著者
北川 洋子 北原 哲 田村 悦代 古川 太一 松村 優子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.213-219, 2001-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

発声時仮声帯も振動する仮声帯発声について, 自験例の音声治療経過を過去の文献と比較し報告した.症例は66歳の男性で, 嗄声を主訴とし来院した.軽度の声帯溝症を伴った仮声帯発声の診断で, 喉頭ファイバースコープを用いた視覚的フィードバック法および音声訓練を実施した.初診より90日後の最終評価では仮声帯の接近は解消され, 声帯による声門閉鎖が得られ, 音声も良好となった.GRBAS評価においては全般的嗄声度Gは2から0へと改善し, ソナグラムの分析でも倍音波形の振幅が大きくなり, 櫛型の明瞭な調波構造となった.本例の仮声帯発声の原因は声帯溝症による声門閉鎖不全を代償するものと考えられた.ファイバースコープでの発声運動の視覚的フィードバック, 音声治療手技が有効であった.当院の仮声帯発声の症例は発声障害患者400例に対して5例, 1.2%であり他の文献と一致していた.