著者
中島 正 千木 昌人
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究では,アシルシランシリルエノールエーテル(I)とアセタール類との反応による3-アルコキシアシルシラン誘導体の立体選択的生成と,これを利用する3または4連続不斉中心の選択的構築法について検討した。カルボニル基のα位にメチレン基を有するアシルシランをエノール化させ,生じたエノラートを塩化シランで捕捉してIを良好な収率で得た。エノール化剤としてのLDAの使用はZおよびE-Iの混合物を,ホスホニウムジイリドではE-Iを立体選択的に得た。E-またはZ-Iとアルデヒドジメチルアセタール類のアルドール反応ではいずれのIからも2,3-anti-3-メトキシ-1-シリル-1-アルカノン(II)が優先的に生じた。また,エーテル炭素置換基がフェニル及び直鎖アルキル基のIとベンズアルデヒドアセタールとの反応で最も高い立体選択性(d.e=92-96%)が認められた。E-Iとd,1-フエニルプロピオンアルデヒドジメチルアセタールアルドールとの反応では,3連続不斉中心を有する2,3-syn-3,4-syn-3-メトキシアシルシラン(V)が高立体選択的に生成し,3,4位炭素の相対配置とともに2,3位炭素のそれも規制されることが明らかとなった。IIおよびVにアルキルまたはフェニルリチウムを反応させ,対応する3および4連続不斉中心を持つ3-メトキシ-1-シリル-1-アルカノール(IIIおよびVI)を定量的かつ高ジアステレオ選択的に得た(d.e=80-99%)。IIIおよびVIのフッ素アニオン試薬による脱シリルプロトン化は,2,3位炭素間の相対立体配置に関係なく,定量的かつ立体特異的に進み対応する1,2-anti-3-メトキシ-1-アルカノール(IVおよびVII)を生じた(d.e=>99%)。