- 著者
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古川 巖
- 出版者
- The Japanese Society of Snow and Ice
- 雑誌
- 雪氷 (ISSN:03731006)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.2, pp.50-53, 1957 (Released:2009-09-04)
それは子供の頃のことである.降りたての真白い雪を食べてみたくてしかたがなかった.一と握りの雪をみつめていると, あわてるように母が寄ってきて「雪の中には虫がいるから食べてはいけないよ」と云った.母は, かなり怖ろしい語気で虫のいる訳を話しつづけたようだったが, 話の内容はおぼいていない.真白い雪.こんなきれいの雪の中に虫なんかおるものか, 雪山へ登って水がほしいときなどには雪をすくって食べる.そのたび毎に「虫なんかいない」と心の中で, 母に言訳をしながら食べている.-これは大人になった今でもそうである.