著者
杉坂 政典 藤村 貞夫 中村 政俊 原 正佳 李 桂張 LEE Ju-jang
出版者
大分大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究を実施するには、まず移動ビ-クルのハードウェアがすでに開発されていることが必要不可欠である。幸いにして、株式会社九電工との共同研究により500万円の研究費の提供を受け、移動ビ-クルのハードウェアの設計・試作を行った。その移動ビ-クルは、車体長150cm、車体幅60cm、車輪外側間長80cm、前輪中心から後輪中心間長110cmであり、車輪外径は26.1cmである。その移動ビ-クルは前輪がステッピングモータで駆動され、後輪がDCモータで駆動されるようになっている。また、前輪前方車体に底面から高さ40cmの高さにCCDビデオカメラが搭載されており、そのカメラの可動範囲は左右120度、上下60度であり、ステッピングモータ2個で駆動されている。車体には後輪駆動DCモータ、12V電池2個、DC/ACコンバータ、PC9821、DCモータドライバー、ステッピングモータドライバ3個が置かれている。前輪の可動角度は左右30度であり、後輪の駆動モータが一回転すると2.7cm移動する。CCDビデオカメラはカメラコントローラと共に画像取込ボードSuperCVIを経由してパソコンに接続されている。同様に、CCDビデオカメラの上下左右ステッピングモータと前輪、後輪駆動モータはそれぞれのモータドライバと共にI/OボードPIO-32/32(98K)を経由してパソコンに接続されている。パソコンへの電力は、バッテリ-から供給される直流をDC/ACインバータSI-500Aを介して交流に変換して供給されている。以上がハードウェアの概要である。本移動ビ-クルを屋内外で走行させるためには、種々の走行ソフトウェアの開発が必要である。CCDビデオカメラが一つのカラー画像を取り込む時間は1/60秒であり、車体前方の画像が取り込まれる。この画像データを処理することにより種々の自立走行が可能になる。屋内外での自立走行に必要なデータを得るためには以下のような技術を開発しなければならない。(1)走行フロアあるいは道路上の白線や黄線あるいはガードフェンスなどを抽出するソフトウェア(2)人工神経回路技術により、移動ビ-クル前面の対象物体を認識することができるソフトウェア(3)前輪のステアリング角度と後輪のスピードの両方を同時に制御するソフトウェア(4)移動ビ-クルが停止中、対象物体を追尾することができるソフトウェア(5)その他、種々の機能を持たせるためのソフトウェア本研究では黄線を抽出し、その黄線に沿って角度とスピードの両方をファジイ制御器を用いて制御し、ある一定時刻毎に車体前方に赤色の対象物を探し、もしその対象物があれば停止し、なければ黄線がなくなるところまで走行するプログラムを開発した。そのプログラムでは0.9秒のサンプリング間隔で制御を行っている。走行速度は0.5m/秒から1.8m/秒の間の速度で走行する。ファジイ制御器の入力としてカメラ中心から対象物体の重心のx方向、y方向の距離をとり、出力として前輪のステアリング角度及び後輪のスピードを考えた。全部で28個のファジイ制御則を考えた。CCDカメラは前方約1.2mの画像を取り込む。移動ビ-クルは20秒間走行してから赤色の対象物体を探し、もしあれば停止し、なければ走行する。本プログラムを用いて屋内及び屋外で走行停止実験を行った。その実験では良好な結果が得られた。現在この走行を滑らかに行うことができるようプログラムを修正している。一方、対象物体の認識に関しては、対象物体の形状のモーメント不変量を7個計算し、それを人工神経回路の入力として対象物体の種類を出力して人工神経回路で学習し、その人工神経回路を用いて対象物体が何であるかを判別するプログラムを開発している。このプログラムは加工食料品の等級判別に開発されたものであり、ハードウェアが移動ビ-クルのハードウェアと異なるため、このプログラムを無修正で用いることができない。したがって、移動ビ-クルのCCDカメラに適用できるように、すでに開発した対象物体識別プログラムを書き直す作業を、今後行う予定である。