著者
三田村 康貴 占部 和敬 古江 増隆
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.982-984, 2013-09-10

要旨 18歳,女性.3週間前から出現した右上腕の萎縮,陥凹を主訴に当科を受診した.5か月前にHPV(human papillomavirus)16/18に対する子宮頸がんワクチン(サーバリックス®)を同部位に筋肉内注射されていた.モルフェア,深在性エリテマトーデスなどの鑑別目的に皮膚生検を施行した.病理組織学的検査では病変の主体は皮下脂肪織にあり,脂肪細胞の変性および消失が認められた.ヒアリン様物質の沈着,脂肪滴を貪食する組織球を認めた.サーバリックス®による脂肪萎縮症と診断した.一般にステロイド局所注射により脂肪萎縮症をきたすことが多く,女性に多いことが知られている.サーバリックス®による脂肪萎縮症の報告は調べえた限りなく,きわめて稀であると考えられた.婦人科医師は本疾患を認識し,対策を取る必要があると考えたため報告する.
著者
大日 輝記 古賀 哲也 城戸 真希子 師井 洋一 占部 和敬 古江 増隆 名和 行文
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.452-455, 2002-08-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1

31歳,男性。タイへ渡航し現地リゾートの海岸を訪れた後,右足底に爬行様線状疹を認め,次第に移動した。病理組織にて肥厚した表皮内に小水疱を認め,水疱内,表皮および真皮上層血管周囲に高度の好酸球浸潤および中程度のリンパ球浸潤を認めた。一方,虫体は認めなかった。各種寄生虫の免疫血清学的検査はいずれも陰性であったが,渡航歴,経過および臨床所見からイヌ鉤虫による皮膚幼虫移行症と診断した。近年,海外リゾート地での感染例が相次いで報告されており,同地渡航者における本症の診断に注意が必要である。
著者
古江 増隆 山崎 雙次 神保 孝一 土田 哲也 天谷 雅行 田中 俊宏 松永 佳世子 武藤 正彦 森田 栄伸 秋山 真志 相馬 良直 照井 正 真鍋 求
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1795-1809, 2009-08-20 (Released:2014-11-28)
被引用文献数
1

[目的]我が国の皮膚科受診患者の皮膚疾患の頻度,性別,年齢分布,気候との関連性などを多施設大規模調査によって明らかにすることを目的とした.[方法]全国の大学病院76施設,病院55施設,診療所59施設(計190施設)において,2007年5月,8月,11月,および2008年2月の各月の第2週目を目安に,その週のいずれか1日を受診した初診・再診を問わず外来,および入院中の患者全てを対象に,「性別」,「年齢」,「診断名」を所定のマークシート調査に記録した.各調査期間における調査協力施設地域の気温,および湿度に関するデータは,気象庁・気象統計情報を使用した.[結果]4回の調査すべてに協力いただいた170施設(大学病院69施設,病院45施設,診療所56施設)から回収した67,448票を解析した.上位20疾患を列挙すると,その他の湿疹,アトピー性皮膚炎,足白癬,蕁麻疹・血管浮腫,爪白癬,ウイルス性疣贅,乾癬,接触皮膚炎,ざ瘡,脂漏性皮膚炎,手湿疹,その他の皮膚良性腫瘍,円形脱毛症,帯状疱疹・疱疹後神経痛,皮膚潰瘍(糖尿病以外),痒疹,粉瘤,尋常性白斑,脂漏性角化症,薬疹・中毒疹の順であり,上位20疾患で皮膚科受診患者の85.34%を占めた.疾患ごとに特徴的な年齢分布を示した.性差が明らかな疾患が存在した.気温や湿度と正負の相関を示す疾患が存在した.[結語]本調査によって21世紀初頭の皮膚科受診患者の実態を明らかにし得た.本調査が今後も定期的に継続されることで,社会皮膚科学的視野にたった皮膚疾患の理解が深まると考えた.
著者
増田 亜希子 伊東 孝通 和田 麻衣子 日高 らん 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.353-355, 2016-08-01 (Released:2016-12-15)
参考文献数
8

