著者
吉田 治正 長畠 健史 小牧 順道 馬場 順久 大渡 昭彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.642, 2003

【はじめに】自動出力型微弱電流刺激装置(Electro Acuscope 80L、Biomedical Development社製)(以下、Acuscope)は、スポーツ界、整骨院などを中心に使用されている微弱電流刺激装置である。本治療器は患部の電気的な情報を読みとり、状態に合わせた刺激を行うことで患部を最も速い方法で改善させるという特徴を持っている。本研究の目的は、この刺激装置が急性の痛みに対してどの程度効果があるか明らかにすることにある。【対象】対象は原因疾患や部位を特定せずに、急性の疼痛(発症から3日以内)を主訴とする32名(男性9名、女性23名)とした。平均年齢は56.5±17.2歳であった(Mean±SD)。なお、薬物療法等を行った者は対象から除外した。【方法】比較の対象として同じ微弱電流刺激装置(MY-O-MATIC i-4、Monado社製)(以下、MENS)を使用し、対象をAcuscope施行群、MENS施行群、Acuscopeプラセボ群、MENSプラセボ群の4群に乱数表を使用して無作為に振り分けた。刺激方法としてはAcuscopeおよびMENS共に刺激強度600&mu;A、周波数0.5Hz、刺激時間12秒としプローブ法にて各疼痛部位に1回のみ施行した。二つのプラセボ群は刺激設定を同一にし、プローブを装置から外して通電できない状態で行った。データの収集は全て一人のセラピストが行い、被験者に対する説明も文章を作成し統一して行った。効果判定には疼痛の主観的強度を調べる目的でVisual Analogue Scale(以下、VAS)を使用し、痛みの種類を分類する目的でマクギル疼痛質問表簡易版を使用した。なお、今回のデータ収集をするにあたって、主治医の許可をとり、被検者には研究目的を十分に説明を行い了解が得られた者に対して行った。また、プラセボ群には実験終了後、通常の治療を行った。【結果】統計処理として一元配置分散分析を行った結果、VASに有意差が認められた(p<0.05)。また、多重比較(Fisher's PLSD)を行った結果、Acuscope施行群と他の3群の間にそれぞれ有意差が認められ(p<0.05)、その他の群間には有意差が認められなかった。また、マクギル疼痛質問表の点数は、Kruskal-Wallis検定を行った結果、群間に有意差は認められなかった。【考察】今回の研究では、痛みの主観的強度の変化に有意差が認められたことから、Acuscopeは急性疼痛に対して有効であると考えられた。しかし、機械を被験者に見られている等も考えられ、完全な二重盲検になっていない可能性がある。Acuscopeの入出力系がどのように行われているかは不明であるが、この機器が他の機器よりも優れていれば、各個人にとって適量の刺激が存在することになる。つまり、障害部位の電気的情報を収集することで、より効果のある電気刺激を選択することが可能になると考えられる。今後、「障害部位には本当に電気的変化が見られるか」という視点から研究を行いたい。
著者
池田 聡 大渡 昭彦 吉田 輝 川平 和美 上川 百合恵 原田 雄大
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、霊長類であるマーモセットを用い、中枢神経障害の回復過程と回復促進の要因を明らかにしようとするものである。大脳および脊髄など中枢神経の可塑性については、これまで様々な研究が行われてきたが、機能回復を促す刺激や効率についての検討は経験的なものが多く、科学的な検討はほとんど行われていなかった。光感受性脳血栓モデルはラットを用いてWatson ら(Neurology 1985)により確立した方法で、ローズベンガルという色素(食紅の一種で無害と考えられている)を静脈内に投与し、緑色の光線を経頭蓋的に照射することにより血管内で血小板を活性化させ、血小板凝集による脳血栓を作製するもので、この方法の最大の利点は、開頭を必要としないという点であり、開頭操作による梗塞直後の影響を除外できる。また、照射領域のみに梗塞をおこすため動脈閉塞モデルなどと比較し、梗塞領域、程度に安定した結果が得られるものである。平成20 年度は霊長類脳梗塞片麻痺モデルの作成および麻痺の評価、動作解析を行った。吸入麻酔イソフルランを用い深麻酔下でマーモセットに光感受性色素ローズベンガルを静注し運動皮質に緑色の光線を照射し、血小板を励起することにより血管内微小血栓を生じさせ、照射部位に脳梗塞を作製、脳梗塞片麻痺モデルを作成した。梗塞作成後梗塞の対側片麻痺が認められた。上肢の脳梗塞片麻痺の粗大運動機能、巧緻運動機能、協調運動機能などを評価として長時間ビデオ撮影による記録を行い、動作解析ソフトにより動作解析を行った。梗塞作成後、患側上肢機能低下、粗大運動機能低下、協調運動機能低下を認め、次第に回復が認められ、8 週間後にほぼ梗塞前の機能に回復が認められた。