著者
古守 やす子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.2-11, 2014

<p>本作品は、「現在」北京で文筆活動を行う「私」(=〈語り手〉)が、清朝末期に日本に留学した時のことを語る形をとる。〈語り手〉は「現在」、「正人君子」と戦っており、〈語り手〉が語る相手、すなわち〈聴き手〉の位置には「正人君子」がいるわけであるが、この作品は、その〈語り―聴く〉という空間と、さらにその外側の〈語り手を超えるもの〉と「鉄の部屋」の空間が提示される構造になっており、読者はその〈聴き手〉となる。</p><p>作品を読む際、ストーリーのみを読むのではなく、ストーリーがどう語られているかという構造を意識することによって、作品が新たな形で読者の前に現れ、迫ってくる。</p>