27 歳,女性。小児期よりアトピー性皮膚炎に罹患していた。初診の 6 年前より夫の精液付着部位に蕁麻疹と瘙痒を認めた。その後,避妊具なしで性交した際に全身に蕁麻疹を認め,呼吸困難も出現した。同様のエピソードが過去 2 回あった。避妊具を使用した性交渉では同様の症状を生じたことはなかった。近医を受診し,精漿アレルギーの疑いで当科を紹介され受診した。10 倍から1000 倍に希釈した夫の精漿を用いたプリックテストでは,検査した全ての濃度で紅斑と膨疹が出現した。本疾患は精漿中に存在する前立腺由来の糖蛋白に対するⅠ型アレルギー反応であると考えられている。精漿アレルギーの患者の半数以上にアトピー性皮膚炎の既往があると報告されており,皮膚バリア機能の障害による経皮感作が発症に重要な役割を担っていることが推察される。本疾患は皮膚科領域での報告は比較的稀であるが,アトピー性皮膚炎関連アレルギー疾患の一つとして位置づけることができると考え報告した。
著者
二村 昌樹 山本 貴和子 齋藤 麻耶子 Jonathan Batchelor 中原 真希子 中原 剛士 古江 増隆 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.66-72, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
12

【目的】アトピー性皮膚炎患者が抱えるステロイド外用薬を使用することへの不安を評価する質問票として,12の設問で構成されるTOPICOP(TOPIcal COrticosteroid Phobia)がフランスで開発されている.本研究ではTOPICOP日本語版を作成し,その実行可能性を調査した.【方法】原文から翻訳,逆翻訳の工程を経て日本語版を作成した.次にアトピー性皮膚炎患者(小児患者の場合は養育者)を対象にして,TOPICOP日本語版とともにその回答時間と内容についての無記名自記式アンケート調査を実施した.【結果】回答者は287人(平均年齢38±7歳,女性83%)で,TOPICOPスコアは平均41±18点であった.半数以上の回答者が,ステロイド外用薬が血液に入る,皮膚にダメージがある,健康に悪いと考え,特定部位に使用する不安,塗りすぎの不安,漠然とした不安を感じ,安心感が必要としていた.TOPICOPは全体の68%が5分未満で回答できており,87%が記入に困難は感じず,79%が内容を理解しやすいと回答していた.【結語】TOPICOP日本語版は短時間に回答できるステロイド不安評価指標で,日常診療や臨床研究に今後広く活用できると考えられた.
著者
山村 和彦 加藤 しおり 加藤 隆弘 溝口 義人 門司 晃 竹内 聡 古江 増隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第39回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.156, 2011 (Released:2011-08-20)

慢性蕁麻疹は6週間以上継続する蕁麻疹を指し、その病態には、自己免疫性メカニズムを介した肥満細胞の脱顆粒に伴う、ヒスタミンを中心としたケミカルメディエーター放出が深く関わっている。通常、抗ヒスタミン薬の内服治療を行うが、治療抵抗性症例も少なくない。我々は、こうした治療抵抗性の慢性蕁麻疹に対して、認知症に伴う精神症状や不眠症などで用いられる抑肝散の内服が奏功した症例を報告してきた。抑肝散はソウジュツ、ブクリョウ、センキュウ、チョウトウコウ、トウキ、サイコ、カンゾウの7種類の生薬からなる漢方薬で、近年、外傷性脳損傷後の精神症状の緩和やアルツハイマー病の痴呆による行動異常や精神症状の改善といった、中枢神経に対する新たな効能も報告されている。今回、我々は肥満細胞モデルとして良く使われるラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3細胞)を用いて、抑肝散の治療抵抗性蕁麻疹に対する抑制メカニズムを検討した。その結果、カルシウム蛍光指示薬Fura-2を用いた測定系で、抑肝散がIgE感作後の抗原刺激によるRBL-2H3細胞の急激な細胞内カルシウム濃度上昇(脱顆粒を反映)を著明に抑制することを見出した。この抑制効果は代表的な抗ヒスタミン薬であるクロルフェニラミンでは認められず、治療抵抗性蕁麻疹への抑肝散の薬効を反映するものと考えられた。
著者
上ノ土 武 飯尾 靖枝 只熊 幸代 原塚 柳子 神奈川 芳行 今村 知明 古江 増隆
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡醫學雜誌 (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.183-184, 2005-05-25

