著者
中道 浩司 足利 奈奈 来嶋 正朋 佐藤 三佳子 吉村 康弘
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.49-55, 2013

本研究は,北海道の春まきコムギ優良新品種「はるきらり」を上川農業試験場 (北海道上川郡比布町) にて3年間栽培・試験し,収穫物である子実の製粉特性ならびに小麦粉の製パン性といった品質特性について,基幹品種「春よ恋」と比較することで評価したものである.品質特性は,子実については子実タンパク質含有率,子実灰分含有率,製粉工程でのミドリング粉量に対するブレーキ粉量 (BM率) で,小麦粉については小麦粉タンパク質含有率,小麦粉灰分含有率,生地吸水率,グルテンインデックス,パン体積で評価した.小麦粉タンパク質含有率ならびに小麦粉灰分含有率は,それぞれ同じ子実タンパク質含有率,同じ子実灰分含有率であれば,「春よ恋」が「はるきらり」よりも高かった.BM率は,両品種とも子実タンパク質含有率と正の相関を示し,同じ子実タンパク質含有率であれば,「はるきらり」が「春よ恋」よりも高かった.さらに,小麦粉タンパク質含有率は,吸水率,パン体積,可溶性ポリマー含有率 (EPP),可溶性モノマー含有率 (EMP) および不溶性モノマー含有率 (UMP) と正の相関を示し,グルテンインデックスと負の相関を示した.一方で,「はるきらり」は,「春よ恋」よりも吸水率が低く,グルテンインデックスが低く,パン体積が大きく,EPP と EMP が高く,不溶性ポリマー含有率 (UPP) が低かった.
著者
千葉 雄大 松村 修 寺尾 富夫 高橋 能彦 渡邊 肇
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.455-464, 2009-10
被引用文献数
1

深水栽培による籾数制御と草姿の改善により、水稲の登熟期における高温による白未熟粒の発生抑制を試みた。2004年から2007年に、水稲3品種(初星、ササニシキ、コシヒカリ)を分げつ盛期から最高分げつ期にかけて水深18cmで深水処理し、生育、収量と白未熟粒割合を調査した。深水処理により、2次分げつおよび上位1次分げつといった弱小分げつが減少して、強勢な下位の1次分げつの穂を中心とした分げつ構成となり、有効茎歩合が高まった。その結果、深水処理により穂数は減少したが、一穂籾数と玄米千粒重が増加し、年次変動はみられたが、慣行栽培と同程度の収量が得られた。深水処理により白未熟粒発生が抑制され、特に、乳白粒の発生を顕著に抑制した。また、深水栽培は、オープントップチャンバーによる高温処理においても白未熟粒発生を抑制し、高温による品質低下防止に効果があった。この効果は、高温登熟耐性の弱い品種ほど顕著であった。しかし、深水処理は茎数を減少させるため、十分な茎数が確保できない場合には減収した。このため、高品質米の収量確保には、有効茎数を確保してから深水処理を開始することが必要であり、深水処理開始時の茎数が330本/m2程度確保できれば、慣行栽培と同程度の収量と、白未熟粒発生抑制の両立が期待できる。
著者
中嶋 泰則 濱田 千裕 池田 彰弘 釋 一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.366-375, 2006 (Released:2006-09-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

2月中旬のコムギ立毛中に水稲を不耕起播種する「水稲麦間不耕起直播栽培」の省力安定化技術の確立を目的に, コムギ播種前の秋季代かきと播種同時施肥について検討した. 不耕起V溝播種機を供試し, 開口部2 cm, 深さ5 cmのV溝に水稲播種と同時に施用する肥料を検討したところ, 水稲の生育や窒素の溶出パターンから, 基肥としては肥効調節型肥料のLPSS100(シグモイド型被覆尿素100日タイプ)が適合すると考えられた. また, LPS120(シグモイド型被覆尿素120日タイプ)が穂肥としての肥効を示すことも示唆された. これらの肥料は, コムギ生育中での窒素の溶出量が少なく, コムギの収量・品質に悪影響を与えなかった. コムギ播種前に秋季代かきを実施することで, 水稲播種時における圃場の均平と硬度が確保され, 播種作業によるコムギへの傷害が少ないうえ, 水稲の播種精度が向上し出芽・苗立ちが安定した. このような結果に基づき, 1999年にコムギ播種前の秋季代かきおよびLPSS100の水稲播種同時施肥を水稲麦間不耕起直播栽培体系に組み込み, 94 aの大区画圃場において検討したところ, 1 ha当たりの全刈り収量はコムギ4.94 t, 水稲5.32 tで合計10.26 t, 圃場内労働時間23.5時間が達成でき, 本栽培体系における省力安定性が示された.
著者
猪谷 富雄 小川 正巳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-147, 2004 (Released:2004-09-29)
参考文献数
110
被引用文献数
14 17

