著者
石井 晃 奥村 和 有澤 光弘
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

担持型触媒として鈴木宮浦カップリング反応などに利用できるゼオライト担持Pd触媒と硫化金基板担持Pd触媒をターゲットに、計算物理学と実験の両面から研究した。USYゼオライトに担持させたPd触媒は鈴木カップリング反応を起こし、Pd0-PdO/USYを熱処理すると,PdOが活性種になることがわかった.硫化金基板Pd触媒も電顕・XAFS実験と計算からその構造が明らかになった。また、計算からNi触媒も可能であることが示唆され、試行実験を裏付けた。
著者
三浦 典正
出版者
鳥取大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

癌細胞を形態上は正常形質に回帰させるヒトマイクロRNAを発見した。それは未分化型肝癌細胞の肝組織形成、奇形腫形成で発見し、そのメカニズム解析を本検討で行った。脱分化誘導の実態を、導入後3日目、5日目、7日目と経時的にそのDNAメチル化レベル及びRNAメチル化レベルを検討し、脱メチル化誘導が原因が重要な原因の1つと考えられた。メタボローム解析では、5日目にsilencingされ、その2日後にiPS細胞レベルの別の種類の細胞になることが分かった。520dの標的遺伝子の検討では、ELAVL2をはじめとする計3種類をルシフェラーゼアッセイで同定し得た。癌細胞は正常細胞になり得る初めての報告である。
著者
小泉 元宏
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近年急増するアートプロジェクト(AP)を事例に、その地域社会における社会的・文化的影響を、アーティストやAPに関わる市民の社会関係に関する調査から研究してきた。結果、APが、人々の暮らしに密接に関わった場合、市民が潜在的に持つ多様な技能や知識を引き出し、それが市民も交えた新たな文化・社会活動を生むきっかけとなりうることが示された。しかし創造性を持った人々に対する地域活性化に向けた過度な期待は、時にAPにおける市民の役割に目を向けることを阻む場合もあり、既存の創造階級論の見直しの必要性が示唆された。以上の成果は国際学会報告・国際誌への論文投稿等を通じて積極的に国内外に発表している。
著者
曽田 公輔
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ベトナムの家禽群における鳥インフルエンザウイルスの流行を制御するために、流行ウイルスの家禽に対する病原性を評価する必要がある。本年度は前年度までに検証したウイルス株に加え、複数のベトナムの家禽由来のH5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)およびH6,9亜型の鳥インフルエンザウイルスのアヒルに対する病原性を検討した。さらに研究実施者の所属機関である鳥取大学における2017-18シーズンの国内の鳥インフルエンザ確定診断において分離されたH5亜型ウイルスについても同様の解析を行った。近年東アジア地域ではclade2.3.4.4に属するH5N6亜型ウイルスが家禽に浸潤しているが、その走りであるDuck/Vietnam/LBM751/2014株を接種したアヒルは6-8日目に死亡した。直近に日本国内で分離されたMute swan/Shimane/3211A001/2017を接種したアヒルは半数が接種後2週間生残した。一方でclade2.3.4.4 HPAIVの祖先にあたるclade2.3.4 HPAIVであるDuck/Vietnam/G12/2008 (H5N1)を接種したアヒルは2-3日で全羽死亡した。前年度の成績も合わせると、H5亜型HPAIVのアヒルに対する病原性は現在にいたるまで次第に減弱してきていることが示された。ベトナムで分離されたH6およびH9亜型の鳥インフルエンザウイルスを接種したアヒルは、ウイルス排出が認められた一方、2週間生残した。最終年度は上記の単独のウイルス接種試験の結果を基に、H5亜型HPAIVおよび鳥インフルエンザウイルスがアヒルに共感染した場合、すなわちベトナムの家禽で実際に起こっているウイルス感染状況をモデル化し、今後の防疫に有用な情報を得る予定である。
著者
田原 誉敏
出版者
鳥取大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

