著者
中道 浩司 足利 奈奈 来嶋 正朋 佐藤 三佳子 吉村 康弘
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.49-55, 2013

本研究は,北海道の春まきコムギ優良新品種「はるきらり」を上川農業試験場 (北海道上川郡比布町) にて3年間栽培・試験し,収穫物である子実の製粉特性ならびに小麦粉の製パン性といった品質特性について,基幹品種「春よ恋」と比較することで評価したものである.品質特性は,子実については子実タンパク質含有率,子実灰分含有率,製粉工程でのミドリング粉量に対するブレーキ粉量 (BM率) で,小麦粉については小麦粉タンパク質含有率,小麦粉灰分含有率,生地吸水率,グルテンインデックス,パン体積で評価した.小麦粉タンパク質含有率ならびに小麦粉灰分含有率は,それぞれ同じ子実タンパク質含有率,同じ子実灰分含有率であれば,「春よ恋」が「はるきらり」よりも高かった.BM率は,両品種とも子実タンパク質含有率と正の相関を示し,同じ子実タンパク質含有率であれば,「はるきらり」が「春よ恋」よりも高かった.さらに,小麦粉タンパク質含有率は,吸水率,パン体積,可溶性ポリマー含有率 (EPP),可溶性モノマー含有率 (EMP) および不溶性モノマー含有率 (UMP) と正の相関を示し,グルテンインデックスと負の相関を示した.一方で,「はるきらり」は,「春よ恋」よりも吸水率が低く,グルテンインデックスが低く,パン体積が大きく,EPP と EMP が高く,不溶性ポリマー含有率 (UPP) が低かった.
著者
千葉 雄大 松村 修 寺尾 富夫 高橋 能彦 渡邊 肇
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.455-464, 2009-10
被引用文献数
1

深水栽培による籾数制御と草姿の改善により、水稲の登熟期における高温による白未熟粒の発生抑制を試みた。2004年から2007年に、水稲3品種(初星、ササニシキ、コシヒカリ)を分げつ盛期から最高分げつ期にかけて水深18cmで深水処理し、生育、収量と白未熟粒割合を調査した。深水処理により、2次分げつおよび上位1次分げつといった弱小分げつが減少して、強勢な下位の1次分げつの穂を中心とした分げつ構成となり、有効茎歩合が高まった。その結果、深水処理により穂数は減少したが、一穂籾数と玄米千粒重が増加し、年次変動はみられたが、慣行栽培と同程度の収量が得られた。深水処理により白未熟粒発生が抑制され、特に、乳白粒の発生を顕著に抑制した。また、深水栽培は、オープントップチャンバーによる高温処理においても白未熟粒発生を抑制し、高温による品質低下防止に効果があった。この効果は、高温登熟耐性の弱い品種ほど顕著であった。しかし、深水処理は茎数を減少させるため、十分な茎数が確保できない場合には減収した。このため、高品質米の収量確保には、有効茎数を確保してから深水処理を開始することが必要であり、深水処理開始時の茎数が330本/m2程度確保できれば、慣行栽培と同程度の収量と、白未熟粒発生抑制の両立が期待できる。
著者
中嶋 泰則 濱田 千裕 池田 彰弘 釋 一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.366-375, 2006 (Released:2006-09-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

2月中旬のコムギ立毛中に水稲を不耕起播種する「水稲麦間不耕起直播栽培」の省力安定化技術の確立を目的に, コムギ播種前の秋季代かきと播種同時施肥について検討した. 不耕起V溝播種機を供試し, 開口部2 cm, 深さ5 cmのV溝に水稲播種と同時に施用する肥料を検討したところ, 水稲の生育や窒素の溶出パターンから, 基肥としては肥効調節型肥料のLPSS100(シグモイド型被覆尿素100日タイプ)が適合すると考えられた. また, LPS120(シグモイド型被覆尿素120日タイプ)が穂肥としての肥効を示すことも示唆された. これらの肥料は, コムギ生育中での窒素の溶出量が少なく, コムギの収量・品質に悪影響を与えなかった. コムギ播種前に秋季代かきを実施することで, 水稲播種時における圃場の均平と硬度が確保され, 播種作業によるコムギへの傷害が少ないうえ, 水稲の播種精度が向上し出芽・苗立ちが安定した. このような結果に基づき, 1999年にコムギ播種前の秋季代かきおよびLPSS100の水稲播種同時施肥を水稲麦間不耕起直播栽培体系に組み込み, 94 aの大区画圃場において検討したところ, 1 ha当たりの全刈り収量はコムギ4.94 t, 水稲5.32 tで合計10.26 t, 圃場内労働時間23.5時間が達成でき, 本栽培体系における省力安定性が示された.
著者
猪谷 富雄 小川 正巳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-147, 2004 (Released:2004-09-29)
参考文献数
110
被引用文献数
14 18