赤米とは, 糠層にタンニン系赤色色素を持つイネの種類であり, わが国においては日本型とインド型の2種の赤米が栽培されてきた. 日本型の赤米は古くから日本に渡来し, 7~8世紀には全国各地で栽培されたことが平城京跡などから出土する木簡から推測されている. 14~15世紀には中国からインド型の赤米もわが国へ渡来し, 「大唐米」などと呼ばれ, 近世に至るまでかなりの規模で栽培されていた. 早熟で不良環境や病害虫に強い大唐米は, 最盛期の江戸時代には関東から北陸地方以西において広く栽培され, 特に低湿地や新たに開発された新田などに適していた. 明治時代に入るとこれらの赤米は徐々に駆除され, わが国の水田から姿を消す道を辿った. 例外として, 日本型の赤米の一部が神聖視され, 神社の神田などで連綿と栽培されてきたもの, 雑草化して栽培品種に混生してきたものなどがある. 約20年前から, 赤米は小規模ながら栽培が復活し, 日本各地で歴史や環境を考える教育や地域起こしの素材として利用されている. また, 赤米は抗酸化活性を持つポリフェノールを含む機能性食品としても注目されている. わが国における赤米栽培の歴史と赤米を取り巻く最近の研究状況などについて, 以下の順に概要を述べる. (1)赤米を含む有色米の定義と分類, (2)赤米の赤色系色素, (3)赤米の栽培の歴史, (4)残存した赤米, (5)赤米など有色米が有する新機能, (6)赤米の育種などに関する最近の情勢.
著者
福田 直子 湯川 智行
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.505-509, 1998
被引用文献数
6

ソラマメの在来種を含む41品種を用いて積雪条件が異なる2ヵ年にわたり, 越冬前の生育特性と雪害程度を調査し, 品種の耐雪性との関連について検討した.雪害による枯死葉面積率と枯死株率をもとに供試品種は耐雪性強, 中, 弱の3品種群に分類できた.耐雪性強品種群は新潟市近郊の在来種とその突然変異品種の2品種, 耐雪性中品種群は原産地や育成地が西日本中心に分布する35品種, 耐雪性弱品種群は海外から導入された品種および鹿児島県の在来種の4品種であった.それぞれの品種群は原産地や育成地に共通性が認められ, 品種の耐雪性と育成環境との間に関連が示唆された.越冬前の生育特性と品種の耐雪性との間には密接な関係が認められた.耐雪性弱品種は花芽分化の時期が早く分化葉位が低いために越冬前に花芽の顕著な発育が認められたことから春播き型の品種であると考えられる.一方, 耐雪性強品種群は花芽分化の時期が遅く, 越冬前の花芽の発育ステージは初期段階であった.また耐雪性に関わる形態的特徴として, 耐雪性の強い品種は越冬前の草丈, 節間長, 茎葉生重が小さく, 茎葉乾物率が高い特性をもっていた.
著者
齊藤 邦行 速水 敏史 石部 友弘 松江 勇次 尾形 武文 黒田 俊郎
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.169-173, 2002-06-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
17

岡山大学農学部附属農場の水田において,水稲品種日本晴を供試して有機栽培を1990年に開始し,7~9年目の3ヵ年に米飯の食味と理化学的特性を比較した.試験区は基肥に完熟堆厩肥と発酵鶏糞を用い,農薬施用の有無により有機・無農薬区(油粕追肥),有機・減農薬区(除草剤,油粕追肥),有機・有農薬区(除草剤+殺虫殺菌剤,化学肥料追肥),さらに化学肥料のみ用いた慣行区(除草剤+殺虫殺菌剤)の4区を設定した.食味官能試験の結果,3ヵ年の平均でみると総合評価と粘りは慣行区に比べ,有機・無農薬区,有機・減農薬区との相違は小さかったが,有機・有農薬区の食味は劣った(粘りのみ有意).有機・無農薬区の総合評価は慣行区に比べ1996年には劣り,1997年には優り,1998年にはほぼ等しかったことから,有機質肥料の施用による食味の向上や,農薬施用の有無が食味に及ぼす影響は明確には認められなかった.1997年に,各試験区の一部について無施肥栽培を行ったところ,いずれの区でも総合評価は向上し,これには精米のアミロース含有率ではなくタンパク質含有率の低下とアミログラム特性の向上により粘りの増加したことが関係すると推察された.さらに1998年には,実肥施用を行わず基肥を増施することにより,有機・無農薬区,有機・有農薬区では精米のタンパク質含有率の低下とともに総合評価が向上した.以上の結果,有機質肥料を用いて良食味米の生産を行うには,穂肥・実肥における肥効発現に留意し,登熟期に窒素吸収を抑制することが重要であると結論された.
著者
柏木 孝幸 廣津 直樹 円 由香 大川 泰一郎 石丸 健
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-9, 2007 (Released:2007-02-28)
参考文献数
70
被引用文献数
11 11