前立腺の照射部位における直腸体積を減じることは放射線治療後の有害事象である直腸出血を減じることが出来るとされており、本研究は漢方薬により前立腺癌の放射線治療による直腸障害を減じる可能性に言及した初めての研究である。前立腺癌における強度変調放射線治療患者で同意を得た症例に対し、大建中湯投与群と、大建中湯非投与群に分けて放射線治療前のCT撮像を行っ た。最終的に30症例、1170回のCTデータを集積した。研究結果は、大建中湯投与群の直腸体積は、非投与群の直腸体積に比較し有意に小さく(P < 0.0001 )、大建中湯により前立腺癌の強度変調放射線治療による直腸障害を 減じる可能性が示唆された。
著者
井上 貴央 海藤 俊行 川久保 善智 徳永 勝士 篠田 謙一 椋田 崇生
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.古代人の脳の微細形態解析弥生時代人および江戸時代人の脳組織の一部を細切し、光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、脳組織のミエリン鞘が三次元的なネットワークをなしているのが確認できた。現代人の脳ではこのようなネットワークの観察ができていないが、古代人の脳では、ネットワーク以外の構造物が融解していた結果による。古代人の脳の残存例は、比較的分解されにくいミエリンを構成するリポ蛋白質の残存によることが明らかになった。2.山陰の古代人の形質人類学的研究これまでに収集された山陰地方の古代人骨についてデータベースを作製し、青谷上寺地遺跡など一部の人骨資料については接合・保存処理作業を行い、写真撮影、計測を行った。山陰地方の弥生時代人・古墳時代人、江戸時代人について顔面平坦度の計測を行い、東日本の古人骨と比較検討した。さらに、岡山県彦崎貝塚遺跡の縄文人骨の形態学的解析を行った。その結果、渡来系弥生人の範疇に入る山陰地方の弥生人の中には、縄文的な色彩を残している個体があることが判明し、北部九州の渡来系弥生人とは異なった形質をもつものがあることが明らかになった。また、青谷上寺地遺跡の弥生人は、北部九州の渡来系弥生人より韓国の礼安里古墳人に近いことが統計解析によって明らかになった。3.脳と骨組織のDNAの抽出古人骨のミトコンドリアDNA抽出を試みたところ、古墳時代の骨からは検出できなかったが、弥生時代の資料では、30点中9点からDNAを抽出することができ、Dループの塩基配列を決定することができた。そのハプロタイプはD4型が多かったが、Fも存在し、当初考えていたように単一な集団ではなく、ある程度多様な遺伝子配列を持つ集団であることが明らかになった。歯牙からのDNAの抽出も試み、さらに数体分からのDNAデータが得られたが、人骨の所見とは異なっていた。コンタミネーションの可能性を含め、慎重に分析を行う必要があるものと思われる。江戸時代の脳組織からは21点中8点からDNAの抽出に成功し、ハプロタイプを決定した。弥生時代の脳からはDNAの抽出はできなかった。また、核のDNA抽出はできなかった。
著者
佐分利 育代
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

表現の対象が放つ質的特性(ダイナミクス)を聴覚障害児と視覚障害児がどのようにとらえ、ダンスの中で運動のダイナミクスとして表現しているのかをラバンの運動解析を手がかりに探った。対象は鳥取聾学校の中学部と高等部の生徒、鳥取盲学校の中学部生である。まず、花火大会に出かけ、その体験を一人でダンスで即興表現したものを比較した。(1)聴覚障害児:見たままをクリアに表現している。ダイナミクスは力の要素に欠けるVision Driveの傾向にある。指先まで使っている。屈伸、ジャンプ、ジェスチャーの動作で、対称的な形、大きな身体支配空間、空間を移動して、平面的に踊っている。(2)視覚障害児:内的体験から直接出てくるような表現である。ダイナミクスは空間(方向性)の要素の欠けるPassion Driveの傾向にある。胴と四肢を使っているが、肘までの使用である。移動、ジャンプ、落ちる、傾ける、手を着くの動作があった。対称、非対称の形があり、大きくない身体支配空間内で、身体の向きのまま動く結果空間が現れる。次に鳥取砂丘での体験をもとにした合同作品「砂の世界」をビデオより観察し、次のことを得た。(1)イメージを表現しようとして練った動きには、ソロでの表現にもそれぞれに観察されなかったダイナミクスの要素(聴覚障害児に力、視覚障害児には空間)が現れる。(2)聴覚障害児と視覚障害児がダンス表現を共有できるのは、即興表現に共通に観察された時間と流れのダイナミクスの要素によると思われる。流れの要素には力と空間(方向性)の要素が内在するとされることから、一緒に練習する中でリズム、運動の発せられる方向等共感できると思われる。また、ダンスが障害の種類、障害の有無に関わらず一緒に活動できるのは、次のような、そのグループに独特の運動のダイナミクスの体験があるからと考えられる。(1)場面の持つダイナミクスを踊る人全員で創り出している。(2)場面と場面のテンションの引き継ぎが共有される(3)作品の完成時、上演時は作品全体としてのダイナミクスと、グループの一体感が体験される。(4)上演では、障害や個人によって異なる原体験に内在するダイナミクスが共有される。内的体験におけるダイナミクスが運動に反映されるメカニズムは課題として残されている。
著者
ツェレンプル バトユン
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

