著者
原 嘉隆
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.342-350, 2010 (Released:2010-07-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ある温度での日数をArrhenius式に基づいて25℃などの標準温度の日数に換算する温度変換日数は,異なる温度条件での植物生育予測にも用いられる.温度変換日数の精確な算出には日変動を反映した温度データを用いる必要があるが,計算が煩雑なので日平均温度のみで算出されることが多い.そこで,温度変換日数を日平均温度のみで算出した場合の過誤評価程度を試算し,補正を検討した.まず,昼夜別一定温度条件において温度変換日数を算出する式を誘導し,昼夜別一定温度で昼夜の温度差を変えた場合の水稲の出芽日数の変化に適用したところ,温度差が大きいほど出芽が速いという結果を説明できた.次に,日平均温度のみで算出した温度変換日数の過誤評価程度を把握するため,屋外3年間の気温と地温を用いて日変動を反映させた場合と日平均温度のみで算出した場合を比較したところ,日平均温度のみで算出した場合の過誤評価率は地温で1%以下であったが気温で平均6%と大きく,日変動を反映させる必要性が示唆された.日較差と過小評価率には密接な関係があったので,その関係を用いて日平均温度から算出した温度変換日数を日較差で補正する式を導出した.この式を適用すると,気温でも過誤評価率が0.3%以下となったので,この補正式を用いれば日変動を反映した温度変換日数を日平均温度と日較差から簡単に推定できると考えられた.