著者
池田 聡 大渡 昭彦 吉田 輝 川平 和美 上川 百合恵 原田 雄大
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、霊長類であるマーモセットを用い、中枢神経障害の回復過程と回復促進の要因を明らかにしようとするものである。大脳および脊髄など中枢神経の可塑性については、これまで様々な研究が行われてきたが、機能回復を促す刺激や効率についての検討は経験的なものが多く、科学的な検討はほとんど行われていなかった。光感受性脳血栓モデルはラットを用いてWatson ら(Neurology 1985)により確立した方法で、ローズベンガルという色素(食紅の一種で無害と考えられている)を静脈内に投与し、緑色の光線を経頭蓋的に照射することにより血管内で血小板を活性化させ、血小板凝集による脳血栓を作製するもので、この方法の最大の利点は、開頭を必要としないという点であり、開頭操作による梗塞直後の影響を除外できる。また、照射領域のみに梗塞をおこすため動脈閉塞モデルなどと比較し、梗塞領域、程度に安定した結果が得られるものである。平成20 年度は霊長類脳梗塞片麻痺モデルの作成および麻痺の評価、動作解析を行った。吸入麻酔イソフルランを用い深麻酔下でマーモセットに光感受性色素ローズベンガルを静注し運動皮質に緑色の光線を照射し、血小板を励起することにより血管内微小血栓を生じさせ、照射部位に脳梗塞を作製、脳梗塞片麻痺モデルを作成した。梗塞作成後梗塞の対側片麻痺が認められた。上肢の脳梗塞片麻痺の粗大運動機能、巧緻運動機能、協調運動機能などを評価として長時間ビデオ撮影による記録を行い、動作解析ソフトにより動作解析を行った。梗塞作成後、患側上肢機能低下、粗大運動機能低下、協調運動機能低下を認め、次第に回復が認められ、8 週間後にほぼ梗塞前の機能に回復が認められた。