著者
堀田 一弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1624-1633, 2005-08-01
被引用文献数
4

本論文では, 局所カーネルの和に基づくSupport Vector Machine(SVM)を用いた部分的な隠れに頑健な顔検出法を提案する. 近年, SVMを用いた顔検出法の有効性が報告されているが, 従来手法では画像から抽出した大局的な特徴に対して一つのカーネルを適用していた. 大局的な特徴は部分的な隠れの影響を受けやすいので, 従来手法は隠れに頑健でないと考えられる. SVMに基づく顔検出法に部分的な隠れに対する頑健性を付与するためには, 局所特徴をうまく扱う必要がある. ここでは, 局所特徴をうまく扱うために局所カーネルを導入し, その統合法として和を用いた. 実験では, 人工的な隠れを含む顔画像や光源方向の変化により生じた影を含む顔画像を用いて従来の大局カーネルに基づくSVMとの比較を行い, 提案手法の隠れに対する頑健性を示した. また, サングラスやマフラー等の実際的な隠れを含む顔画像から顔を検出できることも確認した.
著者
安藤 彰男 今井 亨 小林 彰夫 本間 真一 後藤 淳 清山 信正 三島 剛 小早川 健 佐藤 庄衛 尾上 和穂 世木 寛之 今井 篤 松井 淳 中村 章 田中 英輝 都木 徹 宮坂 栄一 磯野 春雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.877-887, 2001-06-01
被引用文献数
57

テレビニュース番組に対する字幕放送を実現するためには, リアルタイムで字幕原稿を作成する必要がある.欧米では特殊なキーボード入力により, ニュースの字幕原稿が作成されているが, 日本語の場合には, 仮名漢字変換などに時間がかかるため, アナウンサーの声に追従して字幕原稿を入力することは難しい.そこで, 音声認識を利用した, 放送ニュース番組用の字幕制作システムを開発した.このシステムは, アナウンサーの音声をリアルタイムで認識し, 認識結果中の認識誤りを即座に人手で修正して, 字幕原稿を作成するシステムである.NHKでは, 本システムを利用して, 平成12年3月27日から, ニュース番組「ニュース7」の字幕放送を開始した.
著者
水野 勇 岩崎 洋平 金子 豊久 栗山 繁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1319-1328, 2004-06-01
参考文献数
19
被引用文献数
4

本研究は変形を伴う柔らかい3次元物体をモデル化し,様々な外力による変形操作を容易に行う手法を提案する.対象物として球・立方体などの仮想物体のほか,人間の顔頭部を取り上げる.柔らかい物体の表現法として,ばねネットワーク(ばねモデル)を用いる.CT画像をもとに,最密構造を初期配置としバブルメッシュ法を利用し頭部領域を四面体メッシュに分割し,均一なばね長をもつばねモデルを構築する.変形シミュレーションにおいては,ばね力と体積保持力を考慮した柔らかい物体の変形を表現する.手と顔表面などの柔らかい物体相互の接触による反力,または垂直抗力を算出し,それぞれの物理現象を表現する.球と立方体の接触による変形を確認した後,人間頭部モデルに対し,手モデルによる外力を加えるシミュレーションを行い,頭部モデルと手モデル両者ともに体積を保存しつつ変形を表現することができた.更に摩擦力を導入して,唇を押し上げる,引っ張るといった様々な変形操作の物理シミュレーションを行い,提案手法が有効であることを確認した.
著者
三須 俊彦 高橋 正樹 合志 清一 蓼沼 眞 藤田 欣裕 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1681-1692, 2005-08-01
参考文献数
13
被引用文献数
12

実時間画像処理に基づくサッカー中継映像用のオフサイドライン可視化システムを開発した. 本システムは, 固定カメラ画像中の人物を抽出し, そのワールド座標を求める. 更に色情報に基づいてユニフォームを分類することでフォーメーション解析を行ってオフサイドライン位置を特定する. 中継用カメラのパン・ズーム操作をロータリエンコーダによって計測することで, ワールド座標を実写ハイビジョン映像上に変換し, パン・ズーム操作に連動したオフサイドラインを仮想表示することができる. 本論文では, システムのブロック構成を追いつつ画像処理手順について定式化を行う. また, 実際のJリーグ公式戦において実施したフィールド実験の結果を示す.
著者
野中 亮助 佐藤 誠 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.1008-1019, 2004-04-01
参考文献数
17
被引用文献数
3

