著者
鈴木 聡
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.7-15, 1996-02-20
参考文献数
30
被引用文献数
3

東日本の9県において各試験場内で雨水を採取して, MEP, マラソン, ダイアジノン, BPMC, IBP, モリネート, シメトリン, ディルドリン, およびイソプロチオランの残留量を月ごとに1989年から1992年まで経年調査した.水田に散布される地上防除用農薬の雨水による年間降下量はモリネート>IBP>シメトリン(不検出)の順であり, 薬剤の蒸気圧とともに, 使用剤型の影響を受けていると推察された.モリネートは冬期にも検出され.環境中に長く残留していることが考えられた.MEPの雨水中の検出量は調査した各県とも年間20∿100μg/m^2であり, 地域による偏在性はみられなかった.その要因として, 各県での出荷量が多く, とくに乳剤, 粉剤の使用が多く, そして空中散布が実施されていること, 気相中の半減期が長いこと等が考えられた.環境中での半減期がきわめて短いマラソンとダイアジノンの検出量は年間10μg/m^2の場合が多かった.しかしBPMCは調査5県のうち3県で年間降下量が100μg/m^2を超え, イソプロチオランは栃木のみの調査結果だが300μg/m^2を超えており, 地上および空中散布の使用が多いためと考えられた.多くの農薬の検出量は夏期に多く, それぞれの使用時期に検出ピークが認められた.作物の適用範囲の広いMEP, マラソン, ダイアジノンはわずかだが, 冬期においても検出された.現在使用されていないディルドリンはまったく検出されなかった.農薬の降下量と県レベルの出荷量との関連性ははっきりしなかったが, 各農薬の使用時において濃度は低いがその検出量および検出時期がほぼ一致していたことから, 使用されている農薬の雨水への残留は散布地点周辺に限定され, 広域的な大気拡散は少ないと推定された.
著者
稲塚 新一
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.133-143, 1982-05-20
被引用文献数
1

チャバネゴキブリに対する嗅覚的忌避性を評価しうる新しい方法として, 試験管法とビーカー法の2法を考案した.試験管法は, チャバネゴキブリの排泄物の付着した汚染濾紙を誘引源に利用し, 試験管中で供試化合物を処理したペーパーディスクに対するゴキブリの忌避反応の有無により検定する方法である.ビーカー法は供試化合物を含む試料を処理し, ビーカー中のゴキブリ数の変動により, 空間的な侵入防止効果および追い出し効果の有無を検定する方法である.これらの方法を用いて, 公知のゴキブリ忌避物質および天然精油の嗅覚的忌避性について検討した.α-naphthoquinone, 2, 3, 4, 5-bis(⊿^2-butenylene)tetrahydrofurfral, 2-hydroxyethyl-n-octylsulfideおよびnaphthaleneの公知の忌避物質は, 試験管法では, 低濃度で忌避効果を示したが, ビーカー法では2-hydroxyethyl-n-octylsulfideが弱い忌避効果を示したのみで, 他の化合物には有効な忌避性が認められなかった.一方, 天然精油では, Japanese mint oilおよびspearmint oil(native typeとScotch type)が顕著な嗅覚的忌避効果を示した.また, 蚊に対し強い忌避性を有すると報告されているcitronella oilなどの天然精油には強いゴキブリ忌避性が認められなかった.calamus oilなど数種の天然精油に性別による忌避性の差異が認められた.
著者
冨澤 元博 大塚 博子 宮本 徹 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.49-56, 1995-02-20
被引用文献数
6