赤米とは, 糠層にタンニン系赤色色素を持つイネの種類であり, わが国においては日本型とインド型の2種の赤米が栽培されてきた. 日本型の赤米は古くから日本に渡来し, 7~8世紀には全国各地で栽培されたことが平城京跡などから出土する木簡から推測されている. 14~15世紀には中国からインド型の赤米もわが国へ渡来し, 「大唐米」などと呼ばれ, 近世に至るまでかなりの規模で栽培されていた. 早熟で不良環境や病害虫に強い大唐米は, 最盛期の江戸時代には関東から北陸地方以西において広く栽培され, 特に低湿地や新たに開発された新田などに適していた. 明治時代に入るとこれらの赤米は徐々に駆除され, わが国の水田から姿を消す道を辿った. 例外として, 日本型の赤米の一部が神聖視され, 神社の神田などで連綿と栽培されてきたもの, 雑草化して栽培品種に混生してきたものなどがある. 約20年前から, 赤米は小規模ながら栽培が復活し, 日本各地で歴史や環境を考える教育や地域起こしの素材として利用されている. また, 赤米は抗酸化活性を持つポリフェノールを含む機能性食品としても注目されている. わが国における赤米栽培の歴史と赤米を取り巻く最近の研究状況などについて, 以下の順に概要を述べる. (1)赤米を含む有色米の定義と分類, (2)赤米の赤色系色素, (3)赤米の栽培の歴史, (4)残存した赤米, (5)赤米など有色米が有する新機能, (6)赤米の育種などに関する最近の情勢.
著者
福田 直子 湯川 智行
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.505-509, 1998
被引用文献数
7

ソラマメの在来種を含む41品種を用いて積雪条件が異なる2ヵ年にわたり, 越冬前の生育特性と雪害程度を調査し, 品種の耐雪性との関連について検討した.雪害による枯死葉面積率と枯死株率をもとに供試品種は耐雪性強, 中, 弱の3品種群に分類できた.耐雪性強品種群は新潟市近郊の在来種とその突然変異品種の2品種, 耐雪性中品種群は原産地や育成地が西日本中心に分布する35品種, 耐雪性弱品種群は海外から導入された品種および鹿児島県の在来種の4品種であった.それぞれの品種群は原産地や育成地に共通性が認められ, 品種の耐雪性と育成環境との間に関連が示唆された.越冬前の生育特性と品種の耐雪性との間には密接な関係が認められた.耐雪性弱品種は花芽分化の時期が早く分化葉位が低いために越冬前に花芽の顕著な発育が認められたことから春播き型の品種であると考えられる.一方, 耐雪性強品種群は花芽分化の時期が遅く, 越冬前の花芽の発育ステージは初期段階であった.また耐雪性に関わる形態的特徴として, 耐雪性の強い品種は越冬前の草丈, 節間長, 茎葉生重が小さく, 茎葉乾物率が高い特性をもっていた.
著者
齊藤 邦行 速水 敏史 石部 友弘 松江 勇次 尾形 武文 黒田 俊郎
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.169-173, 2002-06-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
17

