- 著者
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千野 美和子
- 出版者
- 仁愛大学
- 雑誌
- 仁愛大学研究紀要 (ISSN:13477765)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.1-11, 2007
幸福な結末で終わる日本の昔話『たにし長者』と『手なし娘』を取り上げ,グリムメルヘンと比較しながら,その昔話の底に流れる日本人のこころのあり方,精神性を考察する.まず,『たにし長者』では,同じタイプのグリムメルヘンの『ハリネズミのハンス坊や』と比較した.グリムの物語は,呪いの言葉から生れた主人公の呪いをいかに解くかが中心のテーマであり,それは主人公の救済の物語である.それに対して,日本の物語の主人公は祈りから生れた.神への祈りと信仰が中心のテーマであり,信仰による神からの祝福の物語である.そこから,この信仰を支える心のあり方,精神性について考察した.つぎに『手なし娘』では,同名のグリムメルヘンを取り上げ,信仰のありかたの違いについて考察した.グリムのそれは神に対する信仰が強調され,その信仰の証として奇蹟が述べられるのに対し,日本のそれでは,人の心情の交流を中心に物語が展開し,その延長線上で生じた無心の行為に対して奇蹟が語られる.そこから,こころのあり方としての宗教性について考察した.