著者
千葉 一幹
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.51-60, 1991-12-10 (Released:2017-08-01)

「グスコーブドリの伝記」における、ブドリの死が賢治の理想を体現しているのは、従来言われていたようにブドリが農民のために命を捨てたからでなく、個を思うことが直接世界全体の幸福につながるということを「反復」により実現しているためだった。そして個がそのまま普遍へと直結する世界とはイーハトーブの姿にほかならず、ブドリの死はイーハトーブがまさにユートピアとして生成することを保証するものでもあった。