著者
南谷 貴史
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.65, pp.19-35, 2004
被引用文献数
1

近年, 西アフリカではコメの需要が増加の一途をたどっており, 輸入米への依存度を強めている諸国が大半を占める。コートジボワールでも供給量の40%に当たる78万tを輸入に依存している。陸稲栽培に対し, 比較的高い単収が期待される灌漑稲作栽培の展開は, 内陸小低地を利用した大規模開発を中心に進展されてきたが, 基準となる栽培技術の普及や設備の維持管理等の諸問題により, 依然として生産を安定させるには至っていない。<br>本稿ではコートジボワールの内陸小低地に点在する灌漑稲作地域においての現地調査を通し, 農民の行動を左右する自然的要因及び社会経済的要因の特徴を開発形態別に明らかにするとともに, 灌漑稲作を基幹作物とする農村における諸問題の解決に向け, 内発的・持続的であるかといった視点に立ち, 導入可能な適正技術を検討し, 農民参加型での事例検証を行った。<br>自然資源利用型の政府主導による大規模開発地域に対し, 内発的開発形態としての農民自らの開墾地域は, 持続性・自立発展性において優位性が認められ, また, 小規模機械化に伴う農民組織化は灌漑稲作を進展させるひとつの適正技術になり得ると考えられる。<br>農村社会の生活向上のためには, 農民の持つ開発能力の進展 (エンパワーメント) を図ることが重要であり, 人的資源・社会資源を再評価し, それを活用する環境を如何に整えるかが課題となる。