著者
古沢 良雄 黒沢 雄一郎 中馬 一操
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.359-365, 1973

市販和漢薬用植物63種について,カゼインを基質としたときの抗トリプシン作用を検討した.その結果, 50%以上の阻害率を示したものは桂皮,牡丹,黄柏,杏仁,甘草,沢潟,ヒシの実(果皮),土茯苓,麻黄,枸杞(茎部),括楼根,白扁豆の12種であった.このうち,黄柏,甘草,沢潟,枸杞,括楼根,白扁豆の阻害物質は,非透析性を示した.<br> Fig. 8. Inhibitory Effects of HTI and Soy Bean Trypsin Inhibitor (STI) on Several Proteinases.<br> Table IV. Anti-inflammatory Effect of HTI on Carrageenin Indaced Edema of Rat Hind Paw<br> (1) 桂皮の阻害物質は,皮粉処理により完全に吸着されることや,種々の呈色反応から,カテコールタンニンか,それに類似した物質であろうと推定した.<br> (2) 甘草の成分グリチルリチンおよび,その加水分解物であるグリチルレチン酸の抗トリプシン作用を検討した.グリチルレチン酸は,グリチルリチンの10数倍の抗トリプシン作用を示し,さらに抗キモトリプシン作用もみられたが,植物性および細菌起源の蛋白分解酵素に対する阻害作用は,認められなかった.<br> (3) ヒシの実の阻害物質は,局方タンニン酸と一致した.<br> (4) 白扁豆の阻害物質は温水で抽出され,アセトンで粗末として沈殿分離された.粗末はトリプシン,キモトリプシンに対して阻害作用を示したが,植物性のブロメラインや細菌起源の蛋白分解酵素に対しては阻害しなかった.また,粗末は酸やペプシンに安定であったが,アルカリでは不安定であった.さらに,カラゲニン浮腫に対し,皮下投与で有意な抑制を示した.しかし,経口投与では対照と有意な差はみられなかった.