シビレエイ電気器官のニコチン性アセチルコリンレセプターイオンチャンネル複合体へのイミダクロプリド関連化合物を含む各種リガンドの効果について, アセチルコリン(ACh)認識部位のプローブである[^3H]α-ブンガロトキシンおよびイオンチャンネル内のアロステリック部位のプローブである[^3H]フェンサイクリジンを用いたラジオレセプターアッセイにより検討した.ニコチン, アナバシン, カルバコールおよびシチシンはアゴニストであり, DMPP, コニイン, ネライストキシン, d-ツボクラリンはACh認識部位とアロステリック部位の双方に作用し, フェンサイクリジン, TCP, クロルプロマジン, メカミラミン, ロベリンおよびトリメタファンはアロステリック部位に作用する非拮抗的遮断薬であることを認めた.イミダクロプリド, 6-クロル-PMNIおよびアセトアミプリドは弱いアゴニスト作用を示したが, NMTHT, ニテンピラムなどには弱いアゴニスト作用とともにイオンチャンネル内に存在するアロステリック部位への弱い作用が認められた.
著者
Karr Laura L. Coats Joel R.
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.287-290, 1988-05-20
被引用文献数
84

リモネンのチャバネゴキブリ, イエバエ, ココクゾウ, ヒゲナガハムシに対する作用を, 経皮, くん蒸, 経口, 忌避, 残効, 殺卵, 殺幼虫性の生物検定法で検討した.チャバネゴキブリとイエバエにはわずかながら経皮毒性があり, ピペロニルブトキサイドの共力作用も認められた.高濃度蒸気にさらされたチャバネゴキブリとココクゾウは死亡した.経口投与による作用ではチャバネゴキブリの成虫, 若虫に殺虫活性はなく, かえって若虫の成育を促進した.処理した表面の素材の如何にかかわらず, チャバネゴキブリ成虫に対する残効性は認められなかった.高濃度処理でヒゲナガハムシの卵の孵化を抑制し, 土壌中で3齢幼虫に殺虫活性が認められた.以上の実験から限られた範囲ではあるがリモネンの殺虫作用が認められた.
著者
利部 伸三 東 明子 西村 勁一郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.267-271, 2002-08-20
被引用文献数
4

チアクロプリドの非環状類縁体およびシアノグアニジン関連化合物を合成し, それらのワモンゴギブリに対する殺虫活性を化合物単独, あるいは代謝阻害剤を併用して注射法により測定した.単独の場合には, チアクロプリドと2種のシアノグアニジン誘導体が最も高い活性を示し, イミダクロプリドの20分の1程度であった.チアクロプリドを含む含硫黄化合物の活性は, 代謝阻害剤の併用により100倍位にまで増大した.他方, シアノグアニジン誘導体の場合には, 代謝阻害剤による増大効果ははるかに小さかった.ワモンゴキブリの摘出神経に対しては, ほとんどの供試化合物は最初興奮を誘起した後, 遮断効果をもたらした.チアクロプリドとその非環状類縁体の遮断活性は, イミダクロプリドのものに匹敵していた.全体としては遮断活性が高いほど, 代謝阻害剤併用条件下での殺虫活性が高くなる傾向が見られた.
著者
小林 淳
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-66, 2000-02-20

バキュロウイルスは, 標的害虫を効果的かつ選択的に防除できるので, 化学殺虫剤の魅力的な代替物である.しかしながら, 遅効性などの制限要因により, バキュロウイルス殺虫剤の使用はあまり普及しなかった.即効性改善のための遺伝子操作法がいくつか考案された.遺伝子操作されたバキュロウイルス殺虫剤は, エクダイステロイドUDP-グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(egt)を欠失させたウイルスと外来遺伝子(昆虫ホルモン遺伝子, ホルモン関連遺伝子, 昆虫特異的毒素遺伝子など)を挿入したウイルスの2種類に分類される.これまで試された中で, 昆虫特異的毒素を発現する即効性バキュロウイルスが化学殺虫剤と対抗しうる効果を示した.昆虫特異的サソリ毒(AaITやLqhIT2)を発現する組換えAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)の欧米における野外試験は, 野外での殺虫即効性と作物の食害の減少を立証した.現在までに蓄積したデータは, 昆虫特異的サソリ毒の挿入がバキュロウイルスの安全性を損なわないことを示している.組換えバキュロウイルス殺虫剤の実用化にとって重要な問題点についても考察した.
著者
ファーマー ドナR. 脇森 裕夫
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.343-349, 2000-08-20

