著者
上野 真理恵 三宅 公洋 島田 英昭 髙見澤 裕美 友川 幸
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.125-134, 2022-05-31 (Released:2022-06-10)
参考文献数
17

目的:幼稚園児の年齢(学年)ごとの手洗いの能力を明らかにし,効果的な手洗い指導の在り方について示唆を得ることを目的とした.方法:2020年12月に,N県内のA大学附属幼稚園において,園児を対象に分析的観察研究(横断研究デザイン)を実施した.調査項目は,手洗いの方法,手洗い時間,すすぎ時間,洗い残し部位とし,学年間の差異を検討した.結果:保護者の同意が得られた園児77名(88.5%)のデータを分析した.手洗いの方法は,年少児が年長児に比べて有意に得点が低かった.石鹸を使用した園児の割合は,年少児と年中児で60%未満であった.適切な手洗い時間を満たした園児の割合は,年少児で最も低く,年中児と年長児に比べて有意に手洗い時間が短かった.適切なすすぎ時間を満たした園児の割合は,すべての学年で30%未満であり,学年間の有意差はみられなかった.洗い忘れ・洗い残しがあった部位は,年少児では,手の平以外の部位,年中児と年長児では,指先,親指,手首(年中児は指の間)であった.結論:今後の手洗い指導では,年少児には,石鹸の使用や手全体を洗う等の適切な手洗いの方法,年中児と年長児には,石鹸の使用に加え,洗い忘れ・洗い残しがあった部位,すべての学年で,手のすすぎ方や拭き方に関して指導していく必要がある.さらに,年少児や年中児が使用しやすい箇所への石鹸の配置,手洗い場への踏み台の設置等,手洗いの環境の工夫が必要である.