著者
及川 英俊
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究課題では,「有機-金属ハイブリッドナノ結晶の極微構造を制御した多層化コア-ナノシェル構造体の作製法を確立するとともに,その光学特性を評価し,ナノ界面電子・光相互作用を明らかにする.」ことを主たる研究目的とした.最終年度は,多層化の要素プロセスとして,逆構造であるPDA(ポリジアセチレン)コア-金属シェルの作製法「光触媒還元法」のさらなる拡充とその線形光学特性評価,「共沈法」との併用による多層化ナノ構造体の作製を試みたので報告する.ここで,PDAナノ結晶(結晶サイズ:70nm,150nm)は再沈法により予め作製した.(1)光触媒還元は,可視光を吸収したPDAの励起電子がコア表面周囲に存在する金属イオンを還元・析出させるものと考えられた.このことは,PDAコアのサイズ・形状とは関係なく,還元が進行することから支持される.(2)硝酸銀の代わりに,塩化白金カリウムを用いると非常に精細な白金ナノ粒子をPDAコア表面に析出することができ,白金ナノシェル構造が構築できた.(3)析出する銀ナノ粒子と白金ナノ粒子のサイズ・析出密度の差は,金属イオンの酸化還元電位と対応する金属の仕事関数で定性的に説明された.(4)予め「光触媒還元法」により析出したPDAコア表面の銀ナノ粒子を触媒として,化学還元法を併用し,金ナノ粒子を析出させることに成功した.(5)「光触媒還元法」と「共沈法」を組み合わせることにより,銀コア-PDAシェル(1)-白金シェル(2)という多層化ナノ構造を始めて作製することが可能となった.