イネにおいて倒伏は収量や品質を低下させ,生産者の作業効率を低下させる栽培上最も重要な障害である.倒伏は倒れ方から湾曲型,挫折型,転び型の3つに分類され,その中で湾曲型倒伏がコシヒカリ等の栽培で最も多く生じる.湾曲型倒伏は穂を含む植物体上位部の重さや風雨等の外部の力により稈が湾曲することにより発生する.「短稈化」,「強稈化」及び「下位部の支持力強化」が湾曲型倒伏に対する抵抗性のターゲットである.これまでの倒伏抵抗性の育種では主に短稈化がターゲットとされてきた.一方で短稈化のみで倒伏抵抗性を向上させていくにはいくつか問題がある.収量性の観点から考えると,草丈を下げる短稈化には限界が生じる.さらに抵抗性を向上させるには短稈化以外に強稈化及び下位部の支持力強化をターゲットとして育種を進めて行くことが必要である.本総説では,近年の分子・遺伝生理学的な研究の成果を中心に湾曲型倒伏に対する抵抗性に関する研究成果をまとめ,倒伏抵抗性向上に向けた研究の方向性を論じる.
著者
島崎 由美 渡邊 好昭 関 昌子 松山 宏美 平沢 正
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.294-301, 2016-07-05 (Released:2016-07-26)
参考文献数
24

水田で栽培されたコムギ (水田のコムギ) は,畑で栽培されたコムギ (畑のコムギ) に比べ製パン性が劣ることが知られている.その主な要因は,小麦粉のタンパク質含有率が畑のコムギに比べ水田のコムギで低いことにあると考えられている.小麦粉のタンパク質含有率は,開花期に窒素を追肥することで高められる.そこで本研究では,開花期窒素追肥により水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を高めることが,製パン性に及ぼす影響を調査した.その結果,開花期に窒素を8 g m-2追肥することで,水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を畑と同程度の13%にまで高めることができた.しかし,製パン性を評価するバロリメーターバリュー (VV) は,畑のコムギでは75以上あったのに対して水田のコムギでは60程度と低かった.水田のコムギは畑のコムギに比べて吸水率が高く,小麦粉タンパク質含有率が13%と高いときは,生地形成時間 (DT) が短かった.パンの柔らかさを示すコンプレッションは水田のコムギの方が畑より小さく,パンは柔らかかった.小麦粉タンパク質中のSDS可溶性モノマー画分 (EMP) に対するSDS不溶性ポリマー画分 (UPP) の比は,水田のコムギで畑より有意に小さかった.なお,水田のコムギは,開花期に窒素8 g m-2を追肥して子実タンパク質含有率を高めても,原粒灰分が高く,容積重が小さいために,ランク区分はBやCだった.一方,畑のコムギは開花期に窒素を追肥しなくてもランク区分はAであった.
著者
伊藤 亮一 玖村 敦彦
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.109-114, 1987

