著者
卯月 由佳
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.149-160, 2015-07-25 (Released:2018-02-01)

子どもの時期に貧困を経験すると将来も貧困に陥るリスクが高まるという,貧困の世代間連鎖の問題が懸念されている。本稿は,貧困の世代間連鎖のメカニズムについて説明する経済的モデルと社会的モデルの違いに着目し,低収入世帯の中学生の学校外学習時間を増加させるには,経済的モデルに依拠した収入面での学校外学習支援が有効か検討する。内閣府が2011年に実施した「親と子の生活意識に関する調査」のデータを用いて中学3年生の学校外学習時間に対する世帯収入の効果を分析した結果,その効果は親の学歴と学習習慣を統制した後も残り,部分的には学校外教育サービス利用の有無により説明されることが明らかとなった。そこから,収入面での学校外学習支援が有効である可能性が示唆される。ただし,その方法を用いた低収入世帯の子どもの不利の緩和には利点と同時に限界があることについても指摘する。