ダイオキシンやダイオキシン関連化合物の,次世代に対する影響について社会的関心が高まっている.吉村らは1968年から1977年の間に,油症患者から出生した85人の性比を,一般人の期待される男女比0.514と比較し,明確な差はない,と報告した.しかしながら,曝露者が父親か母親かと,親の曝露時の年齢との関連についての検討は,油症ではまだ行われていない.油症と同様に,PCBやダイオキシン関連化合物が食用油に混入した例としては,台湾で発生したYuchengがある.Yu-chengの原因物質は,油症の原因物質と極めて類似しており,Polychlorinatedbiphenyls(PCBs)やPolychlorinateddibenzofurans(PCDFs)が主なものである.ダイオキシンやダイオキシン関連化合物質に曝露された例は,イタリアのSevesoをはじめ複数の国から報告がある.Yu-chengや,Seveso,ロシアやオーストリアの塩素ざ瘡コホートでは,20歳前や20代の前半に,ダイオキシンやダイオキシン類関連化合物に曝露した男性が父親である児の男女比は有意に低下している,との報告されている.一方で,曝露した女性が母親である児の男女比については影響が認められない,との報告がYu-chengやSevesoからなされている.
著者
大森 睦美 占部 和敬 辻田 淳 内 博史 幸田 太 師井 洋一 古江 増隆
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.17-20, 2009

73歳,女性。初診の8ヶ月前,顔面中央に青灰色の色素沈着が出現し,次第に体幹,手掌に拡大した。受診時,顔面,胸部,上背部,両手掌外側に青灰色の色素沈着を認めた。病理組織学的に汗腺や毛包周囲に黒褐色粒子の沈着を多数認めた。詳細な問診により初診の3ヶ月前まで約3年間,口内炎に対して連日硝酸銀を含む口腔含嗽液を使用していたことが判明し,銀皮症と診断した。診断後,外来にて3年間の経過観察を行っているが全身の色素沈着は軽快していない。
著者
古江 和久 古江 増隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.7, pp.1645-1652, 2020

<p>アトピー性皮膚炎では,Th2サイトカインの顕著な発現が認められる.加えてIL-17産生細胞の浸潤も報告されているが,その意義については未解明の部分が多い.本稿では,CCR6を発現するIL-17産生細胞の遊走因子であるCCL20産生に対する「搔破」の影響を<i>In vitro</i>表皮細胞搔破モデルを用いて検討した.表皮細胞シートを搔破するとCCL20産生放出が特異的に誘導されること,及びその産生量はIL-4,IL-13による影響を受けないことが明らかとなった.これらの結果から,IL-17産生細胞浸潤は「搔破」に伴う2次的な現象で,Th2サイトカインの影響下で起こっているわけではない可能性が示唆された.</p>
著者
杉山 晃子 岸川 禮子 西江 温子 竹内 聡 下田 照文 岩永 知秋 西間 三馨 古江 増隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1532-1542, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14

【背景と目的】最近,加水分解コムギを含有するお茶石鹸の使用により小麦アレルギーあるいは小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)を発症することが社会問題となっている.当院を受診した症例から臨床的な特徴を考察した.【方法】2010年1月から10月にかけて当院を受診した加水分解コムギ含有石鹸の使用によって誘発されたと考えられる小麦アレルギーあるいはWDEIAの12例について検討した.【結果】平均年齢は36.0±9.9歳で,全て女性であった.全例,それまで小麦アレルギー症状の既往はなく,当該の石鹸を使用開始してから平均2年弱でWDEIAもしくは小麦アレルギーを発症していた.多くの症例が洗顔時に蕁麻疹や眼瞼腫脹,鼻汁などの症状を呈していた.従来のWDEIAに特異的なω-5グリアジンは12例中10例で陰性であった.【結語】石鹸の使用により加水分解コムギに経皮的に感作され,WDEIAもしくは小麦アレルギーを発症したと考えられた.当該の石鹸以外にも,香粧品により重篤なアナフィラキシーをきたす可能性があることを医療従事者が認識し,広く周知することが重要である.
著者
佐々木 誉詩子 内 博史 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.459-462, 2017-10-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

