著者
古株 靖久 加藤 伸彦 佐藤 文彦
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.443, 2006 (Released:2006-12-27)

オウレン(Coptis japonica)が生合成するベルベリンは抗菌活性等をもつ有用イソキノリンアルカロイドである。当研究室で確立されたオウレン培養細胞はベルベリン生合成活性が高く、かつその生合成酵素遺伝子のほとんどが単離されていることからアルカロイド生合成系のよい研究モデルである。本研究では同細胞を用いてベルベリン生合成系の転写制御因子の単離と機能解析を試みたので報告する。まず同生合成系に関与する転写因子の単離を目的に高生産選抜株のEST約5000クローンを配列決定し、これらの配列からBLASTx検索により約50の転写因子相同配列を見出した。相同性等をもとに27クローンを選抜し、その転写調節活性を一過的RNAi法(BBB 69:63,2005)により解析した。候補遺伝子配列特異的に作製した二本鎖RNAをオウレンプロトプラストへ導入し、3日間培養後に生合成酵素6OMTの転写産物量を定量することにより解析した。その結果、clone#48の発現抑制に伴って6OMTのmRNAが劇的に低下するという結果を得た。他の生合成遺伝子の発現量を測定した結果、測定した8の遺伝子全てで低下を認めた。一方actinや一次代謝系GAPDH、Chorismate mutaseへの影響は認められなかった。clone#48にはbHLHの保存配列が存在し、CjbHLH1と名付けた。CjbHLH1によりベルベリン生合成系が特異的かつ包括的に制御されていることが示唆されたことより、現在、安定形質転換体を作成し、その機能の解析を進めている。