著者
望月 幸治 柿谷 愛子 河野 雄一 丸山 功揚 南 裕香理 和田 恒彦 徳竹 忠司 濱田 淳 宮本 俊和
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.85-88, 2016 (Released:2020-05-20)
参考文献数
14

【目的】鍼施術での臓器損傷リスクを回避するためには人体の層構造の解剖学的な理解が必要である。体幹部における鍼施術の危険深度に対する検討はこれまで解剖遺体や生体に対しMRI、CTでの研究がなされてきた。しかし仰臥位が主であり臨床上行う腹臥位での検討は少なく、側臥位で検証している研究は見当たらない。 そこで、腰背部を仰臥位、腹臥位、側臥位でMRI横断面にて撮像し、腎兪、志室の経穴部の体表-腎臓間の距離および腹部内臓の位置や形態の変化を観察した。 【方法】被験者1名(男性:身長159cm、体重50kg、BMI19.8)に対しMRIにて腹部領域を仰臥位、腹臥位、左側臥位の3方向にて撮像し、腎兪、志室穴相当部位の体表から腎臓までの矢状面に平行な直線の距離を計測した。腎兪の位置を第2腰椎棘突起下方の陥凹部より外方3cmに、志室の位置を外方6cmとして計測した。また体位の違いによる体表面の輪郭、腹部内臓の位置の変化を観察した。 【結果】今回の被験者では腎兪の直下には腎臓がなかった。志室から腎臓までの距離は仰臥位では右 (37.0mm)、左 (39.1mm)、腹臥位では右 (35.0mm)、左(39.1mm)、側臥位では右 (39.7mm)、左 (43.2mm)であった。 また腎臓は移動し、形態も変化した。体表面の輪郭は腹臥位では前側がつぶれたまんじゅう型、側臥位ではお腹が垂れた三角おにぎり型に近づくなど形態の変化が認められた。 【結語】仰臥位、腹臥位、左側臥位の体位の違いにより体表-腎臓間距離、体表面の輪郭、腎臓の位置が変化をすることが分かった。