著者
原崎 俊介 斎藤 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.46-55, 2002-01-01
参考文献数
17
被引用文献数
5

本論文では, 拡張現実感における実画像と仮想物体との幾何学的整合性を解決するために, 2台の未校正カメラから定義される射影グリッド空間と, 視点間のエピポーラ幾何を表すF行列を用いて, 未校正カメラにより撮影された任意視点画像に仮想物体像をオーバレイ表示する手法を提案する.本手法では, 仮想物体を定義するオブジェクト座標系と基底画像間で5点以上の対応点を与えることにより, オブジェクト空間と射影グリッド空間の座標変換を算出する.そして, 任意視点のカメラ画像と基底画像間で8点以上の対応点からF行列を算出し, 任意視点画像とオブジェクト空間を座標変換することによって, 仮想物体を任意視点画像にオーバレイ表示する.本手法は, 射影カメラを用いているので仮想物体の奥行や視点から仮想物体までの距離に関しての制限がない.また, 実装時には, 幾何学的位置合せのための特徴点の3次元位置や幾何学的特徴が不要であるため, 特殊なマーカ等の設置が不要となる.更に, 8点以上の対応点のトラッキングを行うことにより実現できるので, 仮想物体を実画像にオーバレイ表示する処理が軽く, 実時間処理に向いている.本手法に基づいて拡張現実感表示を行う実験システムを構築したところ, 良好な結果が得られ本手法の有効性が確認できた.