著者
南条 厳 小林 桂 吉田 重喜
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.111-120, 1995-01-30

梅山豚の繁殖豚の飼育及び,子豚の生産・育成を通して得た調査結果を纏めると次のとおりである。1. 梅山豚の外貌は皮膚が薄墨色で,深い皺があり,毛は疎ら,耳は大きく垂れ,体型は背幅,腰幅薄く尻は傾斜し,腿とともに厚みに欠ける。種豚の体重は成豚で雄は約170kg前後,雌は150kg前後である。性質はいたって温順である。2. 種豚に対する緑葉野菜の給与は必要不可欠ではなく,種豚用配合飼料のみでもよいことが分かった。3. 耐病性については,子豚に乾いた咳をするものがでて,剖検でも肺炎を裏付ける結果がでた。4. 成熟は極めて早く,導入間もなく分娩をした2頭の受胎月齢が4ヶ月前後であったと,推定されることからもその早熟性は,充分に窺うことが出来た。5. 発情の徴候は非常に明瞭であった。6. 母体による子豚の圧死の危険がないため,分娩柵を必要としなかった。7. 母豚の平均産子数は10.1∿15.9頭で産子豚のうち生産子豚は8.7∿14.4頭であり,母豚によってはようきひ号の様な産子の40.8%が死産という生産子成績の悪い例も見受けられた。8. 子豚の平均生時体重は,父豚も梅山豚の純粋子豚では,1.0kg弱で最小体重0.38kgの子豚も活力旺盛であった。父が金華豚では梅山豚純粋種と同程度で,父がランドレースでは純粋子豚に比して約15%程度大きくなった。9. 母豚の離乳後の発情再帰日数は4.5±0.7∿10.2±2.8日で,個体によってかなりの差がでた。雄の許容日数は1.9±0.6∿2.2±0.9日であり,妊娠期間は112.7±1.2∿115.6±1.6日であった。10. 母豚の乳頭数は16∿18でヨーロッパ改良種に比して多く,産子豚では16以上の乳頭数の子豚は,母豚4頭の総産子319頭の85.6%であった。F_1子豚では父が金華豚の場合は,純粋種と同程度かもしくは多いのに比し,父がランドレース種では平均60%弱であった。11. 例数は少ないが離乳時(35日齢),3ヶ月齢の体重は,ヨーロッパ改良種との比較でほぼ同等の発育成績を示した。又,一般に仕上げ期と見做される7ヶ月齢においてもヨーロッパ改良種と比べて遜色はなかった。