著者
千田 いづみ
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.312-317, 2016

&emsp;学校の教室には教師と生徒との間の距離や周囲の雑音があるため,難聴児は補聴器や人工内耳だけでは十分な聴取が得られず,補聴援助システムの併用が必要である。以前より普通学校ではFM補聴援助システムが使用されてきたが,チャンネル干渉が生じやすい欠点があった。最近使用されるようになったデジタル無線方式の補聴援助システムは,デジタル変調方式により音質が向上し,受信器と送信器間のペアリングによりチャンネル干渉が防止できる利点がある。<br/>&emsp;我々は,「徳島県の難聴児を支える連携」を構築し,地域の教育委員会に働きかけ,難聴児が就学する学校に補聴援助システムを導入してきた。また,一側性難聴児は健聴児と比較して騒音環境での語音聴取能が低下していることを明らかにし,一側性難聴児にも学校の教室に補聴援助システムを導入している。徳島県での補聴援助システム導入の現状と実績について報告した。
著者
千田 いづみ 島田 亜紀 宇高 二良 佐藤 公美 長嶋 比奈美 武田 憲昭
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.345-351, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
9

新生児聴覚スクリーニングの実施率の低かった平成16年度に徳島県で出生した児の新生児聴覚スクリーニングの実施状況,両側難聴と診断された児の診断に至った経緯と 7 年間の経過を追跡調査した。平成16年度に徳島県で出生した新生児6493人のうち,2894人(45%)が新生児聴覚スクリーニングを受けたにすぎず,23人が refer と判定されたが,1 次精査機関を受診した児は12人のみであり,1 人が両側高度難聴と診断された。4 か月で補聴器を装用し,聴覚学習を開始した。ところが,新生児聴覚スクリーニングを受けて pass した児の中から 1 人が,2 歳11か月時に両側中等度難聴と診断され,進行性難聴が疑われた。一方,新生児聴覚スクリーニングを受けなかった3599人から,5 人が両側難聴と診断され,補聴器の装用開始は22か月から61か月であった。新生児聴覚スクリーニングの実施率の低い県の場合,難聴の早期診断ができず療育の遅れにつながると考えられた。