グリホサートの安全性を評価するため各種の毒性試験を実施した.原体, および各種製剤の急性毒性は低く, いわゆる普通物に相当した.また, 眼に対する刺激性は軽度から中等度であり, 皮膚に対する刺激性は軽度であった.皮膚感作性は認められなかった.亜急性毒性, 慢性毒性および発がん性試験では, 雄ラットの高用量群において白内障様レンズ変性が, 雌ラットの高用量群において体重増加抑制が認められた.また雄マウスの高用量群において肝細胞肥大および小葉中心性肝細胞壊死が, 雌雄マウスの高用量群に軽微な体重増加抑制が認められたが, いずれの動物種でも催腫瘍性は認められなかった.また, 繁殖試験において繁殖能に対する影響は認められず, 催奇形性試験において催奇形性は認められなかった.発達毒性が認められたのは母動物に対する毒性の認められた投与量においてのみであった.変異原性は復帰変異, DNA修復, 染色体異常のいずれの試験系においても陰性であった.薬理試験において心臓・循環器系に対する影響を示したが, 極めて高用量の投与の場合に限られており, 通常の使用により本剤による中毒は発現しないと考えられる.グリホサートは1980年9月に除草剤として農薬登録された.食品衛生法に基づく残留農薬基準が120種以上の作物に設定されている.一日摂取許容量(ADI)は0.75mg/kg/dayである.
著者
高橋 義行 和田 豊 小田中 芳次 古野 秀和
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.140-143, 2000-05-20
参考文献数
6
被引用文献数
2

さきに報告した1995年の人工降雨によるランオフ試験を実施した同じ傾斜圃場(6∿6.5°)において, 1996年7月の梅雨の合間に栽培キャベツ(7a)にTPN, ダイアジノン, ジメトエートの3剤混用1000倍液を167l/10a散布して, 翌日の降雨で0.6lの表流水を採取した.また, 9月には栽培ダイコン(8.4a)に同じ3剤混用液を101l/10a散布して, 2日後の台風通過よる降雨で290l (10 : 00∿12 : 30), 530l (12 : 30∿13 : 00)及び600l (13 : 00∿15 : 00)の計1420lの表流水を採取した.表流水の平均流出水量/m^2/hrは, 0.01l/m^2/hr(7月)及び0.12l/m^2/hr(9月)と少なかったが, 台風通過時の最大値(1.26l/m^2/hr)は既報の人工降雨試験による表流水量/m^2/hrに匹敵した.一方, 表流水中の薬剤濃度は0.001ppmから最大でも0.018ppmであり, 前年の人工降雨での場合の1/30から1/300の値であった.7月及び9月の薬剤散布後の表層土壌中(深さ5cm)の各薬剤はランオフの後では, TPNでは17%と84%が, ダイアジノンでは19%と78%が, ジメトエートでは90%と92%が, それぞれ表層より消失したと推定された.これらの結果は土壌の種類や状態, 天候及び地理的な相違によって異なると考えられるが, 少なくとも本圃場では自然降雨によるランオフは台風通過時などの強い降雨でないと発生が困難であり, また発生した表流水中の薬剤濃度は人工降雨試験の結果と比べて極めて低濃度であった.
著者
嶋津 賢士 清水 基久 鈴木 幸一 桑野 栄一
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.337-339, 1996-08-20
被引用文献数
4

