著者
石川 栄一 及川 武夫 萩原 俊男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.673-676, 1959-05-02 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6

アルミニウム電解浴に使用する氷晶石は熱分解を受け難いものであると共に,不純分の少ないものが要求される。天然氷晶石は熱分解が少なく不純分の少ない点で好まれている。しかし合成方法も種々研究され良品がえられるようになった。合成氷晶石の不純分のうちケイ素分がとくに問題になるが,ケイ素分の少ない氷晶石を合成するための方法は種々の特許として提案されている。しかしその形態についての詳細な研究は見当らない。著者らはケイ素分の少ない氷晶石を合成するために,まず酸性フッ化アルミニウム法によって合成した氷晶石中に,ケイ素分がどんな化合物として存在するか,どういう混入経過をとるかを化学分析,X線回折によって追求した。その結果,酸性フッ化アルミニウム法によって合成した氷晶石中のケイ素化合物は,ケイフッ化ナトリウム,および非晶質ケイ酸であることを確かめた。また,酸性フッ化アルミニウム溶液に,必要量の60%以上アルカリを添加したときにケイ素分が急増すること,また,非晶質ケイ酸はケイフッ化ナトリウムがアルカリによって解離されて生成することを明らかにした。