馬乳酒はモンゴルの伝統的で代表的な乳製品であり、モンゴル国内外で健康的な食品へ関心と馬乳酒の需要が増加しているため、高品質の馬乳酒を生産する伝統的知識の記録と、要因の解明が重要である。国全体で聞き取り調査をおこなった結果、馬乳酒生産は中央部および南部、西部で盛んであった。高品質の馬乳酒生産に重要だと多くの牧民に認識されている項目は、牧民の技術、酵母の選択、植物の種類であった。馬乳酒生産用のウマの行動圏は、搾乳時間帯(日中)より非搾乳時間帯(夜間)で大きかった。これは水場や塩類露出地域、食物の利用可能量の空間分布が影響したと考えられ、放牧地の選択とウマの管理手法の重要性が示唆された。
著者
寺川 直樹 原田 省 板持 広明 谷口 文紀 林 邦彦 小林 浩 百枝 幹雄
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

世界初の前方視的研究「本邦における子宮内膜症の癌化の頻度と予防に関する疫学研究」を企画した。全国の医療施設から約2, 000名の子宮内膜症患者の登録を得て、患者データを解析した。登録患者からの癌発生は7例報告されており、患者登録および解析を継続している。分子生物学的研究としては、卵巣チョコレート嚢胞と卵巣明細胞腺癌組織から上皮細胞群を捕捉したのちに、網羅的遺伝子発現の検討を行い発癌に関与する遺伝子群を検索した。線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)-2遺伝子の卵巣癌組織での発現増強に注目して機能解析を行った。
著者
上野 耕平
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,運動部活動への参加を通じて形成されたライフスキルに対する信念を基に,生徒が時間的展望を獲得できるプログラムを開発し実践することであった。その内本年度は,1)これまでの研究期間内に明らかにしてきた成果をまとめ,国内外に広く公表する,2)諸外国におけるスポーツ活動への参加とライフスキルの獲得に関する先行研究の検討する,ことが活動の中心となった。昨年度は,研究初年度に行った調査研究の結果構築された仮説モデルに基づき,実際に運動部活動場面に介入した実践研究を行った。そこで研究成果については,研究初年度からの成果を体系的にまとめた上で,ヨーロッパスポーツ心理学会及び日本スポーツ心理学会で発表を行った。また,日本スポーツ心理学会では,アスリートを対象としたライフスキル研究に関するシンポジウムに指定討論者として参加し,今後の研究の方向性について言及した。さらに,運動部活動を対象とした実践研究の成果については,研究紀要において紹介した。他方,北米を中心に実施されている,スポーツ活動への参加を通じたライフスキル獲得に関する研究成果についてもまとめた。その結果,1)理論的背景を有する介入実践を伴う実証的研究,2)スポーツ経験の実質的な内容を扱う研究,3)ライフスキルの獲得と関係する心理的側面を変数として扱う研究,が求められていることが明らかになった。本年度までの研究により,運動部活動への参加を通じた時間的展望の獲得は,1)実体験や部活動経験の振り返りを通じたライフスキルに対する信念の形成,2)ライフスキルに対する信念に基づいた運動部活動経験の肯定的解釈,を通じて行われることが明らかにされた。今後はライフスキルの獲得も含め,運動部活動の指導現場で実施可能な方法について,より具体的な事例の提供が求められよう。
著者
長田 佳子 林 一彦
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Epstein-Barr virus (EBV)はほとんどの成人に潜伏感染している。本研究で我々はEBVの潜伏先であるB細胞が、EBVの再活性化に伴い形質細胞へ分化して抗体産生を行う際に、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)が誘導されること、そしてもともとB細胞上にあるIgMからクラススイッチしたIgG, IgEさらにはIgG4も産生されることを示した。EBV再活性化ではバセドウ病の原因自己抗体であるTSHレセプター抗体(TRAb)も産生される。我々は骨髄・胚中心を通らずにTRAbが産生され、バセドウ病の発症・増悪に関与すること、さらに診断法として利用できること(特許取得)を示した。
著者
竹野 一 斎藤 俊之
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

