著者
及川 正行
出版者
日本流体力学会
雑誌
ながれ : 日本流体力学会誌 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.195-205, 2012-04-25

本連載では非線形波動,とくにソリトンについて基本的な事柄を解説する.ソリトンは流体力学にも現れるが,物性,宇宙,生物など様々な分野でも現れる.いまやいろいろな分野で基礎的知識あるいは常識となっているから若い人がソリトンを学んでおくのは悪くないであろう.また,ソリトンは1965年に発見され,1970年代前半に急激に理論が発展したが,この新しい学問分野の発展の歴史は大変興味深い.それを垣間見るのも若い人たちにはよい教訓になるかもしれない.さらに,ソリトンは数学の様々な分野に関係しているから,あまり自分には関係ないと思っていた数学の分野に関心を持つ契機になるかもしれない.そのようなことを期待してこの連載をはじめたい.ソリトン理論(数学では可積分系と呼ばれたりする)は広大で多岐にわたるので,全体像を示すのは難しいし,私にできることでもない.そこで,この連載では基本的な事柄にかぎる.最近,我が国では離散系の研究が盛んであるが,離散系は戸田格子などに限定する.モデルはなるべく流体からとることにするが,そうでない場合もある.例えば,戸田格子は流体とは関係ないが重要なので取り上げる.この第1章は主としてソリトンの発見と初期の発展に関係している.第2章以降の予定としては次のようなことを考えている.第2章 双曲型方程式と特性曲線,線形分散波 第3章 KdV方程式 第4章 非線形シュレディンガー方程式 第5章 逆散乱法 第6章 広田の方法 第7章 佐藤理論 第8章 KP方程式の解について-空間2次元の例