著者
翁長 謙良 吉永 安俊 趙 廷寧
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.149-155, 1998-12-01

歩測は現在まで依然として重要な測量方法の一つである。歩幅を確定し, 身長との関係を明らかにすることは, 人間の体型と歩行習慣を知る上で, また, 野外調査などにおける概略の測距に便利である。1985年から学生の測量実習を通じて, 琉球大学農学部に在学中の男子190名, 女子46名の身長と歩幅の資料を収集し, それらの相関について検証した。本研究では, 多元回帰分析方法によって, 身長による歩幅の予測式を作成し, 下記の結果を得た。男子 : Y=0.38X+0.09(r=0.738) 女子 : Y=0.36X+0.16(r=0.754) 全体 : Y=0.26X+0.31(r=0.706)
著者
翁長 謙良
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.111-209, 1986-12-05
被引用文献数
10

農地における土壌侵食現象に関しては国の内外を問わず古くから大きな社会問題とされてきた。侵食の機構やその対策に関してはこれまでも世界各地で多くの研究があるが, 各地域によって侵食要因の特性が異なり, その間に普遍性は見出せない。これは侵食量に影響をおよぼす各因子が複雑に錯綜するので, 定量的把握は困難であることによる。したがって侵食度の高い沖縄地方においても現地に即した研究が必要である。本研究は沖縄島北部地方の降雨侵食の要因についての実態調査に基づく実証的研究である。まず沖縄島北部地方における侵食の概況について記述する。沖縄島の地形, 地質を概観すると, 中南部は緩傾斜地であるが, 北部は山岳地帯でミクロ的には傾斜地が多く, 谷密度が高い。従って降雨による表流水は速やかに河海に達する。また土壌は, 受食性の高い赤・黄色土が卓越しており, 降雨量も中南部より多く, 年雨量の平均が約2,300mmである。このような自然条件の下で区画の大きい農地を造成する際は改良山成工が採用されるので土壌の大量移動が伴う。従って土壌構造が破壊され, 脆弱化され, 降雨による分散, 表流水の運搬に対する抵抗性が弱くなる。しかも, 受食性作物とされるパイナップルが植栽されているので侵食は益々受け易くなる。以上のように沖縄島北部地方は降雨による土壌侵食性のポテンシャルが高い。このことを現場における実態調査結果から要約するとつぎのとおりである。農地の造成中は, 砂防施設等の滞砂や濁水浄化の機能が十分に発揮されてなく, 大量の土砂が河川や沿岸に流失し流域環境の悪化を招いている。河川の中流域で浮遊土砂量を観測した結果, 1雨(97mm)で100トン余に上る土砂量(乾燥重量)が流亡した事例があり, 造成初期の畑地において, 600mmの雨により, 2haの圃場から433m^3の土砂流亡が観測され, 造成後やや落着いた農地からでも5ケ月間で1,000mmの雨量によりその表土層が1.1cmも侵食される事例もある。さらにパイナップル畑での流出水の濁度観測では濁度のピークが10,000ppmにも達することも認められ, 土壌侵食はかなり顕著に出現している。侵食の実態調査結果からこのような現象を出現させる要因を検討すると, 人為的作用によるほかは, 主として土性, 降雨, 傾斜要因であることが考えられたので, これらの要因についての解析結果をつぎに述べる。(1)土性 沖縄地方は湿潤亜熱帯のアジアモンスーン地域に位置している。それ故その地域の気候を反映して本土と異なる特殊な土壌(赤黄色土 : 国頭マージ)が分布している。中でも沖縄島北部や石垣島, 西表島などではこの種の土壌が卓越している。国頭マージは沖縄県の国頭(北部)地方に分布する赤い土という意味の沖縄方言による呼称であるが, 土壌の大分類では赤色土・黄色土とされている。細分類としては13の土壌統に区分され, それぞれの特徴づけがなされているが, 造成・整備農地ではその性質が異なる種々の土壌が混在している場合が多い。したがって物理性の記述に関しては国頭マージとして扱った。この土壌の侵食に関与する2,3の物理性について広範な調査に基づき, 粘土含有量, 団粒化度, 分散率, 浸入能を検討すると次の結果が得られた。1)粘土含有量は9.0∿58.5%の広い範囲にまたがっており, 土性が砂土から植土まで多岐にわたっている。2)沖縄の主要な土壌について団粒化度を調べた。その結果島尻マージ(暗赤色土)10試料中, ジャーガル(灰色台地土)8試料中については団粒化度80%以上のものがそれぞれ9試料, 6試料であったのに対し国頭マージは35試料中わずかに7試料であり, 耐水性団粒が極めて少ないことがわかった。3)分散率について, わが国の基準にしたがって分類すると, 分散率が40以上の受食性域にある土壌は国頭マージ, ジャーガル, 島尻マージでそれぞれ, 34試料中16,13試料中4,22試料中2であった。4)浸入能について本州土壌のそれと比較すると浸入の初期においては大差はないが時間の経過につれて小さくなり, ベーシックインテークレートはかなり低くなる。なお4時間後の浸入能を比較すると国頭マージ(4試料)では7mm/h∿95mm/hの範囲にあるが本州土壌(5試料)では81mm/h∿360mm/hの範囲にある。また現地裸地圃場での散水インテークの試験結果では畑面勾配が3°, 降雨強度65mm/hのとき耕起, 不耕起別の浸入能は散水開始後それぞれ, 17∿18分, 12∿13分で, 降雨強度以下になり表面流出が見られた。さらにパイン畑では9mmの雨でも大量の流亡土が観測されるなど, 圃場条件によってもかなりの差があることが認められた。以上によりこの地方のとくにパイナップル畑では土壌の受食性が高いことが明らかになった。(2)降雨エネルギー 降雨の侵食能力はそのエネルギーである。このエネルギーは雨滴の分布型と降雨強度に左右され, 当然, 地域特性をもつものである。沖縄の降雨に関して約12万個の採取雨滴の
著者
翁長 謙良 米須 竜子 新垣 あかね
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.71-82, 1999-12-01
被引用文献数
2