1, 5-二置換イミダゾール類と同様に1-置換イミダゾール類にも早熟変態誘起活性があることを見いだした.1-直鎖アルキルイミダゾール類ではデシルやドデシルの場合に活性が高く, これらより炭素数の増減したアルキル鎖では活性は低下した.1-アルキルオキシフェニルイミダゾール類は弱い活性であった.一方, 1-[3-(4-エチルフェニル)プロピル]イミダゾールに高い活性が認められたが, イミダゾール環窒素と酸素間の炭素数が2や4個では活性は著しく低下した.ベンゼン環上の置換基では4-エチルと4-プロピル基が強い活性を示した.これらの1-置換イミダゾール化合物の早熟変態誘起活性は1, 5-二置換イミダゾール化合物の場合と同様, メトプレンやテブフェノチドの同時局所施用により消失した.
著者
大川 秀郎 辻井 久恵 下地 みゆき 今宿 芳郎 今石 浩正
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.197-203, 1999-05-20
参考文献数
39
被引用文献数
3

チトクロームP450モノオキシゲナーゼは農薬などの外来性化合物の解毒または活性化に, 並びに, 殺菌剤, 植物成長調節剤, 殺虫共力剤, 除草剤セイフナーなどの作用点として重要である.最近のゲノムプロジェクトの成果により, P450遺伝子は生物界のバクテリア, プロトゾア, 植物, 動物, 糸状菌のすべてに分布しており, 動物や植物の種には多くの遺伝子が存在することが明らかになった.特に, モデル植物であるシロイヌナズナには約400の遺伝子が存在すると推定されている.これらP450酵素の生化学的性質を明らかにすることが, 生理学的な役割の解明に重要である.高等植物では, シロイヌナズナT-DNA変異株を用いた研究が生理学的な役割の解明に有効であり, また, 酵母を用いた遺伝子発現系は実際に酵素機能の解明に広く用いられている.さらに, 薬物代謝に係わるP450分子種を発現したトランスジェニク植物の作出は, 除草剤選択性植物やファイトレメディエーション用植物の育成に重要である.
著者
奥本 剛司 尾添 嘉久
出版者
日本農薬学会
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.145-146, 2002 (Released:2011-03-05)

α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に選択性を示す[3H]エピバチジンを用いて、最適化した条件下で結合阻害実験を行い、ネオニコチノイド殺虫剤6種のラット脳ニコチン性アセチルコリン受容体に対する親和性を評価した。イミダクロプリドが最も高い親和性を示し(10μMで60.6%の阻害)、次いでアセトアミプリド、クロチアニジンの順となった。その他の3種にはほとんど親和性が認められなかった。
著者
遠藤 正造 鶴町 昌市
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.82-86, 2001-02-20
参考文献数
14

1989∿1992年に東南アジアと日本で採集したトビイロウンカとセジロウンカの感受性を比較した.トビイロウンカ : 1989, 1990年に採集したマレーシア個体群のマラソン感受性は日本のそれの約1/7と低く, ダイアジノン, カルボスルファン感受性も若干低い傾向が認められた.また1992年の検定結果では, ベトナム南部及びタイ個体群のマラソン感受性は, 日本及びベトナム北部のそれより若干低かった.しかし, 他の薬剤に対する感受性はこれらの個体群間で大きな差はなかった.セジロウンカ : 1989∿1990年個体群の薬剤感受性を比較した結果, マレーシア個体群のマラソン感受性は日本のそれの約1/6と低かった.しかし, 他の薬剤に対する感受性はこれらの個体群間でほとんど差はなかった.また, 熱帯地域においてもこれら2種のウンカは1977∿1992年の間に各種薬剤に抵抗性が発達したことが確認された.
著者
石川 莞爾 中村 安夫 仁木 良夫 鍬塚 昭三
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.17-25, 1977-02-20
被引用文献数
2

