の境界線をもとに描き,森林簿が有する属性情報を取り入れた.また,各小班は必要に応じて現況の土地被覆・植生に合わせて細区分し,これを『植生パッチ』として植生DBの最小単位とした.本研究で作成した植生DBは以下の特長を有している.①縮尺1/5000で,詳細な土地被覆や植物群落の情報を含み,植生管理などに用いることができる.②過去4時期(1958年・1974年・1996年・2012年)の土地被覆履歴に関する情報を有し,植生遷移や土地被覆の変遷を把握できる.また,それをもとに将来の植生遷移の動向を推定することができる.③土地所有や国立公園の保護規制計画などの情報を有し,地域性の自然公園の管理に有用である.
著者
日置 佳之 高田 真徳
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.302-314, 2014 (Released:2015-09-18)
参考文献数
91
被引用文献数
1

ニワウルシ (Ailanthus altissima (Mill.) Swingle) は,雌雄異株で,風散布に適した翼果を多数付ける中国北部から中部原産の落葉高木である。同種は日本でも街路樹としても多用されており,空き地,河川敷等において野生化している。また,海外では自生地外への分布拡大や生態系への影響が報告されているが,わが国においては侵略性の観点からの研究はほとんど行われていない。そこで,本研究では,鳥取市内の国道 9号線に街路樹として植栽された同種の逸出状況を把握するとともに,種特性から見た侵略性評価を行うことを目的とした。逸出状況については,国道 9号鳥取バイパス及びその周辺約 202 haを対象として, DGPSを用いてニワウルシの位置情報を取得し,樹高,幹周り,萌芽の有無,逸出環境を街路樹と逸出株に区別して記録した。また,侵略性については,上記の調査結果と既存文献に基づき,外来種の導入の可否を判定する Pheloungのモデル及び導入後の外来植物の侵略性を判定する John & Lindaのモデルを用いて評価した。その結果,1)ニワウルシは街路樹から逸出した個体を母樹としてとくに風下側に分布を拡大していると推定された。2)地上部のみ刈取りされている逸出株は,管理が不十分な期間に生長し,種子散布や横走根の生長によって更なる分布拡大のもととなる恐れがある。3) 2つの外来種評価モデルを用いて侵略性を評価した結果,ニワウルシは高い侵略性を持つことが示唆された。
著者
日置 佳之 百瀬 浩 水谷 義昭 松林 健一 鈴木 明子 太田 望洋
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.759-764, 2000-03-30
被引用文献数
7 6

鳥類の生息環境保全の観点を取り入れた湿地植生計画の立案手法を開発する目的で,国営みちのく杜の湖畔公園のダム湖畔湿地(面積約38ha)において鳥類の潜在的生息地の図化とそれに基づくシナリオ分析を行った。まず,鳥類の分布と現存植生の関係をGISによって分析し,類似の植生を選好する鳥類のグループ(ギルド)を,サンプルエリア内の植生の面積を説明変数とするクラスター分析で抽出した。次に,植生の面積を用いた正準判別分析により,各ギルドが選好する植生の組合せを求め,ギルドの分布予測モデルを構築した。3番目にこれを適用して調査地全域における鳥類の生息地タイプ図を作成した。最後に,人為的に植生を変化させる2種類のシナリオによって,潜在的生息地がどう変化するか予測し,これを基に植生計画を検討した。
著者
小荒井 衛 吉田 剛司 長澤 良太 中埜 貴元 乙井 康成 日置 佳之 山下 亜紀郎 佐藤 浩 司馬 愛美子 中山 詩織 西 謙一
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.3_16-3_31, 2012 (Released:2015-11-07)
参考文献数
29

This study develops the way to produce landscape ecological map for estimation of biodiversity using the airborne laser survey (LiDAR survey) data. We produce the landscape ecological map consists of three dimensional vegetation structure and micro topography under the forest using LiDAR. Two study areas were selected. One is the Shiretoko Peninsula (Mt. Rausu and Shiretoko Corp), Hokkaido Island as World Natural Heritage Area of Japan. Another is the Chugoku Mountains (north foots of Mt. Dogo) which are many historical iron sand mining sites (Kanna-Nagashi) as Satoyama Region (secondary forest area).Basic legend of landscape-ecological map consists of ecotopes which are the combination of vegetation classification and landform classification. Vegetation classification is three dimensional vegetation structure classification using high density random points data, detailed DSM (Digital Surface Model) and detailed DEM (Digital Elevation Model) by LiDAR data. Landform classification is micro landform classification using detailed DEM by LiDAR data.Using LiDAR data in summer and autumn seasons, 0.5m grid DSM and DEM in summer and 1 or 2m grid DSM and DEM in autumn are obtained. Vegetation classification has been down using three dimensional vegetation structure detected by the difference between LiDAR data in two seasons. The legend of three dimensional vegetation structure maps consists of the combination of vegetation height, thickness of crown and difference in two seasons (deciduous dingle layer tree, deciduous multi layer tree and evergreen tree). Landform classification has been done by automatic landform classification method combined three categories, such as slope degree, texture (roughness) and convexity of autumn DEM. The results of overlay analysis between vegetation classification and landform classification are as follows: On Shiretoko Peninsula, three dimensional vegetation structures are dominated by site elevation compared with micro landform classification. On Chugoku Mountains, some early deciduous high think crown trees (a kind of nut) are located in historical mining sites (Kanna-Nagashi) with following micro landform categories such as gentle slope, concave and rough texture.Grid size of landscape ecological maps is 4m, because the grid size is corresponding on tree crown size. At first, we produced 1m grid vegetation maps and automated landform classification maps, and then we resampled 4m grid data from 1m grid data. These maps would be introduced as example of LiDAR application for ecological field.
著者
久米 昌彦 日置 佳之 多田 泰之
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.15-20, 2007-08-31
被引用文献数
1

