著者
東 知宏 長田 恭一 相倉 悦子 今坂 浩 半田 正之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.184-192, 2013-04-15 (Released:2013-06-04)
参考文献数
38
被引用文献数
1 7

一般に,りんごは中心果実を肥大させるために摘果される.摘果された未熟果実はプロシアニジン化合物を多く有するが,ほとんど利用されていない.りんご未熟果実の有効利用法を考えるために,4週齢のSprague-Dawly (SD)系雄性ラットに10 %の脂肪と0.17 %のりんご未熟果実由来ポリフェノール(UP)を含む飼料を62日間与え,UPによる脂肪蓄積抑制作用と血糖値上昇抑制作用を検討した.その結果,白色脂肪組織重量は,対照(C)群と比べてUPを摂取したラット(UP群)は有意に低くなった.血漿と肝臓のトリグリセリド濃度はC群よりもUP群は有意に低くなった.空腹時血糖値と血漿インスリン濃度は,C群と比べてUP群は有意に低くなり,血漿アディポネクチン濃度は,C群よりもUP群は高くなる傾向にあった.脂肪酸β酸化酵素のCPTIIとACOXのmRNA発現量は,両者ともにC群と比べてUP群は有意に高くなり,さらに,脂肪酸β酸化系酵素のmRNA発現に関連する核内受容体のPPARαのmRNA発現量も,C群と比べてUP群は有意に高くなった.また,in vitro試験で,UPの脂肪と糖質の吸収に与える作用を調べたところ,リパーゼと種々の糖質加水分解酵素の活性は阻害され,ミセル形成も阻害された.UPによる糖質と加水分解した脂肪の吸収阻害作用が反転腸管法でも確認された.以上のことから,UPの摂取により肝臓の脂肪酸β酸化が促進され,かつ,小腸からの脂肪と糖質の吸収が阻害されることで,生体内の脂肪蓄積が抑制されると考えられる.よって,ポリフェノールを多く含むりんご未熟果実は肥満予防食材として,有効利用できるのではないかと考えられる.