ポット栽培したダイズ(品種農林2号)を用いて, 葉の生長を葉の"伸長性"(葉片に錘りをかけたときの, 葉片の単位時間あたりの伸び量, Ex)と, 圧ポテンシャル(P)との両面から検討した. 得られた結果の大要は, 以下の通りである. 1) 給水を停止すると, 土壌水分含量は低下し, それに伴ない葉の生長速度は低下して, 土壌水分レベルが45%(対圃場容水量)に達したとき, 葉の生長は完全に停止した. その後, 土壌水分レベルを45%に保ったところ, 葉は再び生長を始めた. このことから, 葉の生長において乾燥への馴化がおこると考えられた. しかし, 生長再開後の葉の生長速度は十分に給水した対照区(土壌水分レベル80%)の葉と比べて, 小さかった. 2) 給水停止後, 葉の生長速度が低下したときには, PとExの両者が共に減少した. その後Pは, 対照区のレベルにまで回復し, このことが葉の生長の再開を可能にしたと考えられた. Pの回復は, 浸透ポテンシャルの低下, すなわち浸透調節によりもたらされた. いっぽう, Exは, 低い値にとどまり, 回復しなかった. 低水分状態が維持されたときに, Pが完全に回復するにもかかわらず, 生長の回復が不完全な程度にとどまるのは, Exが低い値にとどまることによると考えられた. 3) 植物体を低水分下に置いた後, 十分給水すると葉の生長は回復するが, 対照区にはおよばなかった. 乾燥処理後の再給水により, Pは十分回復したが, Exの回復は不十分であり, このことが, 生長回復の不十分さの基礎となっていると考えられた. またこのことから, Pはその時々の条件に応じすみやかに変化しうるが, Exは低水分条件により, かなり不可逆的な減少をきたすようであった. 4) 本実験の結果の全体をみると, 葉の生長速度は, P, Exの両者と正の相関を示したが, 後者との間の相関のほうがより密接であった.
著者
山根 正博 国分 牧衛
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.198-203, 2016

東北地方における1993年から2008年までの16年間のダイズ収量の年次変動と地域変動の特徴,ならびにこれらの変動と気象要因との関係を県単位および市町村単位で解析した.気象要因は降水量,日平均気温,日最高気温,日最低気温および日照時間とし,生育期間(6~10月)における月平均値を解析に用いた.解析の対象地域としてダイズ作付面積が100 haを超える市町村41点を選んだ.県平均収量の年次変動を解析した結果,収量水準は日本海側が太平洋側を上回り,日本海側では南部ほど,太平洋側では北部ほど高い傾向を示した.県平均収量は青森,岩手,秋田および山形の4つの県間にはすべて相関が認められたのに対し,宮城と福島は南北に位置する隣県とのみ相関が認められた.16年間における県平均収量とその年次間変動係数との間には正の相関が認められた.41市町村における16年間の収量変動と気象要因との関係を解析した結果,いずれの気象要因も7月の数値が収量と有意な相関を示す市町村が多く認められた.さらに市町村単位に収量と気象要因との関係を重回帰分析したところ,降水量,気温および日照時間の3つの説明変数で市町村の収量変動を説明できる場合が多く認められたが,これらの気象要因の相対的な寄与度と影響を与える時期は市町村により異なった.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 鈴木 賢士 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.424-430, 2000
被引用文献数
2

1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.
著者
浅野 紘臣 平野 文俊 磯部 勝孝 櫻井 英敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.320-323, 2000-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
6 9

前報において, アイガモ栽培では収穫時期を成熟期より10日間程度遅らせることにより, 青米の減少とともに収量が増加すること, また玄米中のタンパク質含有率が減少することにより, 米の食味が向上する可能性を指摘した.ここでは前報で用いた材料のタンパク質およびその組成(グルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミン)とアミロース含有率について調査した.玄米および白米の全タンパク質含有率は, 収穫時期が-10日, ±0日, +10日(早刈り, 成熟期刈り, 遅刈り)と遅くなるに従って品種(キヌヒカリ, コシヒカリ)や栽培法(慣行, アイガモ)を問わず減少する傾向があった.収穫時期の差によって玄米のタンパク質の組成含有率はグルテリンは66.0-67.7%, アルブミン+グロブリンは18.8-20.8%, プロラミンは12.5-14.5%と変動し, 品種や栽培法の別による若干の差は見られたが, 収穫時期によると考えられる差は見られなかった.白米においてもグルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミンの含有率は玄米と同様に収穫時期による一定の傾向は見られなかった.このことからアイガモ農法でも成熟期から10日程度遅刈りしてもタンパク質の組成には大きく影響しないと考えられた.アミロース含有率は品種や栽培法を問わず白米では, 早刈り, 成熟期刈り, 遅刈りの順に減少する傾向が見られた.以上のことから, 前報で報告したアイガモ農法によって生産された米の遅刈りによる食味の向上には, 青米, タンパク質含有率そしてアミロース含有率の減少による影響があったと考えられた.
著者
巽 二郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.604-609, 2007 (Released:2009-07-03)
参考文献数
39

