著者
原口 公子 北村 江理 山下 俊郎 貴戸 東
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.323-331, 1994-11-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
28

北九州市における大気中の農薬の濃度を, 市街地および農業地域に近接した地域で, 農薬を大量に使用する時期 (1992年6月, 8月) とそれ以外の時期 (11月, 1993年2月) について, 石英ろ紙とXAD-2樹脂を装着したハイボリュームエアサンプラーを用いて試料を採取し, GC/MS-SIM法により測定した。調査対象とした36種類の農薬のうち35種類が検出され, それらの農薬の検出濃度範囲は0.01から70ng/m3であった。最も高い濃度を示したのはFlutoluanilの70ng/m3であったが, 35種類のうち30種類の農薬の平均濃度は1ng/m3以下であり極めて低濃度であった。農薬の濃度は, すべての測定地点で8月が他の月に比べ最も高く, 特に農業地域に近接した地点でその傾向は顕著であったが, 市街地でも同様の傾向がみられた。この現象は, 使用された農薬からみて農業地域からの影響が最も大きく, その他の地域で用いられた農薬がこれに加わり各地点に影響を与えていることが推察された。また, 6, 11, 2月では数種類の高沸点の農薬以外は, ほとんどの農薬がガス状物質としてXAD-2樹脂上に検出されたが, 8月では, 石英ろ紙上に粒子状として捕集されるFlutoluanilが大量に検出されたため, ガス状物質より粒子状物質の検出量が高い値を示した。
著者
清水 康生 原口 公子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.31-38, 2017 (Released:2017-01-10)
参考文献数
18

水環境健全性指標の活用方法として, 小学校教育の総合学習へ適用することが考えられる。しかし, 適用の有効性については指摘されているが, その効果を具体的に検証している事例はない。本稿では同指標を活用した授業の有効性について同じ児童を4年時と5年時の二カ年に亘り調査し検証を試み, さらに, 三カ年目に新5年生の児童にも検証のための調査を行った。内容としては, 同指標の調査を行うと同時にアンケート意識調査と感想文の記述を行ってもらい, 指標の回答内容の変化と意識内容の変化を比較し, 回答に関係する意識の広がりや深まりなどの変化が学習効果を表していると考えた。分析の結果, 水環境健全性指標による調査経験は, 児童の水環境に関する知識の取得だけでなく意識の変化とも関連し, 生物のような分かり易い事項からゴミや汚れという環境問題へと関心が広がっている学習効果を確認した。
著者
原口 公子 山下 俊郎 重森 伸康
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.407-415, 1985-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

環境大気中に存在するリン酸トリエステル類について試料の採取方法並びに分析方法を検討した。試料の採取は, ハイボリウムエアサンプラーを用い, ガラス繊維ロ紙の下にXAD-7樹脂を入れたステソレス製円筒を取り付けて, 吸引流速700l/分で24時間行った。採取した試料は, ソックスレー抽出器で抽出後, 酸・アルカリで処理し, シリカゲルカラムを用いて分画する。各溶離液は濃縮後N-P検出器付ガスクロマトグラフで溶融シリカキャピラリーカラムを用いて定量した。添加回収実験は, 8種類の標準物質のアセトン溶液をロ紙上に添加して, 上記の操作を行い回収率を求めた。その結果, リソ酸トリジクロロプロピルとリン酸トリフェニルは, ロ紙上に捕集され, 沸点がそれ以下のリン酸トリブチルやリン酸トリクロロエチルは主に樹脂上に捕集されることがわかった。この方法を環境試料に適用しGC/MS-MFで同定した結果, 大気中には, リソ酸トリエチル, リソ酸トリプチル, リソ酸トリクロロェチル, リン酸トリクロロプロピル, リン酸トリジクロロプロピル, リン酸トリフェニルの存在が確認されその濃度は2~5ng/m3程度であった。