著者
根本 清次 古家 明子
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

経管栄養患者はその療養上の方針から自ら味わうことなく食事を行うが、食に対する拒絶感、絶望感を抱きやすく、食の満足とはほど遠い位置にある。本研究では患者と共に意見を交えながら食事に対するニードを調査し、残存する機能を利用して食のQOLを向上する方法を開発してきた。平成15年度には視覚に訴える目的で写真製の食事カタログを作成し、同時に口腔内に用いて食事の匂いと味覚を与える食感ピースの原型を開発した。食感ピースは燕下することなく破棄されるものであり、味覚を付与するものである。材料について選定した結果、発泡マンナンが、これに適していることが明らかになった。すなわち、万が一の燕下の際でも無毒であること。燕下しにくい素材であること。多孔質であり、通気性を有することなどが評価の要因となった。平成17年度には視覚や味覚的に食感を付与する"場"として経管栄養患者のための食事会を企画し試行した。この際の患者インタビューの結果より、食感ピースについての微調整をおこない、大きさ、堅さ、味の濃さなどを調整する工夫をおこなった。さらに患者の意見により嗅覚成分について着目する必要が明らかになった。これは流動性を有するミキサー食が食材の混合であるため独特の臭気を有し、不快感につながるとの意見による。したがって香料による香りの調整が必要であることが明らかになった。嗅覚刺激の有用性については食の観点だけでなく、気分や感覚についての有用性が次第に明確化されつつあり、食のにおいと環境臭の関係についても今後明らかにしたい。現在まで食事会を行ってきた患者のアンケートの精細な分析によれば、経管栄養単独の場合と比較して、食満足度の向上を示す結果が示されたものの、経管栄養時の不快感、不安感には効果を有しないことが判明した。これらの結果については順次公表予定である。