著者
亀田 豊 山口 裕顕 玉田 将文 太田 誠一
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.211-218, 2014 (Released:2014-11-10)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

表流水中微量放射性セシウム放射能測定法(ADiCS法)を確立した。ADiCS法は前段のPTFE膜による懸濁態セシウムの分離,後段の選択性ディスクによる溶存態セシウムの吸着を連続的に行い,その後PTFE膜とディスクの放射能をNaIシンチレーションカウンターで測定する。作業効率性および分析精度を検討した結果,SS濃度が20 mg•L-1以下の表流水20 Lでは蒸発乾固法より約6倍以上迅速に濃縮でき,検出下限値は約10 mBq•L-1であった。また,ADiCS法測定値は蒸発乾固法測定値の30%の誤差範囲内で一致した。ADiCS法による関東地方の表流水測定の結果,高沈着量地域の表流水から100 mBq•L-1以上の放射性セシウムが検出され,事故後の有意な増加が確認できた。以上より,従来法に比較して本手法は容易に現在および将来の水中放射能や水生生物中蓄積特性を評価しうると考えられた。
著者
上野 智貴 山本 民次 福岡 浩一
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.67-73, 2022 (Released:2022-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1

瀬戸内海では, 長期的な窒素・リンの総量規制により, 近年では魚介類の漁獲量低下やノリの色落ちといった貧栄養化問題が指摘されている。対策の一つとして, 下水処理場等事業所からの排水の緩和が行われるようになってきたが, 陸域からの負荷は沖合まで届かない。そこで本研究では, 栄養塩を溶出させることで魚介類を増殖・成長させることを想定し, 実海域で使用できる施肥材を開発することを目的とする実験を行った。原料は完熟発酵鶏糞を主成分とし, これに鉄分と固化剤を加えてプレスした固形の施肥材を作成した。フラスコレベルで溶出試験を行い, 施肥材から溶出するN/P/Fe比が微細藻類の増殖にとって好適な比となるよう工夫した。現場用にサイズをスケールアップした施肥材を用いて溶出試験を行ったところ, 5か月以上の溶出持続性が確認された。以上より, 開発した施肥材が海域において持続的な栄養塩の供給機能を発揮できることを明らかにした。
著者
佐藤 学 上村 仁 小坂 浩司 浅見 真理 鎌田 素之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.153-162, 2016 (Released:2016-09-10)
参考文献数
38
被引用文献数
4 16

神奈川県の水道水源河川である相模川水系の河川水及びそれらを水源とする水道水について, 2014年4月より一年間, ネオニコチノイド系農薬6種, ブロマシル, テブコナゾール, テフリルトリオンおよびテフリルトリオン分解物の実態調査を行った。河川水からは調査期間中9物質が検出された。イミダクロプリド, テフリルトリオン等は農薬の適用時期に濃度が上昇する傾向がみられたが, 都市部の除草剤等としても使用されるテブコナゾール, ブロマシルは農薬の適用期間外においても検出された。実態調査の結果を環境中予測濃度 (PEC) と比較したところ, テブコナゾール及びブロマシルにおいて測定値が水産動植物PECを超える採水地点が確認された。水道水からはイミダクロプリド, クロチアニジンが河川水中濃度と比較的近い値で検出された。また, 水道水中からはテフリルトリオン分解物が検出され, その濃度推移は河川水中のテフリルトリオンの濃度推移とほぼ一致した。
著者
牛島 大志 田中 周平 鈴木 裕識 雪岡 聖 王 夢澤 鍋谷 佳希 藤井 滋穂 高田 秀重
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.107-113, 2018 (Released:2018-07-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1 8

近年, マイクロプラスチック汚染が世界中で注目を集め, 生態系への悪影響が懸念されている。マイクロプラスチックとは粒径5 mm以下のプラスチック粒子である。本研究では日本内湾5ヶ所および琵琶湖における魚7種を対象とし, その消化管中の粒径100 μm以上のマイクロプラスチックの存在実態の把握を目的とした。魚197匹中74匹から140個のマイクロプラスチックが検出され, すべての地点でその存在が確認された。魚1匹あたりから検出されたマイクロプラスチック数は平均1.89個であり, その大半がポリプロピレン (40.7%) とポリエチレン (35.0%) であった。平均粒径の中央値は543 μmであった。摂食方法別にろ過摂食魚類とろ過摂食以外の魚類に分類すると, 前者97匹中54.6%, 後者100匹中21.0%からマイクロプラスチックが検出された。摂食方法によるマイクロプラスチックの誤飲量への影響が示唆された。
著者
中島 淳 鬼倉 徳雄
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.81-88, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
62