本論文では,Speed-Accuracy Trade-offの問題に関して,水平面内における2点間到達運動において,運動距離,運動精度を変化させ,そのときの運動軌道及び,筋の活性度を示す終電信号を計測した.また,比較実験として運動精度を要求しない課題を行った.その結果,Fitts's lawに準じた2点間到達運動において,運動の筋端点近傍で運動トルク生成のためには不必要な筋の活性が行われていることを示した.また,その筋の活性度は,要求された運動精度が高くなり,運動速度が遅くなっても,小さくはならないこと,更に,精度を要求されない同じ運動速度の運動に対して,精度を要求された精度の高い運動においては,その筋の活性度が大きくなることを示した.この結果は人がFitts's lawに準じた2点間到達運動を行っている際,腕の粘性や剛性といったインピーダンスを積極的に調節することによって,試行ごとに生ずる誤差を小さくするというメカニズムが存在していることを示す.
著者
真鍋 宏幸 平岩 明 杉村 利明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1909-1917, 2005-09-01
参考文献数
19
被引用文献数
12

本論文では, 声を出すことなく口パク動作を行うだけで発話内容を認識する無発声音声認識を提案し, その基礎実験の結果について報告する. 無発声音声認識により, 発声行為が周囲の人々に迷惑となるマナー的問題や, 雑音環境下において音声認識の認識率が低下する問題を解決することが可能となり, 携帯電話への応用が期待できる. 無発声音声認識の実現へ向け, 筋電信号を用いる方法について検討を行った. まず, 日本語5母音の無発声発話動作時の筋電信号を測定した. 指輪型電極を用いることで簡便な測定が可能である. 次に測定した筋電信号を, ニューラルネットワークを用いて認識し, 通常発声時における母音の持続時間よりも十分に短いフレーム長を用いた場合でも, 90%以上の精度で認識できることを明らかとし, 筋電信号には母音の特徴が見られることを示した.
著者
松井 淳 本間 真一 小早川 健 尾上 和穂 佐藤 庄衛 今井 亨 安藤 彰男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.427-435, 2004-02-01
参考文献数
11
被引用文献数
22

スポーツ中継番組の字幕放送を,音声認識によって拡充するため,放送音声を積極的に言い換えるリスピーク方式を提案する.ソルトレークシティオリンピック中継のスキージャンプ団体の放送音声と,本方式により言い換えを行った字幕用音声をそれぞれ音声認識した結果,単語正解精度が45.6%から96.8%に改善した.また,リスピークにおいて積極的に言い換える効果を調べるため,実際の字幕放送と同様の条件下で採取した発話内容について言い換えのパターンを五つに分類し,それぞれのパープレキシティ削減率を比較した結果,語の補完による言い換えが7.3%と最も効果が高かった.字幕放送の実質的な性能を左右する文正解率については,言い換えがおうむ返しによるリスピークに比べて,スピードスケートで8.8%,スキージャンプで6.6%向上した.NHKでは,本方式を利用することにより,口語的な発話スタイルを多く含んだソルトレークシティオリンピック中継(2002年3月),及び,第52目NHK紅白歌合戦(2001年12月)の字幕放送を実現させた.
著者
吉村 貴克 徳田 恵一 益子 貴史 小林 隆夫 北村 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.8, pp.1565-1571, 2004-08-01
被引用文献数
4

本論文は,HMMに基づいた音声合成システムに混合励振源モデルを導入することにより,合成音声の品質向上を図ることを目的とする.我々はこれまでに,メルケプストラム,基本周波数,継続長をHMMの枠組みでモデル化し,HMMからこれらの音声パラメータを出力することによって音声を合成するテキスト音声合成システムを提案した.このシステムでは,合成フィルタ(MLSAフィルタ)を励振する際の励振源モデルとして,有声区間,無声区間でそれぞれパルス列と白色雑音を切り換える単純なモデルを用いている.このような励振源を用いる場合,有声摩擦音のように周期成分と非周期成分をともにもつ音声を合成することができず,合成音声の品質を劣化させる原因となる.そこで本論文では,パルス列と白色雑音を混合する混合励振源モデルを用いることにより高品質な音声を実現している狭帯域音声符号化手法MELPの混合励振源モデルを導入する.この混合励振源モデルは,狭帯域音声符号化だけでなく,広帯域音声符号化へも応用されていることから,音声合成においても有効性が期待される.更に,多くの音声符号化手法で用いられているポストフィルタを導入し,合成音声の品質を向上を図る.また主観評価実験により,本システムにおける混合励振源モデルとポストフィルタの有効性を示す.
著者
松山 隆司 和田 俊和 波部 斉 棚橋 和也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2201-2211, 2001-10-01
被引用文献数
81

