著者
南 久美子 野添 新一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.127-134, 2008

摂食障害患者(神経性食欲不振症(Anorexia nervosa,AN):45例,神経性過食症(Bulima nervosa,BN):28例)が治療前に書いた文章完成テスト(Sentence Complete Test,SCT)を用いて家族関係を分析した.その中で次の3項目"私の父""私の母""家の人は私を"を対象とした.そしてSCTから見た家族関係は病型によって違いがあるか,また病態の慢性化に関わっているかを調査した.その結果,1)「私の父」に関する評価は,AN群が"父はやさしい"と肯定的に評価し,BN群との間に有意差(p<0.05)があった.2)「私の母」に関して,BN群は母親を否定的に評価し,AN群との間に有意差(p<0.05)があった.3)「家の人は私を…」に関して,AN群は"…してくれる"と家族を肯定的に評価し,BN群との間に有意差(p<0.05)があった.またBN群の患者はAN群に比して家族によって否定的に評価されている(p<0.05)とした.結論として,SCTから見た摂食障害の家族関係には病型による違いがあった.AN群では父性性が弱く,家族は過保護,過干渉的で,BN群は家族システムの変化〔核家族化,少子化,母親の就業など〕や高度経済成長に伴う物質的豊かさやマスコミなどの影響を受けて,家族の絆がよりほころびていた.このような家族の態度は摂食障害の慢性化を促すことに深く関わっていると考えられた.以上から摂食障害の治療において家族との関わりは一層重視されるべきである.