著者
井上 光弘 山本 定博 猪迫 耕二 森 也寸志 取手 伸夫 東 直子
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

除塩のため,リーチングに伴う下方浸透量の正確な計測技術の開発が必要である。研究結果をまとめると,次のようになる。1.誘電率水分計と4極塩分センサーによる測定精度を検討し,水分と塩分の同時測定の新たな校正手法を提案し,灌漑農地の水収支・塩収支を明らかにした。また,塩の影響が少ないTDRセンサーを開発し,塩水点滴灌漑における不撹乱状態の水分・塩分濃度変化の測定から根群域内の塩分動態の特徴を明らかにした。2.圃場の不撹乱土壌カラム採集器を開発した。団粒構造を持つ黒ボクのコアサンプルを対象に,飽和流および不飽和流の溶質分散長を測定した結果,不撹乱土の飽和分散長は,撹乱土と比べて格段に大きいことを明らかにし,土の構造に基づく水分と溶質流れの特徴を明らかにした。3.砂丘ラッキョ畑でモノリスライシメータを用いて硝酸態窒素の溶脱試験を行い,圃場の不撹乱状態の土壌構造の違いによる硝酸溶脱の影響を明らかにした。4.根群域からの下方浸透量をリアルタイムに計測するために,ウィックライシメータと下方浸透水採取装置を開発した。砂地圃場に埋設して,下方への浸透水量と溶液の電気伝導度を測定した結果,浸透水の電気伝導度を自動記録できる下方浸透水採取装置は高い採水効率と有用性を確認した。5.砂丘圃場でウィックサンプラーの採水試験を行い,採水量,水収支,土壌水分環境に関する長期測定データを解析して,先行降雨,土壌水分プロファイルの初期状態,降雨強度が,ウィックサンプラーの採取に与える影響について検討し,過剰採水の原因と対策を明らかにした。6.多機能熱パルスセンサーで土壌水分量,電気伝導度,浸透速度を測定して,その適用範囲や限界を明らかにし,有用な土壌環境モニタリング技術を構築した。