背景差分は, 画像中の移動対象を検出する有効な手法として広く利用されている.しかし, 背景差分を行うには, 背景部分での画像の変化が観測されないという前提条件が必要であるため, その適用範囲は限られている.本論文では, 照明変化による背景部分の画像の変化が起きた場合にも適用可能な背景差分による移動対象検出法を提案する.本手法は, 異なった考え方に基づく二つの対象検出法に基づいている.一方は, 照明に不変な特徴を用いて背景画像と観測画像の比較を行う手法である.他方は, 背景差分を行う前に観測画像の照明条件を推定し, 輝度の正規化を行う手法である.これら二つの手法は互いに相補的であり, 最終的に双方の検出結果を統合することで精度の高い検出結果を得ることができる.実験の結果, 実画像に対する本手法の有効性が示された.
著者
柏野 邦夫 スミス ガビン 村瀬 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1365-1373, 1999-09-25
参考文献数
12
被引用文献数
70

放送など長時間の音響信号中から,特定のテーマ曲やCMなど,目的音響信号の有無及び時刻を高速に探索する方法を提案する.従来の,スペクトルや波形のずらし照合に基づく探索では,長時間の音響信号を探索対象とした場合,計算量が膨大となるという問題があった.これに対し本論文で提案する方法では,スペクトル特徴のヒストグラムに基づいて探索を行うことにより,大幅に計算時間を短縮することができる.例えば,ワークステーションを用いた実験では,音響信号からあらかじめスペクトル特徴を抽出しておいた場合,6時間の音響信号から目的音響信号(15秒間)を所要約2.3秒で正しく探索できることがわかった.また,白色ガウス雑音の重畳に対しては,SN比20dBまで頑健であることがわかった.
著者
上田 修功 斉藤 和巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.872-883, 2004-03-01
被引用文献数
8

テキストは,一般に,多重トピックからなる.それゆえ,テキストからの自動トピック抽出は,伝統的なパターン認識で行われている排他的なクラス分類とは異なり,多重を許容するという意味でより困難な分類問題といえる.従来法では,多重トピックテキストの生成モデルが全く考慮されていないため,必然的な性能限界があると考えられる.本論文では多重トピックを有するテキストの新たな確率モデル,パラメトリック混合モデル(PMM1,PMM2)を提案し,次いで,PMMに基づいて,テキストから多重トピックを同時に抽出する手法を論じる.PMMは,単一トピックに対応する基底パラメータで可能なすべての多重トピッククラスを表現でき,PMM1ではパラメータ推定アルゴリズムの大域的最適性が保証され,更に,PMMのパラメータ推定及びトピック予測アルゴリズムは高速,という優れた特長を有する."Yahoo"ドメインの実際のwebページ分類実験により,提案手法の従来手法に対する顕著な優位性を示す.
著者
野口 将人 志村 哲 坪井 邦明 松島 俊明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.954-962, 2005-05-01
被引用文献数
1

音楽情報処理システムは, 対象を西洋音楽に限れば, 五線譜に基づく自動読取りやその他の入力方式・装置が数多く開発・製品化されており, 特にデスクトップミュージックと呼ばれるソフトウェアの普及により, 作曲・演奏, 楽譜の作成・印刷などが効率的に行えるようになった.しかし, 日本の伝統音楽をはじめ諸民族の音楽の多くは, 五線譜とは表現方法の異なる各楽器特有の記譜法が用いられており, それらに対応できるシステムが必要である.ところが, これまでこの研究・開発例は少ない.このような状況を改善するために, 尺八楽譜の情報処理システムに関する研究を行った.本システムは, 手書きによる入力編集機能, 伝統音楽に特有な様々な流派の異なる楽譜間の相互変換機能, 演奏方法の表示を伴った発音機能等, 尺八楽譜情報の処理に有用な様々な機能を備えたマルチメディアシステムとなっている.また, 本研究においては, 計算機処理を可能とするために, 尺八楽譜のデータ表現方式を新たに考案した.本システムにより尺八楽譜作成の効率が向上するばかりでなく, 西洋楽器との合奏用楽譜作成支援ツールや, 初心者の尺八の独習用ツールとしての有効性も期待できる.
著者
西村 竜一 西原 洋平 鶴身 玲典 李 晃伸 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.789-798, 2004-03-01
被引用文献数
65

