著者
藤原 輝男 日下 達朗 翁長 謙良 南 信弘 細山田 健三 今尾 昭夫
出版者
山口大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1986

水食による農地災害防止の基礎的問題としての降雨特性と土壌特性との関連における土壌侵食の問題解明についておよそ次のような成果を得た。(1)南・小椋は25種の土壌について自然降雨による最大一時間降雨強度と土壌流亡量を一降雨毎に測定した結果、許容流亡土量を0.5t/haとすれば限界降雨強度は5〜30mm/hとなる結果を得た。(2)細山田は表土が黒ボクの土壌流亡の実測結果から、土壌因子Kの値が約0.04となり、また、たてうね,よこうねの土壌流亡量の比は中程度の侵食量の場合、前者が30〜40倍になることを求めた。(3)田熊はマサ土と赤色土の侵食性は、それぞれ220μmの粒径分と集合体の安定度が高い相関を示し、その両土の水食後の粒子の210μmの粒径分が対照的であることを明らかにした。(4)藤原・日下はこれまでに明らかにしてきた表面流と土壌侵食量の基礎的な関係に侵食要因を総合的な数値で表わす侵食係数を取り入れて展開し、降雨量から直接予測できる実用的な土壌流亡量推算式を提案した。(5)福桜は雨滴侵食に対する土壌面タン水の影響を明らかにするためにナイロン球を用いた実験を行なった結果、水滴の場合と明らかに異なって水深3mm程度のタン水時における衝撃のピークは認められなかった。(6)深田は水深がある場合に落下水滴による底面圧力を測定し、データを無次元量でまとめ、底面圧力と侵食量は密接に係わっていることを示唆した。(7)翁長は侵食試験区や室内実験の観測をもとに侵食に関与する傾斜要因を解明した結果、【E_I】値186以下の降雨条件下で侵食が極めて少くなる限界勾配(約1.5度)があることを実証した。また今尾は被覆による防止効果の発現は単作栽培に比較して早朝に発生すること及び帯状幅の長さには限界のあることなどを明らかにした。