岡山大学農学部附属農場の水田において,水稲品種日本晴を供試して有機栽培を1990年に開始し,7~9年目の3ヵ年に米飯の食味と理化学的特性を比較した.試験区は基肥に完熟堆厩肥と発酵鶏糞を用い,農薬施用の有無により有機・無農薬区(油粕追肥),有機・減農薬区(除草剤,油粕追肥),有機・有農薬区(除草剤+殺虫殺菌剤,化学肥料追肥),さらに化学肥料のみ用いた慣行区(除草剤+殺虫殺菌剤)の4区を設定した.食味官能試験の結果,3ヵ年の平均でみると総合評価と粘りは慣行区に比べ,有機・無農薬区,有機・減農薬区との相違は小さかったが,有機・有農薬区の食味は劣った(粘りのみ有意).有機・無農薬区の総合評価は慣行区に比べ1996年には劣り,1997年には優り,1998年にはほぼ等しかったことから,有機質肥料の施用による食味の向上や,農薬施用の有無が食味に及ぼす影響は明確には認められなかった.1997年に,各試験区の一部について無施肥栽培を行ったところ,いずれの区でも総合評価は向上し,これには精米のアミロース含有率ではなくタンパク質含有率の低下とアミログラム特性の向上により粘りの増加したことが関係すると推察された.さらに1998年には,実肥施用を行わず基肥を増施することにより,有機・無農薬区,有機・有農薬区では精米のタンパク質含有率の低下とともに総合評価が向上した.以上の結果,有機質肥料を用いて良食味米の生産を行うには,穂肥・実肥における肥効発現に留意し,登熟期に窒素吸収を抑制することが重要であると結論された.
著者
柏木 孝幸 廣津 直樹 円 由香 大川 泰一郎 石丸 健
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-9, 2007 (Released:2007-02-28)
参考文献数
70
被引用文献数
11 11

イネにおいて倒伏は収量や品質を低下させ,生産者の作業効率を低下させる栽培上最も重要な障害である.倒伏は倒れ方から湾曲型,挫折型,転び型の3つに分類され,その中で湾曲型倒伏がコシヒカリ等の栽培で最も多く生じる.湾曲型倒伏は穂を含む植物体上位部の重さや風雨等の外部の力により稈が湾曲することにより発生する.「短稈化」,「強稈化」及び「下位部の支持力強化」が湾曲型倒伏に対する抵抗性のターゲットである.これまでの倒伏抵抗性の育種では主に短稈化がターゲットとされてきた.一方で短稈化のみで倒伏抵抗性を向上させていくにはいくつか問題がある.収量性の観点から考えると,草丈を下げる短稈化には限界が生じる.さらに抵抗性を向上させるには短稈化以外に強稈化及び下位部の支持力強化をターゲットとして育種を進めて行くことが必要である.本総説では,近年の分子・遺伝生理学的な研究の成果を中心に湾曲型倒伏に対する抵抗性に関する研究成果をまとめ,倒伏抵抗性向上に向けた研究の方向性を論じる.
著者
島崎 由美 渡邊 好昭 関 昌子 松山 宏美 平沢 正
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.294-301, 2016-07-05 (Released:2016-07-26)
参考文献数
24

水田で栽培されたコムギ (水田のコムギ) は,畑で栽培されたコムギ (畑のコムギ) に比べ製パン性が劣ることが知られている.その主な要因は,小麦粉のタンパク質含有率が畑のコムギに比べ水田のコムギで低いことにあると考えられている.小麦粉のタンパク質含有率は,開花期に窒素を追肥することで高められる.そこで本研究では,開花期窒素追肥により水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を高めることが,製パン性に及ぼす影響を調査した.その結果,開花期に窒素を8 g m-2追肥することで,水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を畑と同程度の13%にまで高めることができた.しかし,製パン性を評価するバロリメーターバリュー (VV) は,畑のコムギでは75以上あったのに対して水田のコムギでは60程度と低かった.水田のコムギは畑のコムギに比べて吸水率が高く,小麦粉タンパク質含有率が13%と高いときは,生地形成時間 (DT) が短かった.パンの柔らかさを示すコンプレッションは水田のコムギの方が畑より小さく,パンは柔らかかった.小麦粉タンパク質中のSDS可溶性モノマー画分 (EMP) に対するSDS不溶性ポリマー画分 (UPP) の比は,水田のコムギで畑より有意に小さかった.なお,水田のコムギは,開花期に窒素8 g m-2を追肥して子実タンパク質含有率を高めても,原粒灰分が高く,容積重が小さいために,ランク区分はBやCだった.一方,畑のコムギは開花期に窒素を追肥しなくてもランク区分はAであった.
著者
伊藤 亮一 玖村 敦彦
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.109-114, 1987

