著者
古江 和久 古江 増隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.7, pp.1645-1652, 2020

<p>アトピー性皮膚炎では,Th2サイトカインの顕著な発現が認められる.加えてIL-17産生細胞の浸潤も報告されているが,その意義については未解明の部分が多い.本稿では,CCR6を発現するIL-17産生細胞の遊走因子であるCCL20産生に対する「搔破」の影響を<i>In vitro</i>表皮細胞搔破モデルを用いて検討した.表皮細胞シートを搔破するとCCL20産生放出が特異的に誘導されること,及びその産生量はIL-4,IL-13による影響を受けないことが明らかとなった.これらの結果から,IL-17産生細胞浸潤は「搔破」に伴う2次的な現象で,Th2サイトカインの影響下で起こっているわけではない可能性が示唆された.</p>
著者
加藤 美和 古江 増隆 江藤 綾桂 松永 拓磨 井上 慶一 橋本 弘規 水野 亜美 芥 茉実 平野 早希子 古江 和久
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.370-376, 2020

<p>Endothelin-1(EDN1)は正常表皮の基底細胞に限局的に強く発現され,基底細胞癌でもその発現が認められることが報告されている。しかし基底細胞癌を二次的に発生しやすい脂腺母斑での EDN1 発現はこれまで検討されていない。我々は脂腺母斑 10 例,基底細胞癌を発生した脂腺母斑 4 例,脂腺母斑周囲の正常皮膚 9 例,およびランダム生検にて採取した正常皮膚 10 例のパラフィン包埋標本を用いて,EDN1 の発現を免疫組織学的に検討した。EDN1 は正常表皮や上部毛囊脂腺系の基底細胞,エクリン汗腺の導管部と分泌部に強い発現を認めた。下部毛囊では,内毛根鞘細胞,毛幹,毛母,毛乳頭は EDN1 陰性であった反面,外毛根鞘細胞は全体的に EDN1 陽性を示した。脂腺母斑表皮でも基底細胞は EDN1 強陽性であった。正常皮膚に比べ,脂腺母斑では肥厚した有棘細胞層内とりわけ毛囊分化を示しつつある部位には EDN1 陽性有棘細胞が有意に増数集簇していた。基底細胞癌が発生した脂腺母斑の基底細胞癌は EDN1 陽性であった。また基底細胞癌から離れた脂腺母斑部に比べ,基底細胞癌近傍の脂腺母斑部では EDN1 陽性有棘細胞が有意に増数していた。これらの結果から EDN1 陽性の毛囊分化を示しつつある部位が基底細胞癌の発生母地になるのではないかと推察した。加えて正常毛囊の EDN1 分布から類推すると,脂腺母斑表皮内の EDN1 陽性有棘細胞は外毛根鞘細胞への分化を示している細胞ではないかと考えた。</p>