根系の形態や土壌中の分布は,根圏を通じた養水分の獲得や植物体の支持などの植物生育の基本的な機能と密接に関わるものであり,環境条件やストレスに対応して変化する.根系のマクロな外部形態は構築構造(root system architecture)を有し,この構造は発育モデル(growth model)やトポロジーモデル(topological model),形状モデル(geometric model)などで定量的に記述・解析される.ここではそれらのなかで最も新しい方法の1つであるフラクタルモデル(fractal model)についてその解析法と応用および研究の動向を紹介する.
著者
平 宏和 松島 省三 松崎 昭夫
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.33-40, 1970-02-28 (Released:2008-02-14)
参考文献数
18
被引用文献数
4

In the previous paper, it was found that top dressing with nitrogenous fertilizer at full heading stage increases their percentage of ripened grains and results in an increase in yield. On the other hand, it is known that the protein content of rice is increased by the application of nitrogenous fertilizer after heading stage. Based on those results, the present experiments were carried out to prove the possibility of increasing the protein yield and the nutritional value of rice by nitrogen dressing. Basal dressing and top dressing at panicle formation stage did not always affect the total nitrogen content ( : protein content) but top dressing at full heading stage increased the total nitrogen content by 15∼30 per cent. In the case of increasing not only the total nitrogen but the grain yield by top dressing at full heading stage, the total nitrogen yield was greatly increased by the interaction. With respect to a given quantity of top dressing after full heading stage (2∼8 Ng/m2), it was shown that the more the fertilizer applied, the more the total nitrogen content was increased. When an identical amount of the dressing was applied in the period from full heading stage to 30 days after it, it was the more effective at the nearer stage to full heading. The total nitrogen was less in milled rice than in brown rice and the decreasing rate of total nitrogen by milling was lower in the brown rice of high total nitrogen content increased by top dressing at full heading stage. This finding indicates that the increased protein is stored in the endosperm. The total nitrogen content in both the brown and the milled rices showed negative correlations with lysine and methionine contents to 16g total nitrogen but positive correlations with lysine, threonine and methionine contents on dry matter. As the results, it is presumed that top dressing at full heading stage serves to increase the protein content and the nutritional value of rice, and also the protein yield in case of the percentage of ripened grains being increased.
著者
松江 勇次 佐藤 大和 内村 要介 尾形 武文
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.463-468, 2002-12-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
28
被引用文献数
6

要旨 : 早晩性を異にする水稲低アミロース極早生4,早生2および晩生1品種の計7品種を供して,登熟温度の違いが精米のアミロース含有率および玄米の白濁に及ぼす影響を検討した.低アミロース米品種においても登熟温度と精米アミロース含有率との間には,一般飯米用品種で認められているように,有意な負の相関関係が認められた.さらに,低アミロース米品種における登熟温度の違いによる精米アミロース含有率の変動はコシヒカリや日本晴に比べて著しく大きかった.登熟温度の違いによる精米アミロース含有率の品種間の変動幅をみると,柔小町が6.2~17.4%と最も大きく,逆にミルキークイーンは7.2~10.0%と最も小さかった.精米アミロース含有率の変動の大小の要因としては,登熟温度や千粒重の変動によるものではなく,変動の大きかったスノーパールを除く5品種は低アミロース性遺伝子で気温による精米アミロース含有率の変動が大きいdu遺伝子を有しているためと推察された.登熟温度と白度値(白濁程度の指標とした)との間には有意な正の相関関係が認められるとともに,登熟温度が玄米の白濁に及ぼす影響の程度は品種によって異なり,はなぶさとスノーパールのように登熟温度の違いに関係なく白濁する品種と,彩,ミルキークイーン,ソフト158,朝つゆ,柔小町のように登熟温度の違いによって白濁の有無および程度が異なる品種が判明した.また,精米アミロース含有率と玄米白度値との間には有意な負の相関関係が認められた.精米アミロース含有率と玄米白度値について登熟温度間と品種間の分散成分の値を比較すると,品種間の分散成分の方が登熟温度間の分散成分より大きかったことから,精米アミロース含有率と白濁は品種の影響を大きくうけることが示唆された.
著者
森田 敏 白土 宏之 高梨 純一 藤田 耕之輔
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.102-109, 2002-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
29
被引用文献数
22 24