ポット栽培したダイズ(品種農林2号)を用いて, 葉の生長を葉の"伸長性"(葉片に錘りをかけたときの, 葉片の単位時間あたりの伸び量, Ex)と, 圧ポテンシャル(P)との両面から検討した. 得られた結果の大要は, 以下の通りである. 1) 給水を停止すると, 土壌水分含量は低下し, それに伴ない葉の生長速度は低下して, 土壌水分レベルが45%(対圃場容水量)に達したとき, 葉の生長は完全に停止した. その後, 土壌水分レベルを45%に保ったところ, 葉は再び生長を始めた. このことから, 葉の生長において乾燥への馴化がおこると考えられた. しかし, 生長再開後の葉の生長速度は十分に給水した対照区(土壌水分レベル80%)の葉と比べて, 小さかった. 2) 給水停止後, 葉の生長速度が低下したときには, PとExの両者が共に減少した. その後Pは, 対照区のレベルにまで回復し, このことが葉の生長の再開を可能にしたと考えられた. Pの回復は, 浸透ポテンシャルの低下, すなわち浸透調節によりもたらされた. いっぽう, Exは, 低い値にとどまり, 回復しなかった. 低水分状態が維持されたときに, Pが完全に回復するにもかかわらず, 生長の回復が不完全な程度にとどまるのは, Exが低い値にとどまることによると考えられた. 3) 植物体を低水分下に置いた後, 十分給水すると葉の生長は回復するが, 対照区にはおよばなかった. 乾燥処理後の再給水により, Pは十分回復したが, Exの回復は不十分であり, このことが, 生長回復の不十分さの基礎となっていると考えられた. またこのことから, Pはその時々の条件に応じすみやかに変化しうるが, Exは低水分条件により, かなり不可逆的な減少をきたすようであった. 4) 本実験の結果の全体をみると, 葉の生長速度は, P, Exの両者と正の相関を示したが, 後者との間の相関のほうがより密接であった.
著者
山根 正博 国分 牧衛
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.198-203, 2016

東北地方における1993年から2008年までの16年間のダイズ収量の年次変動と地域変動の特徴,ならびにこれらの変動と気象要因との関係を県単位および市町村単位で解析した.気象要因は降水量,日平均気温,日最高気温,日最低気温および日照時間とし,生育期間(6~10月)における月平均値を解析に用いた.解析の対象地域としてダイズ作付面積が100 haを超える市町村41点を選んだ.県平均収量の年次変動を解析した結果,収量水準は日本海側が太平洋側を上回り,日本海側では南部ほど,太平洋側では北部ほど高い傾向を示した.県平均収量は青森,岩手,秋田および山形の4つの県間にはすべて相関が認められたのに対し,宮城と福島は南北に位置する隣県とのみ相関が認められた.16年間における県平均収量とその年次間変動係数との間には正の相関が認められた.41市町村における16年間の収量変動と気象要因との関係を解析した結果,いずれの気象要因も7月の数値が収量と有意な相関を示す市町村が多く認められた.さらに市町村単位に収量と気象要因との関係を重回帰分析したところ,降水量,気温および日照時間の3つの説明変数で市町村の収量変動を説明できる場合が多く認められたが,これらの気象要因の相対的な寄与度と影響を与える時期は市町村により異なった.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 鈴木 賢士 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.424-430, 2000
被引用文献数
2

1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.
著者
浅野 紘臣 平野 文俊 磯部 勝孝 櫻井 英敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.320-323, 2000-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
6 9

前報において, アイガモ栽培では収穫時期を成熟期より10日間程度遅らせることにより, 青米の減少とともに収量が増加すること, また玄米中のタンパク質含有率が減少することにより, 米の食味が向上する可能性を指摘した.ここでは前報で用いた材料のタンパク質およびその組成(グルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミン)とアミロース含有率について調査した.玄米および白米の全タンパク質含有率は, 収穫時期が-10日, ±0日, +10日(早刈り, 成熟期刈り, 遅刈り)と遅くなるに従って品種(キヌヒカリ, コシヒカリ)や栽培法(慣行, アイガモ)を問わず減少する傾向があった.収穫時期の差によって玄米のタンパク質の組成含有率はグルテリンは66.0-67.7%, アルブミン+グロブリンは18.8-20.8%, プロラミンは12.5-14.5%と変動し, 品種や栽培法の別による若干の差は見られたが, 収穫時期によると考えられる差は見られなかった.白米においてもグルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミンの含有率は玄米と同様に収穫時期による一定の傾向は見られなかった.このことからアイガモ農法でも成熟期から10日程度遅刈りしてもタンパク質の組成には大きく影響しないと考えられた.アミロース含有率は品種や栽培法を問わず白米では, 早刈り, 成熟期刈り, 遅刈りの順に減少する傾向が見られた.以上のことから, 前報で報告したアイガモ農法によって生産された米の遅刈りによる食味の向上には, 青米, タンパク質含有率そしてアミロース含有率の減少による影響があったと考えられた.
著者
巽 二郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.604-609, 2007 (Released:2009-07-03)
参考文献数
39