^<14>C-標識および非標識化合物を用いて, 紫外線および太陽光線下でのベンチオカーブの光分解を研究した.水溶液中でベンチオカーブは紫外線により速やかに分解し, 比較した他の7種類の農薬より速やかに分解した.ベンチオカーブの分解生成物として, ベンチオカーブスルホキシド, デスエチルベンチオカーブ, 4-クロルベンジルアルコール, 4-クロルベンツアルデヒド, 4-ヒドロキシベンツアルデヒド, 4-クロル安息香酸のほか, 同定された化合物8種類および未同定の化合物約20種類が検出された.これらのうち, 4-クロルベンジルアルコールおよび4-クロルベンツアルデヒドが多量に生成した.太陽光線下でも水溶液中でベンチオカーブは速やかに分解し, そのさい検出された分解物の大部分は紫外線照射で生成した分解物と同じものであった.ガラス板上の薄層へ紫外線を照射した場合も, 水溶液と同様の分解物が生成した.
著者
アグロ・カネショウ株式会社開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.S159-S164, 1992-05-20

ジフルベンズロン原体およびその水和剤の急性毒性はきわめて弱く, 眼粘膜に対して弱い刺激性が認められているが, 皮膚刺激性および皮膚感作性は認められていない.亜急性毒性および慢性毒性では, 本化合物投与によって, 病理組織学的変化を伴う貧血および肝臓, 脾臓等の臓器重量の増加が認められたが, いずれも軽微な変化であり, 低用量群ではこれらの変化が認められなかった.ラットの繁殖に及ぼす影響もみられず, ラットおよびマウスにおける発癌性, ラットおよびウサギにおける催奇形性, 多岐にわたって実施した変異原性も陰性であった.ジフルベンズロンを有効成分とする兼商デミリン水和剤は1987年に農薬登録され, 従来の神経系に作用する殺虫剤とは作用機構の異なる優れた昆虫生育制御剤であり, 安全性が高く, 有用な農業資材の一つとして広く実用に供せられている.
著者
山本 敦司 米田 渥 波多野 連平 浅田 三津男
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-42, 1996-02-20
被引用文献数
1

静岡県榛原郡の日本曹達(株)榛原農業研究所内の柑橘園から採集し, ヘキシチアゾクスで抵抗性および感受性への淘汰を繰り返したヘキシチアゾクス抵抗性および感受性ミカンハダニ(Panonychus citri MCGREGOR)を実験室内で混合することにより, 抵抗性の安定性を調査した.感受性と抵抗性を50 : 50および30 : 70で混合した集団では, 第1世代ですみやかに感受性復元が認められたが, 10 : 90および2 : 98で混合した集団では第12世代でも感受性復元は不十分であった.次に, ヘキシチアゾクスを7年間に19回連続処理し抵抗性発達が認められた柑橘園において, 調査樹6本に寄生するミカンハダニのヘキシチアゾクスに対する感受性変化と個体数変動を調査した.その結果, いずれの樹においてもヘキシチアゾクスの使用を中止した後33か月の間に感受性が徐々に復元した.またミカンハダニ雌成虫の個体数変動は, ヘキシチアゾクスの使用中止前と直後では樹ごとに異なったが, 使用中止約1か月後からは樹間で同調する傾向にあった.圃場における感受性復元の原因は, 感受性個体群の柑橘園内での残存と他園からの移入, 不完全劣性であるヘキシチアゾクス抵抗性の遺伝, および抵抗性個体の繁殖能力の低下であると推察された.
著者
田母神 繁
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.100-103, 2001-02-20
参考文献数
15
著者
鈴木 宏一 平田 博明 猪飼 隆 坂田 五常
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.p315-323, 1991

