著者
松島 肇 半谷 高久
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.505-511, 1975
被引用文献数
1 4

河川水を加圧型濾過器で濾過水と浮遊物質とに分離して水中の多環芳香族炭化水素の分析法を検討した.まず,濾過水についてはクロロホルム抽出し,又浮遊物質はシクロヘキサン-エタノールの混合溶媒によりソックスレー抽出し,各抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した.次に,フロリジルカラムを用いてベンゼン溶離でクリーンアップし,流出液を減圧下で1ml以下に濃縮した後,シリカゲルカラムを使用してイソオクタンで脂肪族炭化水素を,イソオクタン-ベンゼン(1:1)で多環芳香族炭化水素を溶離分画した.更に,多環芳香族炭化水素分画を減圧下で蒸発乾固し,それに一定量のベンゼンを加えて溶解し,マスフラグメントグラフィーにより11種の多環芳香族炭化水素を定量した.<BR>本分析法は従来の方法に比較して,薄層クロマトグラフィーなどの前処理による各多環芳香族炭化水素の単離という煩雑な操作が必要ない上に,濾過水・浮遊物質ともに数ppt以上存在すれば定量が可能であるなどの利点がある.本法の適用例として多摩川河川水を分析した結果,濾過過水・浮遊物質ともフルオランセン,ピレン,3,4-ベンゾピレン,1,12-ベンゾペリレンなどを数pptから100pptの範囲で同定・定量された.