著者
千田 智子
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

今年度は、研究期間の最終年度にあたるため、まず研究成果の出版に力を注いだ。その結果として、『南方熊楠の森』(共著、2005年、方丈堂出版)、『技術と身体-日本近代化の深層』(共著、2006年、ミネルヴァ書房)が出版されるにいたった。前者は、南方熊楠研究会との共同作業によるものであり、和歌山・田辺での実地調査と聞き取りを伴い、その成果を論理化したものである。後者は、国際日本文化研究センターでの共同研究の成果物であり、幾度にもわたる発表と意見交換の結果である。さらに、二本の研究論文を執筆した。また、新たな段階に踏み出すべく、環境に配慮した空間創造という側面から意義深い都市として、オーストリア・グラーツを訪問した。芸術性の追求と都市の持続可能な創造という観点から、その成果は、来年度に研究発表としてまとめる予定である。さらに、論文(「岡本太郎と南方熊楠-「比較」を超えて」)で明らかにした南方熊楠と岡本太郎の対比を発展させるとともに、芸術と人間の根源的な生命力との連関を論じた『生命の芸術(仮)』(講談社)を来年度に出版予定である。なお、この著作は、人間による環境へのはたらきかけの芸術性と、環境それ自体がもつ芸術性との関係を問題にしたものであり、この研究の集大成ともいえるものである。以上のように、研究は研究期間中に成果となったものと、これから成果物としてまとめる予定のものがあるが、最終年度としての研究段階としては、一応の結実をみた。