九州北部に分布する淡水魚類53種を用いて,魚類の生息場所としての水環境の健全度を評価するための平均スコア法を考案した。また,考案した手法が実際に水環境の健全度を反映しているかどうかについて,九州北東部の河川105地点,北西部の河川105地点,水路103地点において取得した魚類分布データを用いて検証した。その結果,当スコア法により算出した各地点の得点の平均点は北東部河川,北西部河川,水路間で有意差はなく,河川勾配との相関もなかった。また,スコアと都市用地面積,外来魚種数の間には負の相関が認められた。これらの結果から,当スコア法による評価は九州北部の様々な環境で適用が可能であり,スコアの高低は魚類の生息場所としての水環境健全度の高低を反映していることが示唆された。
著者
北山 千鶴 森田 健二 福地 広識 李 星愛 古米 弘明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.59-68, 2021 (Released:2021-05-10)
参考文献数
31

合流式下水道雨天時越流水の影響により水浴判定基準を超える糞便性大腸菌群数が観測される都市の水辺において, 安全性を確保して海水浴を行うためには糞便汚染状況の予測が求められる。そこで大腸菌を指標として糞便汚染状況を予測し, お台場海浜公園において海水へ顔をつけることの可否判断を行うシステム構築と試行運用を実施した。降雨の時空間特性を考慮して東京都区部の過去10年間の降雨イベントを類型化した。類型化した降雨毎に3次元流動水質モデルでお台場海浜公園における大腸菌濃度を計算し, 濃度経時変化データベースを作成した。任意の降雨を類型化降雨にあてはめ, 対応する大腸菌濃度のデータベースを包絡する濃度変化曲線は, 降雨後のモデル計算結果の濃度上昇を再現することを確認した。このデータベースを包絡する濃度変化曲線を用いる方法で2018年の海水浴イベントにおいて予報システムの試行運用を実施し, その有効性を検証した。
著者
山本 俊夫 島津 智浩 遠藤 善宏 白石 廣行 影山 努
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.515-521, 2005-08-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

The concentrations of norovirus (NV) genes in water samples from rivers A, B and C flowing into oyster farms in Miyagi Prefecture, Japan were determined from October 2002 to March 2004. Norovirus genes in 35 specimens collected over 17 months were measured using genogroup 1 (G1) and genogroup 2 (G2) specific real-time quantitative reverse transcription PCR techniques. The respective positive rates of NV genes in rivers A, B and C were 51% (18 of 35), 97% (34 of 35) and 26% (9 of 35). The respective concentrations of the NV G1 gene ranged from 85 - 5.3 × 103 copies, 80 - 9.6 × 104 copies and 85 - 1.7 × 103 copies in 100 ml of water samples from rivers A, B and C. The respective concentrations of the NV G2 gene ranged from 93 - 2.0 × 103 copies, 65 - 1.5 × 105 copies and 72 - 1.2 × 103 copies in 100 ml of the same water sample. These values were high during winter, and low but detectable during summer.
著者
村上 道夫 滝沢 智
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.103-114, 2010 (Released:2010-08-10)
参考文献数
118
被引用文献数
9 7

Perfluorinated surfactants (PFSs) such as perfluorooctane sulfonate (PFOS) and perfluorooctanoate (PFOA) have been detected worldwide in surface water, groundwater, seawater, drinking water and aquatic organisms. In 2009, PFOS was added to the listing of the Stockholm Convention on persistent organic pollutants, and PFOS and PFOA were also added to the items for further study of drinking water quality standard in Japan. Concerns and interests about PFSs in water environments are rapidly increasing. In this review, we organized knowledge of sources, occurrences, removal efficiencies of treatments, toxicities, bioaccumulation, management and regulations of several PFS homologues including perfluorononanoate (PFNA) and their precursors, and provided perspectives on PFS problems. In this review, we also highlighted that relatively longer-chain perfluorinated carboxylates (PFCAs) such as PFNA and perfluorodecanoate (PFDA) are more toxic and bioaccumulative than relatively shorter-chain PFCAs such as PFOA, that PFNA extensively pollutes water environments in Japan compared with the case in other countries, and that the loadings of longer-chain PFCAs have not been reduced despite the reduction of PFOS and PFOA. The pollution by PFNA is particularly of concern in Japan. Thus, management and risk control of PFS homologues including longer-chain PFSs such as PFNA are now required.
著者
小村 智香 濱 武英 一ノ瀬 裕稀 久保田 富次郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.43-50, 2021 (Released:2021-03-10)
参考文献数
24
被引用文献数
2

