著者
橋村 斉 原田 佳澄 舘 友基 木村 圭佑 櫻井 宏明
出版者
日本理学療法士協会
雑誌
第6回日本地域理学療法学会学術大会
巻号頁・発行日
2019-10-25

【はじめに】 地域包括ケア推進のために在宅医療・介護の推進が必要であり、各地で自助・互助の強化、社会参加の促進が取り組まれている。その中で、療法士が社会参加の促進を行うためには、療法士自身が近隣の地域活動を把握している必要がある。当院では、利用者が地域の中でその人らしく生きがいを持って取り組めるような地域活動を提案するために、松阪市内の地域活動について電子地図を用いて情報収集・記録しており、リハビリテーション科の職員が常時確認できるように管理している。今回は、その活動内容を報告する。【地域活動の情報収集・管理】 松阪市内の公民館・集会場などの場所と活動内容・開催日について、市のホームページや地域包括支援センターの生活支援コーディネーターより情報収集を行った。また、公共交通機関について、市内を運行するバス停の位置をホームページ上で調査した。収集した情報を一括で管理し、各々の位置関係を把握するため、電子地図(Google My Maps)上にまとめた。これにより、利用者の自宅周辺で開催されている地域活動が視覚的に判別できるようになった。さらに、市役所に各公民館の内部環境調査を依頼し、建物内各所の部屋の構造・段差の高さ・手すりの有無などを把握することができた。これらの情報により、移動距離や段差昇降の必要性など、地域活動へ参加するために達成すべき課題が明確になり、利用者と共有できるようになった。【地域活動の見学と環境調査】 当院利用者が多く居住する地区を中心に、一部の公民館に赴いて活動内容や現地環境を調査した。活動内容は大きく分けて趣味系・運動系の2種類があった。趣味系の活動は全体的に自由に休憩が取れ、自分のペースで活動ができる様子であったが、運動系は総じて実施時間が長く、求められる身体機能が高い印象であった。また、市内には80ヶ所以上の公民館があるが、バリアフリー構造の建物は1ヶ所のみであった。その他の公民館は築50年以上が経過しており、内部構造は和室が多く段差が多数で、トイレも和式が多くを占め、身体機能の低下した高齢者にとっては利用しにくい環境であった。 【展望・課題】 上記ツールを使用し、現在までに介護保険利用者6名に対して地域活動の紹介・参加に結び付けることができ、現在も電子地図の活用事例を増やし、入院患者への適応拡大を図っている。今後は、当院のホームページ上に電子地図を公開し、当院以外の医療従事者にも活用してもらうことで意見を収集し、電子地図に掲載する情報の見直しを行っていく。【倫理的配慮、説明と同意】本研究に関しては、事前に当院の倫理委員会にて承認を受けて実施している。
著者
原田 佳澄 木村 圭佑 岩田 研二 河村 樹里 古田 大貴 坂本 己津恵(MD) 松本 隆史(MD) 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.85, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 回復期リハ病棟で歩行を含む日常生活活動が改善し退院に至るも、退院後の不活動により再入院という例が存在する。しかし、回復期リハ病棟退院後の活動量を定量的に測定した研究報告は少なく、具体的な予防策がない。そこで、活動量の計測方法として使用される歩数計に注目した。本研究の目的は回復期リハ病棟退院前後における歩数の変化を明らかにし、入院時、退院後の運動指導に役立てるものである。今回は活動量計を用いて入院時から退院後3か月間の活動量の変化について経過を追った一症例を報告する。【方法】 症例は70歳代女性で当院回復期リハ病棟の入院患者である。左被殻出血を発症、右片麻痺を呈し、発症30日後当院回復期リハ病棟に転院し、発症115日後自宅退院となり、週2回の頻度で当院通所リハ短時間利用を開始した。評価より、当院入院時SIAS-m3-4-4-4-3、退院時SIAS-m5-4-5-5-4であった。移動手段は、入院時病棟内歩行器歩行自立、入院2週間後院内歩行器歩行、病棟内T字杖歩行自立、入院1か月後院内T字杖歩行自立、退院後屋内は独歩自立、屋外はT字杖歩行自立となった。また、退院後の目標歩数を退院直前の平均歩数5,000歩とした。計測は、パナソニック社製アクティマーカーを非麻痺側腰部に装着して行った。計測期間は、入院時、入院1か月後、入院2か月後(退院直前)、退院1か月後、退院2か月後、退院3か月後に各4日間、入院時は9時~17時、退院後は9時~就寝まで計測を行った。今回は各期間4日間の平均歩数のみとし、データ解析は、アクティマーカー解析ソフトを用いて行った。 本研究は当院倫理委員会の承認を得て行い、対象者には口頭にて十分な説明を実施し、書面にて同意を得た。【結果】 9時~17時までの平均歩数は、入院時2,609±521歩、入院1か月後5,168±317歩、入院2か月月後(退院直前)4,636±1,034歩、退院1か月後3,135±435歩、退院2か月後2,684±853歩、退院3か月後3,360±1,076歩であった。退院後の17時~就寝までの平均歩数は、退院1か月後595.5±8歩、退院2か月後1,475±16歩、退院3か月後2,392±27歩であった。【考察】 先行研究では、回復期リハ病棟入院中の平均歩数は、2,483歩(9時~17時)と報告している。今回、入院中の平均歩数は先行研究を上回っていた。また、退院1か月後の歩数が減少した理由は、冬季であったため屋外での活動が減少し、屋内中心の活動になったと推察された。そのため、気候や天候に合わせて対応可能な指導が必要になる。また入院時より定期的に歩数計測を行うことで、運動に対する動機付けができモチベーション維持につながったと推察された。退院後、17時以降に歩数の増加がみられた理由は、入院生活は非日常的な生活であり、退院後の活動時間と相違があったと推察された。そのため、退院後の1日の生活リズムに合わせて、運動指導を行っていくことが必要である。【まとめ】 活動量を意識させる上で、入院中より歩数計を使用し、目標歩数の設定、及び病棟と共通の活動量指標としての活用が重要である。今後は、対象者を増やし、退院後の活動量を維持するために必要な退院時の活動量、また退院後の介護保険サービスの種類、頻度を明らかにし、リハビリ介入の頻度調整に繋げていく。