著者
古沢 照幸 加藤 義明
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.37, pp.p121-133, 1989-09

石垣,白河,稚内,東京の4地域の小学生,中学生,高校生,大人(小,中,高の親)を対象とし,56の東京へのイメージ項目,東京への知識度,東京の情報をどれだけ欲しいかという情報獲得度や性別,年齢などの基本的属性について質問した。56の項目の因子分析(factor analysis) の結果,東京砂漠, Enjoy東京,先進都市,きたない,便利,ビジネス都市の因子構造を確認した。確認された結果は次の通りである。地区別ではネガティヴイメージ(東京砂漠,きたない)で地方サンプルが高く,ポジティヴイメージ(Enjoy東京,便利)で東京サンプルのイメージ得点が高かった。ポジティヴイメージである先進都市ではこの通りではなかった。知識度については知識度低群でポジティヴイメージが低く,ネガティヴイメージが逆に高い。地区別の結果にこの知識度の影響も考えられる。地方サンプルでの東京へ"行ったことがない","行ったことがある","住んだことがある"という経験要因では経験あり群の方が各イメージ得点が高くなる傾向にあった(ネガティヴ.ポジティヴ共)。きたないイメージでは地方サンプルと東京サンプルとの得点差を開く要因となっている。また東京砂漠イメージでは"住んだことがある"より"行ったことがある"方が高い得点を示した。地方サンプルでは情報獲得の各イメージへの影響が知識度より大きかったが,東京サンプルではこの傾向は見られなかった。発達的には地方サンプルで発達段階が上がるにつれほとんど(6イメージのうち5)のイメージ得点は高くなる傾向にあるが,東京サンプルではこのような傾向は一部のイメージにあるだけであった。発達の影響が特に大きいのは東京砂漠イメージで対人関係に関するイメージであることが発達的に徐々にこのイメージを作り上げていくのではないかと考えられる。
著者
古沢 照幸 加藤 義明
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.37, pp.p55-70, 1989-09

東京,大阪,白河,石垣,稚内の5地域に住んでいる人々を対象に東京イメージと大阪イメージについて質問を行った。なお白河,石垣,稚内についてはこれらを合わせ地方サンプルとして結果を出すこととした。被調査者は小学生,中学生,高校生とその両親であった。調査項目は56のイメージ項目,東京または大阪への居住経験を問う項目に性別,年令などの基本的属性を問う項目が加わっている。初めに東京イメージと大阪イメージの因子構造を決定するため全サンプルを対象に両イメージについてそれぞれ因子分析を行った。その結果5つの因子が抽出され,それらは両イメージに共通のものであった。因子名は「先進性」,「砂漠性(東京砂漠,大阪砂漠)」,「Enjoy(Enjoy東京, Enjoy大阪)」,「きたない」,「便利」であった。以下この5つの因子を基本とし指標尺度を作成し,比較検討を行った。諸結果は以下の通りである。東京イメージ,大阪イメージそれぞれについて各地域サンプルの指標尺度の得点を比較した。「先進性」,「砂漠性」,「きたない」は両イメージとも地方サンプルが東京サンプルや大阪サンプルの得点より高かった。各地域サンプルにおける東京サンプルと大阪サンプルの比較では,東京サンプルはすべての指標尺度が東京イメージの方が大阪イメージよりも高い得点を示していた。地方サンプルは「Enjoy」以外のすべての指標尺度で東京イメージの得点が高かった。大阪サンプルでは「Enjoyj」と「便利」で大阪イメージの得点が高く,他の3指標では東京イメージの得点が高かった。「先進性」,「砂漠性」,「きたない」はこの結果から東京に特徴的なイメージであると考えられた。これらの結果と経験要因の結果を合わせた検討によって3つのルートによるイメージ形成が考えられた。「Enjoy」,「便利」のようにその地に生活し,経験することによって形成されるイメージ(生活経験ルートイメージ), 「砂漠性」,「きたない」のように経験を通して現在住んでいる地域と対象都市を比較することによって形成されるイメージ(経験比較ルートイメージ), 「先進性」のように経験に直接関連せず,住んでいる地域との比較によって形成されるイメージ(非経験または間接経験ルートイメージ)の3ルートイメージである。これは諸結果による総合的な判断によるが,実際に3つのルートによってイメージが形成されているかどうかは,実験的な研究の裏づけも必要となろう。