著者
福永 隆生 古賀 克也 藤井 信 小倉 博代
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.181-192, 1990-03-15

ニワトリおよびウズラに綿実粕あるいはカポック粕添加飼料を給餌すると7日目あるいは10日目から卵黄色に異常(淡褐変)がある卵が産卵され, 約3週間後に褐色を帯びた卵黄硬化卵が産卵されることを認めた.これらの飼料を正常飼料に変換すると約20日後に正常卵に復元することが認められた.異常卵黄と正常卵黄の脂質の分画や, それらの画分の脂肪酸組成および復元過程中の脂肪酸組成の変動を調べた.さらに異常および正常卵黄のタンパク質のアミノ酸組成および, これらの卵黄のエーテル抽出物のウズラの胚リパーゼ活性に対する作用を調べた.1.卵黄脂質を硅酸カラムクロマトグラフィーで分画したところ, トリアシルグリセロール画分(81〜85%)が最も多く, つづいてケファリン画分, レシチンとスフィンゴミエリン画分であり, 異常卵黄と正常卵黄間には量的差異は認められなかった.2.卵黄のエーテル抽出脂質の沃素価は, 正常卵黄に比べ異常卵黄が小さく, 構成脂肪酸をみると異常卵黄はステアリン酸が著しく多く, オレイン酸が少ない.リノール酸はやや多かった.このステアリン酸とオレイン酸の顕著な増減はトリアシルグセロール画分についても認められた.さらに, 異常卵黄の脂質およびその分画画分が正常卵黄のものより飽和脂肪酸総量が著しく多く, 不飽和脂肪酸総量は少なかった.その増減率はトリアシルグリセロール画分が最も大である.3.硅酸カラムクロマトグラフィーにおけるトリアシルグリセロール溶出液を-20℃で保存するとき生成する不溶化析出物と溶存物質の脂肪酸組成は, 正常卵黄では差はないが, 異常卵黄ではパルミチン酸とステアリン酸が析出物に多く, オレイン酸とリノール酸は逆に少なかった.4.ニワトリ, ウズラともに異常卵黄から正常卵黄への復元過程における脂肪酸組成の変化をみると, 正常飼料給与後の短期間で飽和脂肪酸総量の減少と不飽和脂肪酸総量の増加が認められた.11日目には正常卵黄とほぼ同じレベルに到達した.5.異常卵黄凍結乾燥粉末のエーテル抽出物はMillian反応, Halphen反応ともに陽性であった.6.脱脂卵黄タンパク質のアミノ酸組成をみると, ニワトリ, ウズラともに異常卵のリジンとチロシン含量が正常卵より少なく, 逆にバリン含量は多かった.7.ウズラの受精卵胚部からのリパーゼ粗抽出液の酵素活性は異常卵黄エーテル抽出物の添加により阻害された.
著者
古賀 克也 福永 隆生 藤井 信
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.179-187, 1976-03-20

ブロイラー頭部は乾物中, 蛋白質53%, カルシウム7.5%, 燐3%, 熱水可溶抽出物3%を含むので蛋白資源活用の面から食品としての利用性について研究した.1)缶詰にしたブロイラー頭部を0.7気圧加圧60分ないし150分蒸煮むよび1気圧加圧15分ないし90分蒸煮を行ない, 骨の軟化状態をTensilon UTMおよびガラス棒圧迫により調べた.その結果0.7気圧100分あるいは1気圧加圧60分の蒸煮で鶏頭は充分な可食状態になることが認められた.2)上記条件で加圧蒸煮したブロイラー頭部ミンチの一般成分およびアミノ酸組成を常圧蒸煮ミンチのものと比較してもほとんど変化は認められない.3)1気圧加圧60分蒸煮の頭部ミンチを豚肉ソーセージ製造時に5〜6%添加しても結着性には影響がなく, 試食官能テストの結果, 無添加のものに比し遜色がないことが認められた.さらに鶏頭部はカルシウム, 燐の含量が多いので, その可食化ミンチの摂取は妊産婦, 授乳婦にとって無機栄養上有効と思われる.4)アミノ酸の相対的割合からみればブロイラー頭部の蒸煮ミンチは鶏肉に比し, アルギニン, プロリン, グリシン, アラニンが多く, リジン, アスパラギン酸, グルタミン酸, 含硫アミノ酸, イソロイシンは少ない.蒸煮ミンチのprotein scoreは51であった.5)頭部およびそのミンチを常圧および加圧下で熱水抽出を行ないフレーバーテストを行なったところ, 遊離アミノ酸含量や蛋白質含量が多い加圧熱水抽出液よりも常圧熱水抽出液が呈味は良好であった.加圧熱水抽出液の5'-イノシン酸および乳酸含量は常圧熱水抽出液のものより少なかった.常圧熱水抽出液はスープあるいは調理のベースとして良好であるのみならず, その凍結乾燥粉末は長期保存呈味料として良好である.6)ブロイラー頭部ミンチの熱水油出液にはタウリンが著しく多く, 次でグルタミン酸, アラニン, ロイシンが多く含まれる.ヒスチジン, アルギニンおよびアスパラギン酸含量は少なくシスチンはまったく含まれない.天然調味料のとりがらエキス, 牛肉および鯨肉エキスとアミノ酸の相対的割合を比較すれば, 頭部ミンチ抽出液のタウリン含量は著しく多く, グルタミン酸含量はかなり少ない.さらに数種のアミノ酸含量についても他のエキスとの間にかなりの相違が認められた.
著者
古賀 克也
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.156-162, 1958-10

ベンゼン, n-ブタノールを溶剤とし20℃で精製蛹油の均一系における鹸化速度をメタノール性, エタノール性及びブタノール性加里を用いて調べ次のごとき結果を得た.(1)0.4規定苛性加里による鹸化反応は見掛上2分子反応に一致するが稀釈濃度(0.2規定及び0.1規定)では2分子反応には一致しないことが明白に認められる.(2)鹸化価曲線より油分子全体としての反応速度は時間経過と共に逓減することがみられる.(3)反応各時間の鹸化価の比より異種溶媒, 異種濃度間の相対的速度を比較すれば, アルコール性加里液の鹸化速度はメタノール<エタノール<ブタノールの順序に大きくなる.苛性加里の濃度と鹸化速度の関係は溶媒を異にした場合もほぼ類似値を示す.