本研究では,沖縄県におけるこれまでの赤土等流出防止に対する研究を踏まえ,土砂流出が及ぼす影響や年間流出量等を考察し,これまでの赤土等流出の歴史的経緯を概観し,対策の提言を行った。その結果,次のように要約できる。赤土流出の影響としては,道路や田畑等の損傷の物理的面,沿岸の景観の悪化という精神的面,川や海の底生生物への影響と云った生物的面等がある。土壌侵食と土壌保全の歴史的経緯の概略についてこれまでは,次の四つの時代,即ち(1)17世紀以前の焼畑農耕時代,(2)18世紀半ばの蔡温時代,(3)1920∿1930年の杣山(官有林)開墾時代,(4)1950年代後期∿現在までの時代に区分したが,昭和18年代の我謝栄彦の提言を考慮し,時代区分を六つの時代とした。急激な畑地造成の結果,土砂流出が著しいものとなり,現在では赤土等流出防止条例(1994)の施行によって,具体的な対応策が講ぜられている。赤土等流出防止条例の施行後,歴史的に侵食の最大原因とされていた開発事業に関してはかなりの改善策が取られ,流出量は大幅な減少を見ている。また対策としては,土木的対策として,圃場の区画の形態をUSLE(Universal Soil Loss Equation : 汎用土壌流亡予測式)を基に検討し,排水路,承水路の配置については耕区単位ごとに承水路を設けることや畑面の傾斜を緩やかにすること,また沈砂池等の砂防施設のあり方等についてはその大きさ,真水と濁水の分離排水を提言した。営農的防止対策としては,マルチングの効果やミニマムティレッジによる土壌保全の効用等を提言した。
著者
藤原 輝男 日下 達朗 翁長 謙良 南 信弘 細山田 健三 今尾 昭夫
出版者
山口大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1986

水食による農地災害防止の基礎的問題としての降雨特性と土壌特性との関連における土壌侵食の問題解明についておよそ次のような成果を得た。(1)南・小椋は25種の土壌について自然降雨による最大一時間降雨強度と土壌流亡量を一降雨毎に測定した結果、許容流亡土量を0.5t/haとすれば限界降雨強度は5〜30mm/hとなる結果を得た。(2)細山田は表土が黒ボクの土壌流亡の実測結果から、土壌因子Kの値が約0.04となり、また、たてうね,よこうねの土壌流亡量の比は中程度の侵食量の場合、前者が30〜40倍になることを求めた。(3)田熊はマサ土と赤色土の侵食性は、それぞれ220μmの粒径分と集合体の安定度が高い相関を示し、その両土の水食後の粒子の210μmの粒径分が対照的であることを明らかにした。(4)藤原・日下はこれまでに明らかにしてきた表面流と土壌侵食量の基礎的な関係に侵食要因を総合的な数値で表わす侵食係数を取り入れて展開し、降雨量から直接予測できる実用的な土壌流亡量推算式を提案した。(5)福桜は雨滴侵食に対する土壌面タン水の影響を明らかにするためにナイロン球を用いた実験を行なった結果、水滴の場合と明らかに異なって水深3mm程度のタン水時における衝撃のピークは認められなかった。(6)深田は水深がある場合に落下水滴による底面圧力を測定し、データを無次元量でまとめ、底面圧力と侵食量は密接に係わっていることを示唆した。(7)翁長は侵食試験区や室内実験の観測をもとに侵食に関与する傾斜要因を解明した結果、【E_I】値186以下の降雨条件下で侵食が極めて少くなる限界勾配(約1.5度)があることを実証した。また今尾は被覆による防止効果の発現は単作栽培に比較して早朝に発生すること及び帯状幅の長さには限界のあることなどを明らかにした。