実環境下での音声インタフェースの研究プラットホームとして,生駒市北コミュニティセンターの音声情報案内システム「たけまるくん」を開発した.本システムは,大語彙連続音声認識を基礎とする一問一答形式の音声インタフェースをもち,同センターや生駒市に関する受付案内を可能とする.システムはセンターのエントランスに常設され,開館時は誰でも自由にエージェントとのコミュニケーションを楽しむことができる.ユーザとシステムとのインタラクションの観察を目的とした5か月間にわたる本システムのフィールドテストを実施し,ユーザによる発話ログの収集を行った.本論文では,はじめに音声インタフェース部を中心に本システムの構成について説明する.フィールドテストの結果,男女幅広い年齢層のユーザによる発話を含む約1,362分の音声データを収集した.その分析の結果から,大人と子供で発話内容の傾向に違いはあるが,本システムは有効に利用されていることを示す.実験では,実際のユーザ発話によるベースラインの認識性能の評価を行い,大人に対して86%の単語認識率と76%の応答正解率を得ることができた.しかし,子供のユーザに対する精度が十分でないなど,音声インタフェースの実用化に向けて多くの課題が残されていることを確認した.
著者
清水 雅夫 奥富 正敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1409-1418, 2001-07-01
参考文献数
9
被引用文献数
35

ステレオ画像処理や各種画像計測, 流体計測の分野では, 領域ベースのマッチングが多く使用されている. 通常は, 画素分解能以上の精度を得るために, 一致度評価値を利用したパラボラフィッティングによってサブピクセル推定を行っている. しかし, その際の推定値の精度や性質に関する研究は少ない. 本論文では, マッチングに使用する画像を特定の関数で近似し, サブピクセル推定における誤差を解析した. この結果から, サブピクセル推定に固有の現象を説明した. 更に, サブピクセル推定における誤差を大きく低減する手法を提案する. この手法は, 一致度評価値の算出方法とは独立で, 実装が容易である. この手法の効果を確認するために, 3種類の画像を使用して実験を行った.
著者
堀 修 三田 雄志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1800-1808, 2001-08-01
被引用文献数
24

本論文では,映像中に現れるテロップの文字部をOCRで判読できるように,精度良く切り出す方法を提案する.従来の研究では,映像中のテロップを背景から切り出す方法としてテロップの輝度が背景に比べて高いことを利用し,しきい値を決めて2値化する方法がとられていた.しきい値の決め方として,背景と文字の二つの輝度の分布を仮定した大津の方法や大津の方法を局所ブロックに用いた塩の方法がある.しかし,映像のように背景に様々な輝度を含むものでは,必ずしも仮定が成り立たず,良いしきい値が得られないという問題があった.また,実際には,影付け,縁取り及び信号変換処理の影響で文字の周辺で必ずしも輝度が高くなく,OCRで判読可能な十分な精度で文字を切り出すことができなかった.そこで,文字部の輝度分布をロバストに推定し,文字部として信頼度の高い領域を最初に抽出し,推定された分布に基づいて領域拡張を行い,文字部のみを切り出す方法を提案する.実,験の結果,従来手法より精度良く文字部を検出できOCR判読率が向上することを示す.
著者
浜田 玲子 井手 一郎 坂井 修一 田中 英彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.79-89, 2002-01-01
参考文献数
19
被引用文献数
23

筆者らは, マルチメディアの中でもテキストの付随するマルチメディアに注目し, テキストからの情報を画像・音声解析に反映させることで, 実用的な精度のマルチメディア統合技術の実現を目指している.特に, 現在はテキスト教材の付随する料理番組に着目し, 料理映像とテキスト教材の対応付けシステムを開発している.本論文では, このような対応付けシステムの一部分であるテキスト解析部に焦点を当て, 調理手順の構造解析手法を提案した.本手法では, 解析対照の特徴を最大限に利用し, 実用的な処理を目指す.そのため, 対象に固有の辞書を構築し, これを利用した構造解析を行う.本論文では, 評価実験とその結果から, 本手法により高精度で調理手順の構造解析が可能であることを示した.なお, 本手法は付随する映像の存在しない調理手順文書などにも適用可能である.調理手順のような説明的文書は, 調理にとどまらずテキスト教材やインターネット上など様々なメディアから大量に入手可能であるが, それぞれが独自の書式で互いに独立に存在している.本手法は, 従来は難しかったこれらの膨大な情報の活用にも役立つものと考えられる.
著者
森本 淳 銅谷 賢治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.2118-2131, 1999-11-25
被引用文献数
42