(1)ワラビ地下茎よりの有毒成分の単離。前報において、家畜のワラビ中毒の原因物質としてワラビ地下茎メタノ-ル抽出物より二種類の活性配糖体を単離し、それらをBraxinA1、A2と命名した。本研究では、さらにワラビ地下茎抽出物の液滴向流クロマトグラフィ-、Toyopearl、HW-40Sのカラムクロマトグラフィ-、Wakosil 10C18 HPLCを順次行い、モルモットに対する催血尿性を指標として,前述のBraxinA1、A2の他に、より活性の強い二つの画分が得られ、これらをBraxinB、Cと命名した。原ワラビ地下茎粉末よりの各画分の収量は、BraxinA1、A2では共におおよそ0.15%であるが、BとCではそれぞれ0.008%,0.007%と僅少であった。しかし、催血尿性においては、A1とA2は共に300-700mg/Kg(ip,一回投与)であるのに、BとCではそれぞれ36mg/Kg、28mg/Kgの少量で毒性を発現した。これらの成績より、ワラビ地下茎には少なくとも四種類の毒性分の存在が示唆された。なお本研究のBraxinCは、広野らのptoqiulosideと同一物質であることが示唆された。(2)ワラビの短期毒性、ワラビ地下茎粗毒性画分をモルモット腹腔内へ約60日間、連続投与した。一般病状としては、著しい体重の減少と脱毛がみられたが、赤血球、血小板数には著減がなく、白血球はむしろ増加の傾向を示した。剖検所見としては、腹腔臓器の癒着と出血、膀胱壁の浮腫と肥厚が顕著であった。しかし骨髄には異常はみられなかった。これらの成績からワラビ地下茎粗毒画分の短期毒性はその適用部位および膀胱への障害作用が主なものと考えられる。(3)ワラビ毒・BraxinCはラット腹腔肥満細胞に対してヒスタミン遊離作用を持たない。BraxinA1は肥満細胞に対して細胞膨化作用とヒスタミン遊離作用を示すが、BraxinCはいずれの作用も示さなかった。これらの成績は、BraxinA1とCとは作用発現機序のうえでも両者が異なることを示唆している。
著者
岸本 覚
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

18世紀中期~19世紀初頭は、武家に限らずさまざまな個人や集団が祖先への崇敬を具体的に形に表した時期である。本研究では、薩摩藩島津家と長州藩毛利家を事例として、明治維新期の藩祖神格化の特徴を考察した。その結果、西欧文明やキリシタンへの脅威に対抗するかたちで、明治維新期における藩祖の神格化を進行することが明らかになった。さらに、そこには神仏分離過程および戦没者追悼儀礼など明治政権の宗教政策全体を見渡す視点が関係することも指摘した。
著者
鶴崎 展巨
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アカサビザトウムシGagrellula ferruginea(クモガタ綱ザトウムシ目)では,これまでに2カ所(長野県北アルプス周辺と香川県讃岐山地)で環状重複とみられる現象が生じている。これら両地域で染色体や色斑の調査を進め,両地域でのその様相の詳細を追跡した。北アルプスの同所的集団では相互に数も核型も大きく異なる。両者の交配前生殖隔離機構が不完全で,繁殖干渉により同所的になれない可能性が高い。讃岐山地では同所的集団は竜王山山頂付近のごく狭い範囲に限定されており,周辺はすべて2n=12の集団で固められていることがわかった。
著者
森田 剛仁 日笠 喜朗 芹川 忠夫 島田 章則 佐藤 耕太 竹内 崇
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