緑化樹木の根系の分布や状態は,移植や樹木の治療等,樹木の保護管理を行う上で最も重要かつ基礎的な情報である。しかし,従来現場で個別の樹木の根系を調べるには,掘り起しや水圧利用による根系の洗い出しといった手法以外に有効な方法はなかった。そこで,根系の水平的分布を非破壊かつ簡易に推定する全く新しい方法を開発するために,測定対象木の樹幹に振動を与え,土中及び根系を伝播する振動の伝播速度を,対象木周辺の複数個所で測定した。その結果,伝播速度の測定から樹幹を中心とする半径2.5mの円内における1 ) 主根の横走する方向,2 ) 根系の水平的分布の概要を推定することができた。特に,周囲に他の樹木がなく,地下に測定対象木のみの根系が存在するような土壌では高精度で根系の水平的分布の概要を推定することができた。
著者
河野 勝 日置 佳之 田中 隆 長田 光世 須田 真一 太田 望洋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.59-61, 1997

Nowadays, ponds in urban parks as habitats of plants and animals are strongly required in order to maintain biodivesity. The authors investigated on present and past situation of aquatic plants and structure of ponds in urban parks by questionnaires which sent to management staffs of urban parks. 160 sample data from all parts of Japan. were analyzed for clarifying relationships between aquatic plants and some factors of ponds' structures.<BR>Consequently, following relationships became cleared.<BR>(1) Approximately 30% of ponds are made with waterproof sheets and area of them are limited below mostly 10, 000<SUP>2</SUP> The main reason that ponds' area are limited is difficulty of water supply.<BR>(2) Most of the substratum of natural or semi-natural ponds are mud or silt in contrast that gravel used in man made (artificial) ponds.<BR>(3) More than 50% of ponds have only hygrophyte and emerged plants. On the other hands floating plants and benthophyte disappeared in many ponds though they were existed in past. It is considered that floating plants and benthophyte are sensitive for environmental impacts such as eutrophication.<BR>(4) Four structural factors; area of ponds, waterproof, structure of ponds' shore, and origin of ponds are related each other. Also certain relationship between hygrophyte or emerged plants and area of ponds or structure of ponds' shore are recognized. However, these kinds of relationships are not exist between hygrophyte or emerged plantsand waterproof or origin of ponds.
著者
日置 佳之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.205-208, 1996-03-29
被引用文献数
7 5

オランダでは,生物多様性を維持する目的で生態ネットワークを形成することが,国土計画における重要な政策として1990年に採用された。生態ネットワーク計画は,動植物のハビタットの分断化を防ぎ,生態系の水平的なつながりを回復しようとするもので,景観生態学的な調査に基づいて立案され,中央政府・地方政府・NGO等の協力のもとに,生態的インフラストラクチャー整備によって実現が図られつつある。本稿では,生態ネットワーク計画の理論的背景,計画内容,実現戦略について文献と現地調査に基づいて整理し,その特徴を考察した。
著者
高木 康平 日置 佳之
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.571-579, 2007 (Released:2008-12-05)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

侵略的外来種は生物多様性の保全にとって最大の脅威の一つとされている。その影響を軽減することを目指して,2005 年に外来生物法が施行された。イタチハギ (Amorpha fruticosa L.) は法面緑化に使用される北米原産の木本植物である。しかし,イタチハギは本来の分布域ではないアメリカ西部などにおいて在来植物への被害が報告されているにもかかわらず,法面緑化樹として有用なため,同法による特定外来生物の指定を受けていない。そこで本研究ではイタチハギの侵略性を評価するために,鳥取県旧八頭郡において法面とその周辺での生育状況及び八東川河川敷での逸出状況の調査を行い,2 つの外来種評価モデルを用いて侵略性の評価を行った。その結果,1) イタチハギは法面で25 年以上生存し続けること,2) 法面周辺に逸出していること,3) 河川敷で定着しており河川内で二次散布している可能性が高いこと,が明らかになった。また,2 つの外来種評価モデルをイタチハギに適用したところ,侵略性が高いことが示唆された。