著者
協和醗酵工業株式会社バイオケミカル事業本部バイオケミカル営業部農薬学術担当
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.201-205, 1998-05-20
被引用文献数
1

ホルクロルフェニュロンの安全性を評価するため, 各種毒性試験を実施した.急性毒性は原体, 製剤とも低く普通物相当であった.眼一次刺激性試験の結果, 原体に刺激性がみられたが, 洗眼により刺激は消失した.一方, 製剤では副成分中の有機溶媒によるものと考えられる強い刺激性が認められたが, これも洗眼することで大幅に刺激を軽減することができた.皮膚刺激については製剤で軽度の刺激がみられた程度で, 皮膚感作性は原体, 製剤とも陰性であった.亜急性毒性, 慢性毒性及び発がん性試験においてマウスの10, 000ppmの高用量群で, 腎臓毒性の持続による尿細管上皮の再生性増殖性病変が増加した.ラット及びイヌに腎臓障害は認められなかった.ラットによる繁殖試験及びラット, ウサギの催奇形性試験では特に異常はみられなかった.変異原性試験において染色体異常試験の代謝活性化法で0.4mM以上の濃度に染色体異常誘発性が認められたが, 復帰変異, DNA損傷試験及び小核試験ではすべて陰性で変異原性の誘起性はないものと推察された.薬理試験においてホルクロルフェニュロンの大量投与により, 中枢神経系及び消化器等に対して抑制的な作用がみられたが, きわめて大量投与による非特異的作用と考えられ, 通常の使用では本剤による中毒は発現しないと判断された.ホルクロルフェニュロンについては, 平成7年8月29日の残留農薬安全性評価委員会において, ADIが0.093mg/kgと設定された.