著者
原口 佳誠
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、アメリカにおける州裁判官公選制の成立過程と現代における制度改革の分析を行った。1850年代に各州議会が裁判官公選制を導入する憲法修正を行った主たる目的は、民主主義の徹底のみならず、司法府の強化と独立にあった。しかし、利益集団の介入によって過度に党派政治化した現代の裁判官選挙では、司法府の中立性と公正な裁判の実現が懸念されており、それに呼応して合衆国最高裁判所は重要判例を提示し、法律家団体は司法制度改革運動を展開し、各州は現実に諸改革を行いつつある。本研究は、アメリカで蓄積された法制史学の精査と現地の実地調査をふまえた実証分析を行い、裁判所における民主的統制の確保と公正な裁判の実現という両要素を調和させる制度構築の試みを評価する。さらに、アメリカ市民の州裁判所に対する信頼の基盤には、裁判官の民主的アカウンタビリティと任命過程の透明性の確保のみならず、司法府の独立と中立という、同様に選挙される政治家とは異なる裁判官固有の役割への一般的な期待があることを確認する。本研究は、日本の最高裁判所の裁判任命制度を再検討し、司法府の独立性・中立性と司法府に対する市民の信頼の関係という基本的命題を考察する際に、比較法研究としての示唆を有すると考えられる。
著者
原口 佳誠
出版者
早稲田大学
雑誌
比較法学 (ISSN:04408055)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.29-71, 2012-03-01