従来,水稲の高温による登熟不良現象については多くの研究が行われたが,高夜温と高昼温のどちらが主因であるかについては一定の結論が得られていない.本研究では,人工気象室を用いて,34/22℃(昼温/夜温)の高昼温区に対して,これと日平均気温が同じである22/34℃の高夜温区を設定し,22℃一定温度あるいは28/20℃(日最高気温/日最低気温)を対照区として,玄米1粒重と良質粒歩合について比較解析した.その結果,玄米1粒重は高夜温区においてのみ対照区より有意に低下した.一方,玄米の良質粒歩合は高夜温区と高昼温区の両者で低下した.したがって,高温による玄米1粒重の低下の主因は高夜温にあること,および高夜温と高昼温のいずれもが外観品質を低下させることが明らかになった.高夜温区における玄米1粒重の低下は,いずれの着粒位置でも観察されたが,試験年によっては,弱勢穎果である3次籾での低下程度が大きかった.各試験区間の玄米1粒重の違いは,玄米の3つの粒径(粒長,粒幅,粒厚)を乗じた玄米体積の指標値の違いにほぼ一致した.高夜温区では対照区に比べて主に玄米の粒幅と粒厚が減少し,高昼温区では粒幅が減少したものの粒厚は明らかに増大した.これらのことから,高夜温区では玄米の粒幅の減少を粒厚で補えずに玄米1粒重が低下するのに対し,高昼温区では玄米の粒厚の増大が粒幅の減少を補償して玄米1粒重が低下しないとみることができた.
著者
大平 陽一 竹田 博之 佐々木 良治
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.58-65, 2009 (Released:2009-02-10)
参考文献数
26

タンパク質変異米水稲品種の米粒内における種子貯蔵タンパク質の分布特性を明らかにするために, 搗精歩合の異なる米粒のタンパク質含有量を調査し, 米粒内の層別のタンパク質含有量と存在割合を算出した. タンパク質変異米水稲品種では, 一般食用水稲品種「ニホンマサリ」と同様に, 米粒の外層部である100~>80%層に総タンパク質の44~45%が存在した. 一方, 易消化性タンパク質は, いずれの品種も100~>80%層に44~48%が存在したが, 「ニホンマサリ」では90~>80%層に最も多く, タンパク質変異米水稲品種では100~>90%層に最も多かった. タンパク質変異米水稲品種において易消化性タンパク質が最外層に多く集積する傾向は, 低グルテリン米水稲品種より低グルテリン・26 kDaグロブリン欠失米水稲品種で顕著だった. 「ニホンマサリ」では, 主要な易消化性タンパク質である37-39 kDaグルテリンαと22-23 kDaグルテリンβが90~>80%層に多く存在しているのに対し, タンパク質変異米水稲品種では, 37-39 kDaグルテリンαや22-23 kDaグルテリンβの量が低下し, 相対的に易消化性タンパク質に占める割合が高くなった57 kDa超過タンパク質と57 kDaタンパク質が100~>90%層に最も多く存在していた. したがって, 易消化性タンパク質の分布における品種間差異は, これらのタンパク質画分の分布特性の差異を反映したことによると推察された. 易消化性タンパク質は, 80~>70%層を含む層よりも内層部ではより少ない割合でしか存在しなかったので, 玄米から易消化性タンパク質を効率的に低減するには, 80%程度の搗精歩合が望ましいと考えられた.
著者
Ahmad Sayeed 小葉田 亨 高見 晋一
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.p327-332, 1986-09

作物の干ばつ抵抗性は, 乾燥耐性(植物体水ポテンシャルの低下にともなう生育阻害, 障害の発現程度)と, 乾燥回避性(環境の乾燥化にともなう水ポテンシャルの低下程度)とに依存するものと考えられる. 本研究は, これら2つの機構がイネ幼植物の干ばつ下における生存能力の品種間差にどのように関与しているかを明かにしようとした. 第1の実験では, 主として根圏の違いに起因する回避性の影響を除くため, 小容量(0.5 L)のポットに日本型稲4品種(水稲1, 陸稲3品種)を栽培し, 第6葉期に断水処理をおこなった. その結果, 全品種とも葉身の水ポテンシャルはほば同様に低下したにもかかわらず, 葉身の枯死程度は, 水稲が最も小さかった. 第2の実験では, 比較的大容量(4 L)のポットに, 日本型, インド型稲5品種(水稲2, 陸稲3品種)を栽培し, やはり第6葉期に断水処理をおこなった. その結果, 日本型, インド型稲とも, 陸稲の方が水稲より日中の葉身水ポテンシャルは高かったが, 生存程度には一定の傾向が見られなかった. 従って, イネ幼植物の干ばつ下における生存能力の品種間差は, (1)根圏が制限された条件下では耐性によって, (2)根圏が大きくなり得る条件下では主として回避性によってもたらされるものと結論される.