当教室では突発性に全身性発作を生じ、それが数日から数ヵ月の寛解期を経て発作を反復する特発性家族性てんかん犬の家系を獲得・維持している。本家系のてんかん発生メカニズム解明を最終目的とし,以下のような結果得た。【材料と方法】1)脳波検査(家系犬6例):国際式10-20法により、生後経時的にキシラジン(1.0mg/kg,I.M.)鎮静下で実施。2)脳内アミノ酸の検討:(1)脳脊髄液内(家系犬6例、正常犬4例):混合深麻酔下,大後頭孔より採取。高速液体クロマトグラフィー電気検出器(HPLC-ED)によりグルタミン酸,グルタミン,アスパラギン酸,アスパラギン,アルギニン,グリシン,タウリン,GABA,スレオニン及びアラニンを定量。(2)in vivo脳実質内(家系犬5例,正常シェルティー犬4例):深麻酔下にて,過換気状態で前頭葉皮質からマイクロダイアリシス法によりサンプル採取。HPLC-EDによりグルタミン酸,グルタミン,アスパラギン酸,アスパラギン,アルギニン,グリシン,タウリン及びGABAを測定し,各アミノ酸の変動を検討。脳波測定を同時に実施。(3)免疫組織化学的検討:グルタミン酸、グルタミン酸代謝に関連する蛋白質およびグルタミン酸レセプターに対する抗体を用いた免疫染色を実施した。【結果】1)脳波検査の結果、発作初期には鋭波及び棘波が前頭葉優位に確認され,発作を長期間反復した症例では,程度に差はあるもののそれらが頭頂葉および後頭葉にも検出された。2)家系犬の脳脊髄液内スレオニン値が高値を示した(家系例:549.35±72.94nmol/ml、対照例:301.71±87.51nmol/ml)。3)家系犬2例において正常換気から過換気状態(血中PCO2:15-25)に移行した時に高振幅鋭波の群発および棘波の散発が記録された。1例で過換気状態でグルタミン酸、グルタミン及びGABAの値が上昇した。他の1例では過換気状態でアスパラギン酸の値が上昇した。他の家系犬および対照例では各アミノ酸の著明な変動を認めなかった。4)てんかん重責後死亡例では、大脳全域におけるグルタミン酸トランスポーターの発現の低下が観察された。壊死した神経細胞周囲に顆粒状にグルタミン酸陽性を示した。【考察】家系犬1例の大脳前頭葉における異常脳波出現と一致し,前頭葉皮質のグルタミン酸あるいはアスパラギン酸の変動が認められた。また、免疫組織化学的にグルタミン酸の代謝に関係するグルタミン酸トランスポーターの発現の低下が観察された。今後、他のレセプターの発現を含め検討する必要がある。
著者
家中 茂 興梠 克久 鎌田 磨人 佐藤 宣子 松村 和則 笠松 浩樹 藤本 仰一 田村 隆雄
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

中山間地域の新たな生業として自伐型林業をとりあげた。技術研修や山林確保など自治体の支援を得ながら新規参入している地域起こし協力隊の事例や旧来の自伐林業者が共同組織化しつつ地域の担い手となっている事例など、産業としての林業とはちがう価値創造的な活動がみられた。典型的な自伐林家の山林における植物群落調査では、自然の分布を反映した地形に応じた分布がみられ、自然を活かす森林管理の手法として注目された。
著者
川田 俊成 児玉 基一朗 岡本 芳晴 山本 福壽
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

4種類の天然型フェニルプロパノイド配糖体、アクテオシド(1)、コナンドロシド(2)、プランタマジョシド(3)、およびイソアクテオシド(4)の合成を行い、フェニルプロパノイド配糖体ライブラリーの一部を構築できた。いずれの化合物についても全合成に成功したのはこれが最初の例である。合成方法は新規に開発した方法を用いた。即ち、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル2,6-ジ-O-アセチル-4-O-カフェオイル-β-D-グルコピラノシドを中間体として用い、これにラムノース、キシロース、グルコース各残基をそれぞれイミデート法により導入して化合物1、2、3の各アセチル・ベンジル誘導体の合成を行った。これら各誘導体はメチルアミンによる脱アセチル化、パラジウム炭素触媒下1,4-シクロヘキサジエンを水素源とする還元法でベンジル基を脱離した。この過程で、反応条件を制御することにより化合物1から化合物4のベンジル誘導体に変換する方法を確立した。さらに、カテコール部分の保護基をベンジル基からtert-butyldimethylsisyl基(TBDSM基)に変更する改良を試みた。その結果、総収率を約3.0%から約7%に向上させることに成功した。合成した4種類の化合物を用いた抗菌性試験として、ナシ黒斑病原菌、Altanaria altanata Japanese pear pathotype (O-216)およびNon pathogenic Altanaria altanata(O-94)を用いた胞子発芽試験を行った。その結果、プランタマジョシドに胞子発芽促進活性を有することが明らかになった。このことは、フェニルプロパノイド配糖体の化学構造と生物活性に相関のあることを示す一例と云える。