- 著者
-
半田 直史
小林 一三
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
微生物ゲノムに修復されないDNA二本鎖切断が残されると細胞死を起こす。そのため大腸菌から高等生物まで、DNAの二本鎖切断に対して相同組換え機構などの手段を備えている。大腸菌がゲノムにコードするDNA切断酵素としてI型の制限酵素があるが、この酵素は特定のDNA塩基配列を認識してもそこでDNAを切断しないでDNAをたぐり、別の酵素分子に邂逅した所でDNAを切断する。私たちは、この不思議な現象が正常なDNA複製をモニターし、異常があれば複製フォークを切断して、ゲノム、あるいは細胞の生死をコントロールする事を示唆する実験結果を得た(Nucleic Acids Res印刷中)。II型制限酵素が、その遺伝子を失った細菌のゲノムを切断して殺す「分離後宿主殺し」に関して、その細胞死への抵抗手段として、細菌から高等生物まで広く保存されている相同組換え経路(RecF経路)が重要であることを示した(Microbiology印刷中)。さらに、多くのタンパク質が同時に働くことが遺伝学的な解析から知られていた、この大腸菌のRecF経路による二本鎖DNA切断を修復を試験管内再構成実験で初めて成功した(Genes Dev印刷中)。また、RecBCD酵素によってプロセスされたDNAを引き継ぐRecAタンパク質については、RecAタンパク質と蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を精製し、その生化学的特徴を詳細に解析した。実は野生型のRecAタンパク質にGFPを融合させると酵素機能は消失する。そこで私は、これまで研究から活性が向上していることが知られている変異RecAタンパク質にGFPを融合することで、活性を維持したまま蛍光RecAタンパク質を得ることに成功し、これを1分子解析系に導入して、これまでに報告されている野生型RecAタンパク質の挙動と比較することができた(論文投稿中)。