根系の形態や土壌中の分布は,根圏を通じた養水分の獲得や植物体の支持などの植物生育の基本的な機能と密接に関わるものであり,環境条件やストレスに対応して変化する.根系のマクロな外部形態は構築構造(root system architecture)を有し,この構造は発育モデル(growth model)やトポロジーモデル(topological model),形状モデル(geometric model)などで定量的に記述・解析される.ここではそれらのなかで最も新しい方法の1つであるフラクタルモデル(fractal model)についてその解析法と応用および研究の動向を紹介する.
著者
荒瀬 輝夫 鈴木 綾子 丸山 純孝
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.84-90, 2002-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
7

地下結実性の食用マメ類であるヤブマメの圃場栽培を試み,生育や収量を検討した.実験1の栽培法は株間30cm,畝幅45cmで3種類の支柱を設けた畝立て栽培とし,野外で発芽した地下種子由来個体を移植した.つるの回旋の始まる出芽約30日後を境に,支柱の有無によって主茎葉数の増加率に有意な差が生じた.ヤブマメの収量は地下子実で約20gm-2,地上子実も含めた総子実収量は約40gm-2であった.総葉数と総子実収量との間には高い正の相関があったが,120枚m-2を越えると地下部よりも地上部の子実の生産が増大する傾向が認められた.実験2では地上種子由来個体(A区)と地下種子由来個体(S区)の生長を比較した.2系統を用い,栽植密度は均平な圃場にm2あたり1個体(1×1m)とした.その結果,栄養生長期間を通じて主茎葉数の増加率がA区=S区,総葉数の比成長率がS区>A区であった.地下子実収量を増大させる方策として,播種期,栽植密度,およびつるの仕立て方の改善による総葉数の増大と,栽培環境の改善や育種技術によって子実生産を地下部に集中させることが挙げられる.
著者
細谷 啓太 杉山 修一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.266-273, 2016-07-05 (Released:2016-07-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1

無施肥栽培は収量の著しい低下を招くと考えられているが,長期間無施肥でも慣行栽培に匹敵する収量を安定的に生産している農家が存在する.本研究では,無施肥条件におけるイネの生育と収量成立過程を明らかにすることを目的とし,青森,岩手,宮城,新潟の計16の無施肥農家水田の収量と収量形成要因を解析した.2011年から2013年までの過去3年間の全国の無施肥農家水田の平均収量は約300 kg/10aだったが,一部の水田においては420~480 kg/10aの収量が毎年安定的に生産されていた.収量解析の結果,収量はm2当たり籾数に強く依存し,特に穂数との間には高い正の相関関係 (r=0.92***) が認められた.また,穂数と最も高い相関を示したのは移植日から出穂43日前までの日平均気温 (r=0.66**) であった.無施肥水田土壌を用いて異なる移植日でイネのポット栽培試験を行った結果,分げつ増加速度は日平均気温 (r=0.92***) と高い正の相関を示した.重回帰分析に基づくパス解析の結果,日平均気温が分げつ増加速度に与える影響は,気温の生育促進効果と,気温による土壌無機態窒素の供給増加効果がほぼ等しく貢献していることが分かった.これらのことから,北日本の無施肥栽培では栄養成長期の気温が高くなることを通じた穂数確保が高い収量を達成するために重要であることが示された.
著者
山城 美代 鬼頭 誠 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.161-167, 2019