29 歳,女性。初診 13 日前に両側腹部脂肪吸引術を受けた。初診 4 日前に発熱,両側腹部の発赤で蜂窩織炎と診断された。初診 3 日前に同部位に水疱が出現し急激に拡大した。初診前日,咳嗽が出現し,当日,呼吸困難感を訴え,肺塞栓症疑いで当院に救急搬送となった。初診時,バイタルサインの異常と両側腹部に手拳大の壊死組織を認めた。血液検査では白血球・CRP 上昇,Hb 低下,凝固異常などがみられた。心エコーで肺動脈が拡張していたが CT で明らかな血栓はなく,経過からは脂肪塞栓による肺塞栓症と考えた。敗血症性ショックを疑い腹部の緊急デブリードマンを行ったが,塗抹・培養とも菌は検出されなかった。肺高血圧は軽減し経過観察していたが,その後急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) を発症し,凝固障害とともに治療し軽快した。脂肪塞栓症候群は脂肪吸引術後にもまれに起こる重大な合併症であり,処置後の患者は注意深く観察し,発症の際は速やかな診断・治療が必要となる。
著者
徳永 章二 飯田 隆雄 古江 増隆
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡医学雑誌 (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.135-145, 2005-05-25

油症患者は「油症診断基準」により診断・認定されてきた.これまでに1800人以上が油症患者と認定された.1968年刊行の最初の基準は油症の症状・徴候に基づいていたが,1973,1976,1981年の改訂により,血液中のポリ塩化ビフェニール(PCB)とポリ塩化クアターフェニール(PCQ)の性状及び濃度が基準に加わった.しかし,ダイオキシン類の1群であるポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)は油症患者の血液中の総毒性等量(TEQ)のうち最も大きな割合を占める事が示されているにもかかわらず,血液中ダイオキシン類濃度の測定が困難なため,これまで診断基準に入れられていなかった.近年,5gという少量の血液サンプルから高い妥当性と再現性でもってダイオキシン類濃度を測定できる方法が開発された.この改良された方法により,全国油症患者追跡検診受診者から得られた多数の血液サンプルでダイオキシン濃度を定型作業として測定する事ができるようになった.この論文では,全国油症患者追跡検診受診者と一般人口の血液中ダイオキシン濃度を統計学的に解析することで考案された,血液中ダイオキシン濃度を用いた油症の新しい診断基準を提案する.これは血液中ダイオキシン濃度をもとに油症患者を識別しようとする最初の試みである.
著者
濱田 学 行徳 隆裕 佐藤 さおり 松田 哲男 松田 知子 絹川 直子 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.213-218, 2008
被引用文献数
8

アトピー性皮膚炎(以下:AD)にとってかゆみはきわめて重要な臨床症状であり,掻破による皮疹の増悪が問題となる。そこで今回,精製ツバキ油100%のツバキ油スプレー(アトピコ<SUP>&reg;</SUP>スキンヘルスケアオイル)を用いて,AD患者のかゆみに対する即時的な軽減効果,及びその保湿効果を副次的に検討した。AD患者39例を対象にツバキ油スプレー(以下:ツバキ油)または対照製剤として精製水スプレー(以下:精製水)を各々2週間使用させ,二重盲検&middot;クロスオーバー比較試験を実施した。その結果,ツバキ油使用群は精製水使用群と比較して有意にかゆみを軽減する効果が認められた(p<0.01)。また,ツバキ油使用群は精製水使用群と比べ,有意な保湿効果が認められた(p<0.01)。使用感アンケートでは,スプレータイプの使用しやすさについて,両群ともに「使用しやすい」が73.0%で両群間に差はなかった。しっとり感が「ある」についてはツバキ油使用群が61.5%,精製水使用群が23.1%であり,ツバキ油スプレーはしっとり感があり,使用感にすぐれた保湿&middot;保護剤であることが示唆された。副作用は全症例で1例もなかった。重症度,副作用,使用アンケート(止痒効果,保湿効果,使用感)を総合評価した有用性では,やや有用以上がツバキ油使用群で71.8%,精製水使用群で41.0%と両群に有意な差を認めた(p<0.01)。以上から,ツバキ油スプレーはAD 患者の有するかゆみに対して即時的な軽減効果及び保湿効果が期待でき,日常のスキンケアにおいて安全に使用できるスキンケア剤であると考えられた。
著者
河原 紗穂 三雲 亜矢子 豊田 美都 中原 真希子 菊池 智子 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.491-495, 2013