Quizalofop-ethyl, ethyl 2-[4-(6-chloro-2-quinoxalinyloxy)phenoxy] propionate is a selective grass herbicide developed by Nissan Chemical Industries, Ltd. Quizalofop-ethyl possesses a wide herbicidal spectrum for grass weeds with a quick action at low application rates by foliage applications. It shows good safety for non-gramineous crops. A research for a grass killer herbicide, focussed on heterocyclicoxy phenoxy proionic acid, began in 1978. During investigations on the various condensed heterocyclic moieties, the quinoxalinyloxy phenoxy propanoic acid derivatives were found to have a high potential for grass herbicides. Through the optimization of derivertives, the title compound was selected as a candidate for development. In field trials conducted in major producing areas of soybeans, cotton, sugar beet and other broad leaf crops, quizaolfop-ethyl demonstrated sufficient control at 0.5-1.5 g a.i./a for annual grass species and at 1.25-2.5 g a.i./a for perennial ones. Quizalofop-ethyl was translocated from treated leaves to meristem tissues of grass weeds within a day and attacks these parts, followed by causing necrosis. Quizalofop, which is the metabolite of quizalofop-ethyl, was proved to be a potent inhibitor of fatty acids synthesis through acetyl-CoA carboxylase inhibition. A main metabolic pathway of quizalofop-ethyl was the hydrolysis to quizalofop in plants, soil and mammals. Following hydrolysis, cleavages of ester bonds, hydroxylations and conjugation of quizalofop occurred. Toxicity of quizalofop-ethyl in mammals, fish and birds was very low. Its potential hazard to the environment was minimal.
著者
山口 勇 関戸 茂子 見里 朝正
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.523-529, 1982-11-20
被引用文献数
7

殺菌性抗いもち剤およびプロベナゾールは, いもち病菌の色素合成(黒色化)に影響を与えなかったが, トリシクラゾール, CGA 49104, フサライド, ペンタクロロベンジルアルコール(PCBA)は菌系によるポリケタイド系のメラニン生合成を阻害または攪乱し, 中間体 : シタロンおよび代謝物 : 2-ヒドロキシジュグロン(2-HJ, 黄色色素)を共通に蓄積した.ただ, フサライドとPCBAはフラビオリン赤色色素の蓄積にはあまり影響しなかった.これら薬剤のセロハン膜法による付着器からの侵入阻害は葉鞘検定の結果とよく一致し, 薬剤の一次作用点が宿主側よりは菌側にあることを示唆した.また, これら薬剤は, いもち病菌付着器の黒化も抑制するが, トリシクラゾール, CGA 49104の存在下にメラニン合成の後期中間体 : バーメロンまたは1, 8-ジヒドロキシナフタレンを添加すると, 付着器からセロハン膜への穿入回復は明瞭でなかったものの, 着色阻害は完全に回復した.一方, 2-HJとシタロンは, いもち病菌の感染過程に影響することが認められ, メラニン合成阻害に基づく付着器の未熟に加えて生理活性中間体の蓄積も薬剤の有効性に関与している可能性が考えられた.
著者
ファイザー製薬株式会社農産事業部農産開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.S323-S325, 1992-11-20

酒石酸モランテルの安全性評価のため各種毒性試験を行なった.その結果, 本剤の急性毒性は比較的弱く, 普通物に該当する.眼に対する刺激性はわずかに認められたが, 薬剤の希釈により刺激性は軽減した.また, 皮膚に対する刺激性はなかったが, 皮膚感作性は陽性であり, 皮膚にアレルギー反応を生じる可能性があると判断された.一方, 6か月毒性試験では高用量群(27, 500ppm)において, 死亡例の発生, 体重の減少, 摂餌量の減少, 剖検時の全身性の消耗, 諸器官の萎縮性変化などがみられたが, 本剤投与による特異的な変化は認められなかった.変異原性は陰性であった.また, 催奇形性に関しても問題はなかった.酒石酸モランテル液剤であるグリンガードは昭和57年11月に登録を取得した.また, 8%液剤であるグリンガード・エイトは昭和61年7月に登録を取得し, マツノザイセンチュウの侵入・増殖を阻止して松枯れを防止する樹幹注入剤として使用されている.酒石酸モランテルは, 定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が確保されるものであり, 松枯れを防止する有用な農薬として上市以来好評を得ている.