<p>近年,沖縄島北部と宮古島でソバ栽培が始まっている.両地域にはそれぞれ酸性の国頭マージ(赤色土)と概ね中性の島尻マージ(暗赤色土)が分布している.これら土壌は日本のソバ栽培地の多くに分布する黒ボク土とは土壌有機物量やリンの存在形態など,土壌の理化学性に大きな違いがある.本試験では,国頭マージと島尻マージおよび黒ボク土を用いてソバを栽培し,生育量,収量および各種養分吸収量を比較した.ソバの生育量と収量は黒ボク土に比べて島尻マージより国頭マージで低下し,側枝花房数の減少と結実率の低下が主因と考えられた.窒素含有率は茎と子実において国頭マージで低かった.リン含有率は子実では国頭マージが黒ボク土よりわずかに低かったが,茎では有意に高かった.カリウム含有率は全ての器官で黒ボク土が著しく高く,国頭マージ,島尻マージの順に有意に低下していた.施肥を行っていないカルシウム含有率は子実では土壌間に顕著な違いがなかったが,茎では土壌の交換性カルシウム含有率を反映して国頭マージは黒ボク土と同程度であり,島尻マージでは高かった.マグネシウム含有率は全ての器官とも黒ボク土で最も低く,島尻マージ,国頭マージの順に高くなった.子実重,茎重,側枝花房数は土壌の窒素含有率とAl型リン含有率と高い正の相関が認められたが,Fe型リンや可給態リンとは有意な相関がなく,施肥リンがFe型で固定される沖縄の土壌とは異なり, Al型で固定される黒ボク土ではリン吸収が高まることで生育量と収量が増加したと考えられる.</p>
著者
稲田 勝美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.301-308, 1965-06
被引用文献数
2

For the purpose of estimating the deepness of green color and chlorophyll content per leaf area in intact leaves of crop plants, a type of chlorophyllo-meter was constructed, basing on the principle of a difference attenuance which corresponds the difference between the attenuance at 670 mμ attributable to chlorophyll contained in leaves and that at 750 mμ showing the basic absorption. From the photoelectric characters of chlorophyllo-meter, it was suggested that the reading (-log T) of the meter might be directly proportional to the quantity of chlorophyll present within the light path, provided that the leaf tissue is homogeneous and the chlorophyll content is less than a certain limit. The experimental results may clear the following points: (1) High correlations exist between the order of reading and that of deepness of green color judged by naked eye in rice leaves, particularly in case where the reading difference was greater than 10 per cent (Table 1). (2) Relation between the reading and chlorophyll content per leaf area was studied in several crop plants including rice, wheat, Italian rye grass and sweet potato. As the result, very high positive correlations were obtained within respective plant kind when the leaf parts determined were relatively homogeneous exclusive of the midrib or veins (Figs. 5 and 8B), while some lowering in the correlation was noticed when the midrib was placed in the center of light path in graminaceous plants (Figs. 2, 3, 4, 6, 7 and 8A). (3) Regression coefficient of chlorophyll content per leaf area to the reading differs widely according to the kind of plants. There was not, however, much difference in coefficient among the plants which are included in the same family (Fig. 9). It was concluded that the chlorophyllo-meter may be used for determining the deepness of green color and estimating the chlorophyll content per area in intact plant leaves.
著者
鬼頭 誠
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.108-116, 2019

<p>沖縄でのソバ前作物としての可能性を明らかにするために,施肥リンがAl型リンで固定される赤玉土とFe型リンで固定される赤色土(国頭マージ)を用いてラッカセイとダイズ,セスバニアの低リン耐性を比較した.また,3種マメ科植物に対する菌根菌の接種効果についても合わせて調査を行った.赤玉土へのリン施肥量の低下により3種マメ科植物の生育量は低下した.しかし,ラッカセイはダイズより低下度合が小さく,セスバニアよりリン無施肥区とリン酸吸収係数の0.1%相当量の少量施肥区で生育が高まっていた.なお,ラッカセイの根粒着生量はダイズと同程度であり,いずれのリン施肥区でもセスバニアより低下した.播種3週間後の生育初期時のダイズとセスバニアの根長はリン欠乏区で著しく低下したが,ラッカセイでは低下せず,種子中のリンを多く含むラッカセイではリン欠乏条件でも初期生育時の根系発達が確保できることが明らかになった.赤色土に菌根菌無接種で栽培したラッカセイはいずれの過リン酸石灰施肥区,リン酸アルミニウムやリン酸鉄施肥区とも地上部生育量,リン吸収量ともダイズと同程度であり,セスバニアより低下した.菌根菌の接種によりラッカセイは生育量とリン吸収量が高まり,セスバニアと同程度以上の上昇が認められ,特に難溶性リンの吸収量と地上部生育量はセスバニアより高まった.これらの結果から,ラッカセイは種子中のリン含有量が高く,初期生育時の根系発達により,低リン肥沃度土壌でリンを吸収する能力が高いが,その後の十分な生育を確保するためには菌根菌の感染が必要であると思われる.</p>