火山地域を含む流域では, 噴火による噴出物により流域河川の水質に影響を与える可能性がある。霧島火山群の1つである硫黄山は, 2018年4月19日に約250年ぶりに噴火活動を再開し, 噴火口から流出した泥水によって近隣を流れる長江川は汚染された。特に, ヒ素は環境基準値 (10 μg L-1) を超過した。本研究では長江川のヒ素に着目し, 流下過程における濃度変化, pHおよび電気伝導度 (EC) との関係, 流出の特徴を連続的な観測により明らかにした。その結果, 以下のことが明らかになった。1) 流下過程において支川との合流による希釈が作用し, ヒ素濃度の低下, pHの上昇, ECの低下が認められた, 2) ヒ素濃度とpHおよびECは相関を示し, その傾向は特に上流部の無降雨時に高い, 3) ヒ素は無降雨時に鉄やアルミニウム酸化物に吸着され, 河床に沈殿することで河川水中から除去される一方で, 降雨時には河床に堆積した懸濁態ヒ素が巻き上がることで水質が悪化する可能性がある。
著者
石井 裕一 増田 龍彦 安藤 晴夫 山崎 孝史 清沢 弘志
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.51-57, 2021 (Released:2021-03-10)
参考文献数
12

国内の清澄な河川において, 外来付着珪藻Cymbella janischiiの侵入と分布拡大に伴う生態系サービスの低下が懸念されている。C. janischiiの侵入が確認されている多摩川水系において, その分布と季節消長を検討した。多摩川上流域では, C. janischiiは目視確認できるミズワタ状の群体を形成していた。中流域では顕微鏡下でのみ確認されたが, 下流域では出現はしておらず, 水域ごとに差異が認められた。多摩川の上流から中流域に合流する支川においてもC. janischiiが分布していたが, 現存量はごく僅かであった。多摩川上流域では4月から5月にかけてC. janischiiは群体を形成していた。その期間の水温は, C. janischii原産地における生育河川の水温とよく一致していた。
著者
今井 志保 川中 洋平 土屋 悦輝 尹 順子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.57-64, 2012 (Released:2012-03-10)
参考文献数
37
被引用文献数
3 4

東京都内の水道水について,有機フッ素化合物(PFCs)である11種のペルフルオロアルキルカルボン酸類および5種のペルフルオロアルキルスルホン酸類を測定した。40地点のPFCsの総濃度は0.72~95 ng・L-1の範囲で,平均値は19 ng・L-1であった。最多検出地点では12種のPFCsが検出され,PFCs組成比を用いたクラスター分析の結果,都内の水道水は多摩地域と区部の二種類にほぼ大別できた。区部の水道水のPFCs組成比および濃度は類似しているのに対して,多摩地域の水道水の組成比および濃度にはばらつきがみられた。これは区部の水道水が表流水を原水としているのに対して,多摩地域では各浄水所において表流水に地下水を混合して原水としていることによるものと考えられた。諸外国のPFCsの指針値等と測定値を比較した結果,都内の水道水中の個々のPFC濃度は指針値等を下回った。
著者
松原 英隆 浦野 紘平
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.281-287, 1998-05-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

Reduction methods in trihalomethane formation potential (THMFP) were investigated for a treated sewage, fulvic acid in a treated sewage, fulvic acid in a leaf mold and humic acid in a leaf mold by oxidation with ozone, potassium permanganate (KMnO4), adsorption with activated carbon and their combination.The molecular weight distributions of the three humic substances were determined using a Sephadex G-25 or G-75 before and after the ozonation. The eluted solution was divided into four or three groups and for each THMFP per unit organic carbon was determined. THMFPs of the fulvic acid and the humic acid in leaf mold were reduced effectively by ozonation alone. On the other hand, THMFPs of the treated sewage and the fulvic acid in treated sewage were not reduced significantly by the oxidation with ozone or KMnO4, though THMFP was reduced considerably by the adsorption with activated carbon.The molecular weight of the fulvic acid and the humic acid in leaf mold fairly decreased by ozonation, and their THMFPs were reduced significantly since the decomposed lower molecular weight fractions had very small THMFPs per unit organic carbon. The molecular weights of the smaller fulvic acid in treated sewage were reduced more by ozonation, but the THMFP showed no significant decrease.
著者
岩崎 雄一 小林 勇太 末森 智美 竹下 和貴 梁 政寛
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.231-237, 2022 (Released:2022-09-10)
参考文献数
23