人間のように多自由度の身体をもつロボットが,試行錯誤的に目的とする運動を獲得することは,ロボット学習の分野において大きな課題である.本論文では強化学習を用いて,ロボットが高次元状態空間中における運動学習を行うための手法,主に評価関数の近似方法についての考察を行う.制御タスクとしては,人間の身体の形を単純化した3リンク2関節ロボットの起き上がり運動を扱う.強化学習の一手法である,連続時間,連続状態のTemporal Difference学習則を,正規化ガウス関数を必要に応じて逐次配置する関数近似手法と組み合わせ,高次元連続状態空間中での起き上がり運動学習を行った.その結果,シミュレーション上で約2400回の試行後に起き上がり運動が獲得された.
著者
市川 徹子 松原 友子 原 武史 藤田 広志 遠藤 登喜子 岩瀬 拓士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.348-352, 2004-01-01
参考文献数
15
被引用文献数
13

乳腺の集中を伴う構築の乱れ領域の検出手法を提案する.本手法の乳腺集中を伴う症例に対しての真陽性率は84% (37/44), 1画像当りの偽陽性数は1.8個(81/44)であり,提案する手法の原理的な有効性が確認できた.
著者
中嶋 秀治 永田 昌明 浅野 久子 阿部 匡伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.480-488, 2005-03-01
被引用文献数
1

音声合成において合成音を作るためには, 未登録語であってもそのアクセント型(アクセントの位置の情報)が必要となる.本論文では, Support Vector Machine (SVM)を使って単語の読みから未登録語のアクセント型を推定する三つの方法を提案し, 性能を比較する.第1の方法では, 未登録語の読みを構成する各モーラのトーンの高低をSVMを使って推定し, 得られたトーン変化の中で高いトーンから低いトーンへ下降する場所を探して, アクセント型を判定する.第2の方法では, 単語の長さごとに用意されたSVMを使って, 同じアクセント型をもつ単語の集合に未登録語を分類することによってアクセント型を判定する.第3の方法は, 第2の方法の変形版で, 第2の方法とは異なる方法で単語の読みとアクセント型を表現する.また, 単語の長さによらない単一のSVMを使う.未登録の日本人の姓名を対象にしたアクセント型の推定実験を行ったところ, 第2と第3の手法において決定木の精度を上回り, 最高精度で姓では86.1%, 名では96.0%という結果が得られた.また, 実際のWebのニュース記事に現れた未登録語を対象にした実験でも決定木を上回り, 姓では91%, 名では86%という高い精度が得られ, 本手法の有効性が確認された.
著者
峯松 信明 藤澤 友紀子 中川 聖一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1865-1876, 1999-11-25
被引用文献数
17

日本人によって発声された英単語音声に対する(韻律的)自動評定を目的として,1)英単語音声からの強勢音節検出の自動化,2)提案する強勢音節検出手法に基づいた強勢/弱勢の「音響的適切さ」評定の自動化,について検討した.強勢音節検出においては,音節を単位としたHMMを構築し,その検出を試みた.その際,着目する音節の単語内位置情報/構造情報/コンテクスト情報を導入することでHMMの精度向上を図り,検出性能の改善について実験的に検討した.その結果,同一方言(本論文ではBritish)内では最もカテゴリー数を増やしたHMMにおいて最高平均検出率が得られ,本論文で検討したHMMの高精度化に対する有効性が示された.一方,強勢/弱勢に対する英語としての「音響的適切さ」評定では,強勢音節検出時における「スペクトル」「パワー」「ピッチ」「継続長」の各ゆう度に対する重み係数を変化させ,最高検出率を示す重み(最適重み)を算出し,日本人話者/母語話者間で比較した.その結果,日本人による英単語音声では,ピッチ重みを大きく,スペクトル重みを小さくすることにより検出率が向上するなど,母語話者による英単語音声には見られない傾向(発音上の癖)が観測され,提案手法の,発音能力評定手法としての有効性が示された.