著者
大和田 幸嗣 原口 徳子
出版者
京都薬科大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1996

(1)p35誘導高発現系の確立:HA-tag付加p35をドキシサイクリン(Dox)で誘導過剰発現できるHeLaの安定なクローン細胞、2株を分離した。これらの細胞でHA-tag-p35の細胞内局在は内在性p35と同一だった。今後この系で、p35の細胞周期における役割を詳細に解析できることが期待される。(2)p35の細胞内局在:p35特異抗体(#23)を93-112番目のアミノ酸配列に対するペプチド抗体として作成した。正常ラット細胞とヒHeLaを#23、中心体特異蛋白質γ-tubulinに対する抗体、Hoechst33342(染色体を染色)で三重蛍光染色を行なった。p35は間期細胞では中心体と核に局在した。M期の前中期から後期ではp35は細胞質と中心体に局在したが、終期では中央体にも存在した。(3)p35はM期特異的にリン酸化され異常な分子量シフトを示すリン酸化蛋白質である:1)ノコタゾール(Noc)処理によりM期前期に停止した3Y1細胞抽出液を#23でWestern blotをおこなった。間期細胞での35Kのかわりに44Kと46K(44/46K)の新たなバンドが検出された。44/46Kバンドは中期の細胞まで検出されるが後期、終期の細胞では消失し、代わりに35Kが検出された。2)M期前期の3Y1細胞抽出液をphosphatase処理すると、44/46Kバンドは消失し約36Kバンドが出現した。Noc処理3Y1細胞を^<32>Piで標識し#23抗体で免疫沈降するとリン酸化44/46Kのみが検出された。リン酸化アミノ酸分析の結果、44/46Kはセリンとスレオニンがリン酸化されていた。GFP-tag-p35(65K)を高発現する細胞をもちい同様の実験を行った。但し免疫沈降は#23と抗GFP抗体を用いておこなった。M期でのみリン酸化75Kが両抗体で検出され、セリンとスレオニンとがリン酸化されていた。尚、#23で内在性リン酸化44/46K(リン酸化75Kの20%弱)も免疫沈降した。さらにリン酸化部位もリン酸化75Kと同一だった。間期では弱いながら65Kのリン酸化が認められ、その部位はセリンのみであった。以上から、M期でのp35はリン酸化され、高次構造が変化し、SDS-PAGEでの10Kに及ぶ分子量シフトをしめす。リン酸化による高次構造の変化にはスレオニンのリン酸化が重要であることが強く示唆された。 (投稿準備中)