- 著者
-
古川 雅人
原 和雄
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2000
本研究課題では,旋回失速の初生時における旋回擾乱波の発生形態および伝播挙動に及ぼす翼端漏れ渦の崩壊の効果を調べることにより,擾乱波の発生メカニズムを明らかにして,旋回失速の予知モデルを新たに構築することを目的として,軸流圧縮機動翼列の失速点近傍に対し,動翼列の上・下流の三次元速度ベクトル場の非定常測定を行うとともに,動翼列全周にわたる大規模なRANS非定常流れ解析を実施した.以上の解析から,比較的大きな翼端すき間をもつ場合には,翼端漏れ渦の崩壊に起因した旋回失速の初生が発生するが,翼端すき間の小さい場合には,前縁はく離が支配的な旋回失速の初生形態が発現することが明らかにされた.大きな翼端すき間を有する場合,失速点近傍において,前縁はく離よりも先に翼端漏れ渦のスパイラル形崩壊が動翼列全ピッチで発生し,流量の低下とともに,漏れ渦は崩壊による自励振動を強め,隣接翼圧力面だけでなく,負圧面とも干渉を始め,負圧面境界層のはく離が引き起こされることを示し,そのはく離を伴う漏れ渦と負圧面の干渉は動翼列の回転方向とは逆方向へ伝播し,旋回不安定擾乱を形成すること,それらの干渉の結果,翼負圧面と隣接翼圧力面とに足を持つ大規模なはく離渦構造が形成され,部分スパン形の旋回失速形態へと至る.一方,翼端すき間の小さい場合,失速点近傍においても,翼端漏れ渦は弱く,渦崩壊を示さず,流量の低下とともに,前縁はく離が発生して旋回失速へと至ることを示し,その旋回失速セルは翼負圧面とケーシング面に足を持つ竜巻状のはく離渦に支配されること,そのはく離渦構造は非常に大きなブロッケージ効果を持つため,隣接翼に接近するとともに,隣接翼の迎え角を増大させて前縁はく離を誘起し,隣接翼に新たな竜巻状のはく離渦を発生させる結果,失速セルが周方向に伝播する.