著者
千田 誠二
出版者
育英短期大学
雑誌
育英短期大学研究紀要 (ISSN:09143351)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-8, 2002-02-01

本研究は,英語教育におけるTeacher Talkの手法の一つ,MERRIER Approach(渡辺, 1995)の効果を調べたものである。中でもExample(例示)とRedundancy(発想を変えた言い換え)に注目し,この手法による教師の英語インプットを吸収した学習者が,後にどのような発話をするに至ったかを量と質の両面から分析した。教材はショートストーリーを用いて,統制群・実験群ともに2回聞かせた。ただし,実験群には2回目にMERRIER ApproachのExampleとRedundancyを多用して聞かせた。その後学習者にストーリーの内容を書き出させ,量的な観点からは総語数と従属節数,質的な観点からは独創的語彙数と統語変化数それぞれの伸びを測った。その結果,実験群すなわちMERRIER ApproachのExampleとRedundancyを通してストーリーを聞いた学習者は,総語数の伸びが統制群よりも有意に高いことを示した。一方,他のデータに有意な差は見られなかった。本結果から,MERRIER Approachによるインプットを学習者に与えることで,ストーリーの内容が深く理解され,発話の面にも好影響を及ぼすことがわかった。