著者
古江 奈々美
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.56-69, 2018-06-30 (Released:2018-12-14)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Govindarajan, Immert, and Trimble(2009)は,新興国で既存技術の組み合わせによるイノベーションが生まれ,最終的には先進国市場で普及する,これまでの先進国から新興国へという既存理論に逆行する“リバースイノベーション”を提唱している。産学ともにこの新しい現象に注目しているものの,一連のイノベーションのプロセスにおいて,新興国と先進国の間で具体的な違いが何であるのか言及している研究は少ない。本研究は,先進国と新興国の大学院生を対象とし,新商品開発を模したワークショップを通じて,アイデア作成の内容やその選抜を行う際の姿勢における違いを探索することを試みた。実験の結果,先進国と比べて,新興国のアイデアの方が,新規性・独創性が低く,投資リスクの低いアイデアを作成することがわかった。そして新興国の被験者は,先進国の被験者に比べ,常に自信を持ってアイデアを選抜する傾向が明らかとなった。加えて,これらの特徴を踏まえ,先進国人材,新興国人材それぞれが実務上どのような点に注力すべきかを,デザイン思考を用いて提示する。