34 歳,女性。元来,アトピー性皮膚炎のため近医で加療されていた。不明熱,視野欠損,両手掌,足底に紫斑,血疱を認め,当科を受診した。足底の血疱穿刺液および血液培養にて Methicillin-sensitive <i>Staphylococcus aureus</i> (MSSA)を検出し,経胸壁超音波検査では僧房弁に疣贅と思われる所見と僧帽弁逆流を認め,感染性心内膜炎と診断した。弁破壊に伴う僧帽弁逆流と疣贅による脳梗塞などを含めた遠隔病巣があることから,手術目的に転院し,僧房弁置換術が施行された。アトピー性皮膚炎に感染性心内膜炎を併発した報告例は本邦では約 10 例認めるのみである。そのアトピー性皮膚炎患者の多くは重症型で,ほとんどの症例で起炎菌として黄色ブドウ球菌が検出されていることから,感染経路としてはバリア機能の低下した皮膚から細菌が侵入したと考えられている。黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎は,疣贅による弁破壊や全身諸臓器に転移性病巣を作りやすいといわれており,致死的となることが多い。このような重篤な合併症を予防するためにも,アトピー性皮膚炎に対して適切な治療を行い,皮膚におけるバリア機能を保つことが,重要と思われる。
著者
金子 栄 山口 道也 日野 亮介 澤田 雄宇 中村 元信 大山 文悟 大畑 千佳 米倉 健太郎 林 宏明 柳瀬 哲至 松阪 由紀 鶴田 紀子 杉田 和成 菊池 智子 三苫 千景 中原 剛士 古江 増隆 岡崎 布佐子 小池 雄太 今福 信一 西日本炎症性皮膚疾患研究会 伊藤 宏太郎 山口 和記 宮城 拓也 高橋 健造 東 裕子 森実 真 野村 隼人
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1525-1532, 2021

<p>乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.</p>
著者
加藤 美和 古江 増隆 江藤 綾桂 松永 拓磨 井上 慶一 橋本 弘規 水野 亜美 芥 茉実 平野 早希子 古江 和久
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.370-376, 2020

<p>Endothelin-1(EDN1)は正常表皮の基底細胞に限局的に強く発現され,基底細胞癌でもその発現が認められることが報告されている。しかし基底細胞癌を二次的に発生しやすい脂腺母斑での EDN1 発現はこれまで検討されていない。我々は脂腺母斑 10 例,基底細胞癌を発生した脂腺母斑 4 例,脂腺母斑周囲の正常皮膚 9 例,およびランダム生検にて採取した正常皮膚 10 例のパラフィン包埋標本を用いて,EDN1 の発現を免疫組織学的に検討した。EDN1 は正常表皮や上部毛囊脂腺系の基底細胞,エクリン汗腺の導管部と分泌部に強い発現を認めた。下部毛囊では,内毛根鞘細胞,毛幹,毛母,毛乳頭は EDN1 陰性であった反面,外毛根鞘細胞は全体的に EDN1 陽性を示した。脂腺母斑表皮でも基底細胞は EDN1 強陽性であった。正常皮膚に比べ,脂腺母斑では肥厚した有棘細胞層内とりわけ毛囊分化を示しつつある部位には EDN1 陽性有棘細胞が有意に増数集簇していた。基底細胞癌が発生した脂腺母斑の基底細胞癌は EDN1 陽性であった。また基底細胞癌から離れた脂腺母斑部に比べ,基底細胞癌近傍の脂腺母斑部では EDN1 陽性有棘細胞が有意に増数していた。これらの結果から EDN1 陽性の毛囊分化を示しつつある部位が基底細胞癌の発生母地になるのではないかと推察した。加えて正常毛囊の EDN1 分布から類推すると,脂腺母斑表皮内の EDN1 陽性有棘細胞は外毛根鞘細胞への分化を示している細胞ではないかと考えた。</p>