- 著者
-
千田 佶
井上 千弘
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 試験研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1993
鉱山排水起源の集積培養菌による硫黄および鉄の酸化実験を行った。硫黄基質では、硫黄酸化細菌と原生動物が共存する硫黄酸化細菌による単体硫黄の酸化挙動と,純粋培養菌による酸化挙動を比較し,両者の挙動について検討するために,若干の酸化条件について実験を行い,また,鉄基質では鉄酸化細菌以外の微生物の存在を検討するために栄養塩無添加における酸化実験および有機物であるSDSを添加した実験を行った。また,高速液体クロマトグラフィーを用いて鉄基質集積培養における培養液中の物質の分析を行った。以上の結果,以下の結論を得た。(1)原生動物が生存する集積培養の場合,硫黄酸化細菌による酸化速度および増殖収率は純粋培養の場合よりも小さくなる。(2)Cu^<2+>を添加した集積培養において,硫黄酸化細菌は阻害作用を受けたにもかかわらず増殖したが,原生動物はCu^<2+>濃度100mgdm^<-3>以上では増殖できなかった。さらに,原生動物はCu^<2+>にたいする耐性を獲得しなかった。(3)鉄基質集積培養菌の栄養塩無添加における酸化挙動は,時間の経過とともに細菌によるFe^<2+>の酸化速度が大きくなり,細菌の増殖がみられた。(4)鉄基質集積培養において,SDSを添加した場合,鉄酸化細菌は1×10^<-5>moldm^<-3>以上の濃度で阻害された。しかし,この濃度で継代培養を行うと,鉄酸化細菌はSDSに対する耐性を獲得する。(5)鉄基質集積培養を行った培養液中からピルビン酸は検出されなかった。しかし,9K培地には含まれていない物質が検出された。栄養塩類無添加における鉄基質集積培養の実験結果と併せて考えると,それが鉄酸化細菌の栄養素となっている可能性がある。