全国の河川の水質測定地点 (環境基準点) 2925箇所を対象に, 集水域面積や標高, 集水域及び3 km周囲の土地利用割合に加えて, pH (最小値) , 生物化学的酸素要求量, 浮遊物質量, 全リン, 全窒素の5つの水質項目を整備した。さらに補足的に, これらの整備した物理化学的特徴に基づき, 階層的クラスター分析を用いて, 森林の土地利用割合が集水域で卓越し水質の良好なグループ1 (986地点) , 田畑または都市の土地利用割合が集水域で卓越し水質の悪化が懸念されるグループ3及び4 (それぞれ345及び310地点) , グループ1とグループ3及び4の中間的な特徴をもつと解釈できるグループ2 (1284地点) の4つの特性が類似するグループに分類した。本研究により, 任意の化学物質の濃度が高い地点がどのような特徴をもった地点であるか等を簡易的に評価できる, 水質測定地点 (環境基準点) の物理化学的特徴を整理したデータベースが構築できた。
著者
廣岡 佳弥子 市橋 修 本山 亜友里
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.163-168, 2014 (Released:2014-07-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

廃水中の有機物濃度および外部抵抗の大きさをさまざまに変えた条件で,微生物燃料電池にリン,マグネシウム,アンモニアを与えて,エアカソードにリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)の結晶を析出させる実験を行った。有機物濃度が高い系ほど電流生産量が大きく,カソードへの析出物量も多かった。また,外部抵抗が小さい系ほど電流生産量が大きく,カソードへの析出物量も多かった。また,析出実験開始時の電流生産が多かった系の方が,結晶析出後の電流密度が大きく減少した。これは,カソード上への結晶の析出により酸素還元反応に関わる物質の移動が阻害されたためだと考えられる。
著者
木口 倫 吉田 真 斎藤 康樹 岡野 邦宏 西川 裕之 髙橋 政之 宮田 直幸
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.257-270, 2022 (Released:2022-11-10)
参考文献数
76
被引用文献数
2

2020年6月と8月に秋田県八郎湖流域における浸透移行性殺虫剤および代謝物の濃度レベルと水平分布の調査を行った。その結果, ジノテフラン, イミダクロプリド, チアクロプリド, チアメトキサム, クロチアニジン, エチプロールとフィプロニルおよび代謝物のチアクロプリドアミドが検出された。最大検出率はジノテフランが100%, チアクロプリドアミドが80%であり, 水稲生産の影響が示唆された。最大検出濃度は, 8月の湖内でジノテフランが2,200 ng L-1, 6月の流入河川でチアクロプリドアミドが60 ng L-1であった。8月のジノテフランは調査水域の広い範囲で検出され, 他の農薬に比べて1-3桁高かった。ユスリカ幼虫の急性毒性値によるPNECと最大検出濃度を用いた初期リスク評価ではジノテフランのみが1より大きかった。しかしながら, 本研究では四季を通じた動態は不明であり, 詳細な調査が必要であると考えられた。
著者
井上 豊治 林 隆義 森 忠繁
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.789-796, 1993-11-10 (Released:2008-04-21)
参考文献数
28
被引用文献数
4 4

In vitro effects of surfactants in common use as detergents and related compounds were investigated on the erythrocyte membrane and respiratory activity of rat liver mitochondria.The hemolytic activity of main surfactants tested was in the following order with the EC50 values less than 10mg·l-1 ; Neopelex F-25 (LAS), Spark (α-SF), Flake marseille (soap), LipolanPB-800 (AOS), standard soap (JIS K 3303) and SDS. There was weak hemolytic activity from the effect of Emulgen 108 (POEAE) and Emal 20C (AES). On the other hand, the mitochondrial respiration inhibiting activity (IC50) was strong in Flake marseille (5.5mg·l-1) and standard soap (6.8mg·l-1) and follwed by Emulgen 108 (26.0mg·l-1), Emal 20C (32.5mg·l-1), SDS (38mg·l-1), Neopelex F-25 (41.0mg·l-1), Spark (46.0mg·l-1) and Lipolan PB (>50.0mg·l-1). The regression equation between the EC50 (Y) and IC50 (X) values was Y=-0.1198X+2.345, the coeficient of correlation r=-0.0855, indicating little correlation between them. Present data certified the hemolysis inducing and respiration inhibiting effects of surfactants on erythrocytes and mitochondria. These suggest that this system is applicable as a convenient technique to assess the toxicity of environmental contaminants.
著者
白井 康子 池田 滋 伊藤 英夫 横井 聰
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.661-664, 2009 (Released:2010-01-09)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

Japanese rose bitterling, Rhodeus ocellatus kurumeus, is an endangered freshwater fish in Japan. Both the expansion of the habitat of an alien subspecies, R. o. ocellatus, and the increased chances of hybridization between the two subspecies have threatened the genetic identity of R. o. kurumeus. To conserve R. o. kurumeus in Kagawa Prefecture, 17 populations were genetically monitored in 2006. Two individuals in a pond were found to harbor R. o. ocellatus type mitochondrial DNA through PCR-RFLP analysis. Then the contaminated population was transplanted to a closed Bio-top water system to prevent contamination in other ponds. Three-day pond drying was found to be insufficient to eradicate R. ocellatus.
著者
鬼倉 徳雄 川本 朋慶
出版者
Japan Society on Water Environment
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.99-106, 2013
被引用文献数
2

九州北部の主要な一級河川の水文水質および水辺の国勢調査データに,九州大学が保有する魚類相データを加えて,水質と純淡水魚類との関係を解析した。流水性魚類の種数はBODと負に相関した一方,止水性魚類の種数は相関を示さなかった。Receiver operating characteristic curve解析を行ったところ,幾つかの魚種の出現/非出現がBODに左右されていた。2001-2010年の期間は1991-2000年よりもBODが低く,魚類の出現種数が多かったことから,近年の水質改善が魚類の多様性回復に貢献したと評価される。
著者
岸本 直之 古田 世子 藤原 直樹 井上 栄壮 馬場 大哉 武井 直子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.69-75, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
29

マシジミ (Corbicula leana) と推定される琵琶湖産淡水シジミのろ水速度および呼吸速度の水温, 溶存酸素 (DO) 濃度依存性を実験や文献調査を通して明らかにし, その生育可能条件を評価した。殻長14.9 ± 1.2 mmの成貝を用いた実験の結果, ろ水速度は水温およびDO濃度に依存した。水温影響は高温阻害を有する指数型影響関数で表現でき, 至適水温は20.8 ℃であった。ろ水速度が低下し始める限界DO濃度は2.6~4.0 mg L-1の範囲にあった。琵琶湖南湖湖底直上における平均餌濃度を3 mg-C L-1と仮定した場合, DO濃度 ≥ 4 mg L-1の条件で成長可能な温度域は12.1~26.6 ℃と評価された。湖沼温暖化により水温が1 ℃上昇すると年間成長量は0.005~0.01 g-C y-1 個体-1低下すると推定され, 湖沼温暖化が琵琶湖におけるシジミの生育に負の影響を与えることが明らかとなった。
著者
伊藤 禎彦
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.187-196, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
55
被引用文献数
1 4

下水処理水の間接・直接飲用再利用に関する世界的動向をふまえた上で, 化学物質と微生物によるリスクの取り扱い方法を論じた。はじめにリスクの定義を記した上で, 飲用水摂取にともなう健康リスク定量上の特徴を要約した。有害化学物質の水道水質基準設定方法と, 今日的な予防原則の手順を示した後, 飲用再利用システムにおける適用例を示した。まず, 下水に含まれる化学物質から, 対象とすべき少数の物質を選定した結果を示した。ついで, 再生処理プロセスにおける必要十分な除去性能を見積もるとともに, 過剰処理も回避できることを指摘した。病原微生物リスクの特徴を述べた後, 障害調整生存年数 (DALYs) の意義を論じた。DALYsを用いた化学物質と微生物リスクの大きさの比較例を示すとともに, 必要な水処理レベルとの関係を論じた。さらに, 許容リスクレベルを議論するに当たっては, 人々のリスク認知上の特性も考慮する必要があると指摘した。